ソニーの新「Xperia 1」がひときわ「近年のXperiaとは違う」と感じる理由 ── 10周年の答えは心機一転の“先鋭化”だ【MWC2019】

Xperia1_01-1

2019年、ソニーモバイルのフラッグシップスマートフォンとなる「Xperia 1」。21:9のディスプレイを採用した点が特徴。ボディカラーは4色。

AndroidのXperiaが生まれて、2019年で10年目にあたる。

ソニーモバイルは「10年目にして1からはじまる、1から生まれ変わる」として、新しいXperiaのフラッグシップモデルを「Xperia 1」とした。

21:9の有機ELディスプレイを採用し、ディスプレイ品質や動画撮影機能などで「プロ」の機能へのこだわりを持つ。他社のように“折り畳み”型に走ることもなく、画面上にはノッチ(iPhone Xを皮切りにディスプレイ上部のカメラ部分をディスプレイにはみ出させたデザインを)も穴もない。

ソニーモバイルは、こうしたモデルをどのような発想で開発したのだろうか? MWC2019開催中のバルセロナで、商品企画のトップである、ソニーモバイルコミュニケーションズ商品企画部門 部門長の田嶋知一氏を直撃した。

「画面の縦横比はコンテンツが決める、ノッチや穴でコンテンツを汚さない」

tajima01-1

ソニーモバイルコミュニケーションズ・商品企画部門 部門長の田嶋知一氏。

「もう、ターゲットユーザーを決めたんです。ソニーモバイルは1億台、2億台、3億台と作る企業ではない。だとするならば、どうするのか」(田嶋氏)

Xperiaはこのところ元気がない。デバイス調達などでは、大量の製品を出荷するメーカーにかなわない。なのに、スマートフォンの他社トレンドを追いかけ、どこか中途半端な製品が続いていた。

やはり、ソニーが得意なことで勝負するしかない……では、ソニーが得意なところはなんだろう? 考えた末の結論が「コンテンツ」だった。

「ソニーの得意なところはなんだろう。ソニーは今、『クリエイティブエンタテインメントカンパニー』と言っています。人に近づき、クリエイターに近づき、結果的にユーザーに近づく。クリエイターとユーザーをつなぐ具体的なものはなんだろう……ということになると、それは『コンテンツ』なんです」

そこで考えたのが「21:9」のシネマワイドディスプレイだ。

4KでHDR対応の有機ELディスプレイ(OLED)を使う、という仕込みは以前から進められていたが、ソニー側には悩みがあったという。

「他社は18:9、18.5:9、19:9といった比率を採用して行きましたが、正直内心、どこかで気持ち悪かったんです。落ち着かず、そちら側には行ききれなかった」

田嶋氏はここ数年の動きをそう振り返る。悩む時期は過ぎた。振り切った結果として、どこにするか。

「もう、コンテンツのためのものならば、比率もコンテンツにあわせてしまおうと考えました。ならば、広げるならば21:9。そうでなければ16:9です。21:9だと決めてしまうと、みんな燃えるんですよね。なら、コンテンツを汚しちゃいけない。画面上にノッチはつけないし、穴もつけない。『白いご飯は汚さない。コンテンツには穴を空けない』です」

Xperia1_02-1

横に持つと映画の21:9の映画コンテンツがピッタリの画面に。Xperia 1の有機ELディスプレイの縦横比はそのことから発想した商品だという。

他社は折りたたみスマホなどに流れているが、「コンテンツに画面を合わせる、と決めたソニーモバイルは、当面そちらには行かない。

「折りたたんだスマホを開いた時に見るコンテンツが、ピンと来なかったんです。正確にいえば、弊社が得意とするコンテンツではない。ならば、どうすべきか別のことがわかるまでやらない。今の方針でいい、と思っています」

先鋭化を進めるため「厚木のソニー」と連携

monitor02-1

MWC会場には、マスターモニターからCineAltaカメラまで、厚木テクノロジーセンターで生まれた業務用機器とXperia 1が並べて展示されていた。

Xperia 1を開発する上では、これまでと同様、ソニーの技術力を結集することは決まっていた。

だが、それだけでは足りない。そこで注入したのが、ソニーの厚木テクノロジーセンターを軸にした「業務用映像機器部隊のノウハウ」だ。

とはいえ、ソニーモバイル内部でも、「“厚木”が私たちのようなコンシューマ商品に興味をもってもらえるのだろうか」という気持ちはあったという。正確にいえば、「そう言われると思い込んで考えてもいなかった」(田嶋氏)という。

そこに新風を吹き込んだのは2018年7月、ソニーモバイルの副社長となった槙公雄氏だ。槙氏は前職で、カメラなど映像機器を担当するソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ社の中で、デジタルカメラの「α」シリーズと、厚木のプロフェッショナル部隊の両方を担当していた。

「モバイルに関しては先入観のない槙が、4K HDR OLEDを見て『これはすごいよ』『ちゃんと厚木にも見てもらったほうがいい』と言ってくれたんです。そこで厚木に持ち込んで相談すると、『ぜひやってみたい』と」(田嶋氏)

もちろん、数百万円もするプロ用のマスターモニターや、数千万円以上する映画用のデジタルシネマシステム「CineAlta」と、スマートフォンではもともとの性能が違う部分がある。しかし、厚木テクノロジーセンターが監修したモードや機能を持ち込むことで、21:9のディスプレイをより「シネマらしく」使うことができるようなモードを用意することができた。

camera01-1

「CineAlta生まれ」の動画カメラの性能をアピール。色合いが旧機種とは大きく異なる「映画的な」映像を、日常の中で撮影できる。

camera02-1

カメラにはαシリーズに使われる処理技術「BIONZ」由来のものが使われており、スマートフォン初の「瞳オートフォーカス」を採用している。

ソニーピクチャーズ傘下の映画制作会社「Screen Gems」では、映画制作の中でモニター代わりにXperia 1を使う試みもなされている。監督はマスターモニターを見ているが、これまではマスターモニターを用意できなかった他のスタッフには、同じ傾向の映像を表示できるXperia 1を渡してモニター代わりにしているのだ。

動画撮影機能も、デジタルシネマシステム「CineAlta」の持つUIや色合いを組み合わせ、いままでとは違う方向の「こだわり」のものになっている。撮影モードもわざわざ、映画と同じ「4K・HDR・毎秒24コマ」にしているほどだ。

MWC2019会場のソニーモバイルブースには、CineAltaのカメラやマスターモニター「BVM-X300」などが持ち込まれ、「厚木テクノロジーセンターとの連携」が強調された。

monitor01-1

奥がマスターモニターの「BVM-X300」、手前がXperia 1。発色傾向などをBVM-X300に合わせてチューニングした「クリエイターモード」があり、一見するとかなり発色再現性が近いのがわかる。

Xperiaの機種ナンバリングが「1から10」の間に変わった

Xperia 1はハイエンドスマホだ。アメリカでの予想価格は995ドル(約11万円)と安価なものではない。そのため、同時に発表されたのが、ミドルクラスの「Xperia 10」(350ドル、約3万9000円)と「10 Plus」(430ドル、約4万7000円)だ。10も21:9だが価格重視という位置付けになっている。

10and10plus-1

左がXperia 10、中央がXperia 10 Plus。右端のiPhone XS Maxに比べると細身で縦長に仕上がっている。

10plus01-1

Xperia 10 Plus。21:9だが、液晶を採用しコストを抑えた普及モデルだ。

10plus02-1

ツルっとした印象のシンプルな背面。カメラはミドル機といえども、当然デュアルレンズ仕様だ。

「ソニーモバイルとしては、上が『Xperia 1』、下が『Xperia 10』と位置付けました。これからいろいろな市場向けに製品が出てくると思いますが、どれもおおむね『1から10』の間に位置する、とお考えください」

すなわち、Xperiaが狙うユーザー層は「Xperia 1からXperia 10」までの間にある、という発想なのだ。

Xperia 1で見せたこだわりを、できるだけ“10”にも引き継ぎ、「コンテンツの視聴と制作に強く興味がある」人を引きつける、というのが、ソニーモバイルの新しい戦略だ。

日本では携帯電話の「分離プラン」が導入されるため、販売の状況は大きく変わり、大混乱になるでしょう。『これをやってみよう』と思わなければ買っていただけないですし、買い換えようとも思っていただけない。そういう価値は、価格を1万円安くしたから生まれる、というものでもないです。ユニークな価値提供をしないとビジネスは縮んでいく、ということを我々は身をもって知っていますから」

田嶋氏の発言は重い。

もちろん、こうした取り組みが実際にどこまで市場に受け入れられるのか、こだわりの機能がどのくらいの実力になっているのかは、実機が販売されるまで判断することは難しい。

しかし、ソニーモバイルが生き残る上で「徹底」することを選んだ意気込みは強く伝わってくる。

総花的でない「自社にしかない独自のこだわり」への集中こそ、この数年のソニーモバイルに欠けていたものであり、Xperia 1がひときわ「近年のXperiaとは違う」と感じる理由なのだろう。

編集部より:初出時、Xperia 10のディスプレイ縦横比を16:9としておりましたが、正しくは21:9となります。お詫びして訂正致します。 2019年2月27日 15:30

(文、写真・西田宗千佳)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み