NASAはトラブルを望む? スペースXの有人宇宙船、3月2日テスト打ち上げ

スペースXのクルードラゴン。

スペースXのクルードラゴン。ファルコン9ロケットの上で打ち上げを待つ。フロリダ州ケープ・カナベラル。

SpaceX/Twitter

  • NASAは有人飛行のために設計されたスペースXの新しい宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げに許可を出した。
  • ダミーと貨物だけを乗せた打ち上げは、アメリカ東部標準時3月2日午前2時48分(日本時間3月2日午後4時48分)の予定。
  • 今回のミッションは、NASAがクルードラゴンの定期的な有人飛行を承認する前に、スペースXが実行しなければならない打ち上げの1つ。NASAはシステムの安全性を証明するための「重要なファースト・ステップ」と述べた。
  • ボーイングもまた、数カ月以内に宇宙船「CST-100スターライナー」のテスト打ち上げを計画している。 2つの宇宙船はNASAの80億ドル(約8900億円)の商業乗員輸送開発(Commercial Crew Program:CCP)によるもの。
  • 2日のテストが成功すれば、スペースXは7月に初の有人フライトを行う計画。

ほぼ8年ぶりに、有人フライトのために設計されたアメリカ生まれの宇宙船がアメリカから打ち上げられようとしている。

スペースXは2月22日、NASAから新しい宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げ許可を得た。

クルードラゴンはアメリカ東部標準時3月2日午前2時48分(日本時間3月2日午後4時48分)、ファルコン9ロケットに乗せられ、フロリダ州ケープ・カナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられる予定。

クルードラゴンは翌3日、国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、1500億ドル(約17兆円)のステーションとドッキング、数日後に地球に帰還する。

クルードラゴンは7人乗りだが、初フライトは無人で行われる。いくつかの貨物と、NASAが「articulated total body model:ATB」と呼ぶダミーが低地球軌道(地上約250マイル、約400キロメートル)を飛行する。

NASA有人探査部門の副主任ウィリアム・ゲルステンマイヤー(William Gerstenmaier)氏は2月22日、スペースXの初の無人での打ち上げは「最終的にアメリカに有人打ち上げ能力を取り戻す」ための「極めて重要なファースト・ステップ」と述べた。

NASAとスペースXは、今回の無人でのフライトを「Demo-1」と呼んでいる。今後計画されているクルードラゴンのデモンストレーション・フライトの最初のフライトだからだ。NASAはそれぞれのフライトが成功し、定期的な有人飛行の承認が行えることを望んでいる。

「今回の無人でのテストフライトは、有人フライトのために作られ、運用される商業宇宙船がISSにドッキングする初めての機会となる」とNASAの広報担当者アンナ・ハイニー(Anna Heiney)氏は2月6日、ブログに記した。

「今回のテストフライトは有人フライトのためのリハーサル」

ケープ・カナベラルの気象状況を監視しているアメリカ空軍第45宇宙航空団は、2日の天候次第では20%の延期の可能性があると述べた。打ち上げが延期された場合、次の打ち上げ予定は3月5日朝となる。

「Demo-1はテストフライト、それは間違いない。だが、我々は本当のミッションだと思っている。極めて重要なミッション」とNASAジョンソン宇宙センターのISSプログラム・マネージャー、カーク・シャーマン(Kirk Shireman)氏は打ち上げについての記者会見で語った。

「ISSにはまだ3人が搭乗している。よって、初めてISSに到達するこの宇宙船は正常に動作しなければならない。機能しなければならないのです」

NASAがアメリカ製商業宇宙船の打ち上げを切望している理由

スペースシャトル「アトランティス号」

ケープカナベラルの39A発射台で打ち上げを待つスペースシャトル「アトランティス号」 ── スペースシャトル最後のフライト。

Dave Mosher

今回のテストフライトは、2010年に始まった商業乗員輸送開発(Commercial Crew Program:CCP)と呼ばれる約80億ドル(約8900億円)の取り組みの一部。

スペースXに加えて、ボーイングもNASAと契約して有人フライトを目指している。ボーイングは2019年4月、宇宙船「CST-100スターライナー(Starliner)」の初の地球軌道へのテストフライトを予定している。

このプログラムのゴールは、アメリカからの有人飛行を再開すること。2011年7月、スペースシャトルの退役によってNASAはその能力を失った。

以来、NASAは宇宙飛行士をISSに送る手段を持ち得ていない。代わりにロシアに完全に依存し、宇宙飛行士をソユーズに乗せた。

NASAは、安全性とコストへの懸念を抱いた議会の指示でスペースシャトル・プログラムを終了させた。シャトル計画の見積りによると、スペースシャトルの打ち上げ1回あたりのコストは約15億ドル(約1700億円)。当時、新しい打ち上げシステムの開発も始まっており、また民間の宇宙航空産業も急速に進歩していた。

一方、ソユーズにアメリカの宇宙飛行士を乗せることに関するNASAとロシアの契約は問題が大きくなってきている。

1つ目の問題はコスト。

ロシアは10年間にNASA向けの打ち上げコストをほぼ4倍にした。 2008年、宇宙飛行士1人あたりのISSへの往復コストは約2200万ドル(約25億円)、しかし2018年には約8100万ドル(約90億円)にまで高騰した。

もう1つの問題は信頼性と安全性。

ソユーズは2018年、打ち上げに失敗した(乗組員は無事に脱出)。また別のソユーズがISSにドッキングした際、原因不明の穴が発見された。

NASAの商業乗員輸送開発(Commercial Crew Program)は、NASAの宇宙飛行士を宇宙に送り、地球に帰還させるための、信頼性が高く、費用効率に優れた、アメリカ生まれの方法を生み出す計画。数年におよぶコンペの結果、スペースXとボーイングが契約を獲得した。

しかし、宇宙飛行士を打ち上げる前に、両社は一連のテスト打ち上げでそれぞれの宇宙船が安全であることを証明しなければならない。

宇宙船クルードラゴンの打ち上げ中断テスト

宇宙船クルードラゴンの打ち上げ中断テスト、2016年5月。

SpaceX

スペースXは2016年5月、打ち上げ中断テストを成功させ、ロケットの故障が発生した際に、乗組員を確実に脱出させられることを示した。

NASAによると、ボーイングは2019年6月、スターライナーで同様のテストを行う準備をしている。

Demo-1ミッションがすべてうまくいった場合、スペースXは6月にフライト中の中断テストも行う。

クルードラゴンはその後、2019年7月に最初のクルーをISSに送る予定、Demo-2と呼ばれるミッションだ。ボーイングは続く2019年8月に最初の有人打ち上げを行う計画。

2015年、NASAは宇宙船をチェックし、商業宇宙船にフィードバックするためにベテラン宇宙飛行士スニタ・スニ・ウィリアムズ (Sunita "Suni" Williams)氏を含めた4人を「商業宇宙船の最初の宇宙飛行士」に選んだ。ウィリアムズ氏はボーイングのスターライナーの2度目の有人フライトの候補者にも選ばれている

「5年前なら、『民間企業に打ち上げが可能かと聞くことなど、何をしているのか? 信じられない』と言われただろう」とウィリアムズ氏は以前Business Insiderに語った。

「今は宇宙飛行のための自然な進歩のように思える」

「すべてが正確に動くことはない、私が保証する」

SpaceXの「クルードラゴン」のイラスト

NASAの宇宙飛行士を乗せたスペースXの宇宙船クルードラゴン、ファルコン9ロケットで打ち上げられ、宇宙を目指す(予想図)。

SpaceX

スペースXは、最初の「クルードラゴン」をケープ・カナベラルの39A発射台から打ち上げる。39A発射台はアポロとスペースシャトルのミッションに使われた発射台。同社は歴史ある発射台をNASAからリースして改良、ファルコン 9ロケットの打ち上げに使ってきた。またファルコン・ヘビーロケットの初打ち上げを行った。

2016年9月、発射台でファルコン9ロケットが爆発したことを受け、同社はNASAからより厳しい検査を受けることになった(爆発で衛星が1台失われたが、1台は破損で済んだ)。NASAはさらなる設計の微調整やフライトデータを要求し、「クルードラゴン」の1回目の打ち上げを10回以上延期した。

度重なる延期があったものの、3月2日のスペースXのDemo-1は公式フライト。 NASA、スペースXの代表者、ISSプログラムの主要関係者は2月22日、フライト・レディネス・レビュー(flight readiness review)と呼ばれる会議を行った。こうしたレビューは一般的に、打ち上げ実施の前にのみ行われる。

ゲルステンマイヤー氏は22日、スペースXのロケット、宇宙船、打ち上げ計画への徹底的なレビューの結果、打ち上げの妨げとなるような問題は見つからなかったと語った。

しかしNASAは、クルードラゴンの完璧な初フライトを期待していない。

「我々はこのフライトで何かを学ぶことを大いに期待している ── すべてが正確に動くことはない、私が保証する。それこそがクール。それこそが我々が望んでいること」とゲルステンマイヤー氏は語った。

「しっかり準備ができるように、我々は今回のフライトから最大限学びたい。そうすることでクルーを乗せた時に、我々は本当の有人ミッションを行う準備ができている」

NASA商業乗員輸送開発のマネージャー、キャスリン・ルダース(Kathryn Lueders)氏は22日、数週間前にスペースXのロケットと宇宙船のもとを訪問したと語った。7月にクルードラゴンで初の有人フライトを行う予定の宇宙飛行士、ダグ・ハーレー(Doug Hurley)氏とボブ・ベンケン(Bob Behnken)氏も同行した。

「確実に準備が進んでいて、我々が発射台の上で登って行く次の宇宙船は、2人の宇宙飛行士の有人フライトテストであることを実感できた」とルダース氏は語った。

「このミッションを行うこと、そしてそこから学ぶことが、我々にとってどれほど重要かをますます実感し、思いを強めた」

2018年8月、NASAがベンケン氏とハーレー氏をスペースX初の有人フライトの乗組員に選んだことを発表した後、ハーレー氏は次のように語った。

「初フライトはテストパイロットの夢。経験できるとは思ってもいなかったが、今回は実現しそう」

NASA TVは、3月2日東部標準時午前2時頃からスペースXのDemo-1フライトを放映する予定。スペースXはフライトのライブビデオをウェブで流すかもしれない。

[原文:NASA says SpaceX may launch a new spaceship for the agency on Saturday — an 'absolutely critical' test to help show Elon Musk's company can safely fly astronauts

(翻訳:一柳優心、編集:増田隆幸)

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