アマゾンはなぜ前年割れしてまでリアル店舗に進出するのか

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Amazonが始めた”無人コンビニ”とも呼ばれるAmazon Go。リアル店舗への進出が近年、目立つ。

Getty/David Ryder

Q. Amazon(アマゾン)で唯一前年割れしている事業とは?

A. 実店舗の小売事業。YoY-3%と減少。

今日の記事では、最近ジェフ・ベゾスCEOが離婚スキャンダルで大変なことになっている、Amazonを取り上げたいと思います。

Amazonと言えば、高い成長率を誇る企業として有名で、皆さんもeコマースだけではなく、AWS(アマゾン・ウエブ・サービス)などの新しい事業をどんどん成長させていっている、というイメージをお持ちかと思います。

今日の記事では、Amazonの中で唯一、前年同期比マイナスの成長をしている事業を見てみたいと思います。

初めに決算の概要を見てみましょう。

Amazon Q4 2018 Financial Results Conference Call Slides

初めに、Amazonが最も重要視している経営指標であるフリーキャッシュフローですが、過去12か月間で$19.4B(約1兆9400億円)となり、YoY(前年比)+134%と、大きなフリーキャッシュフローを生み出すようになってきました。

フリーキャッシュフローのグラフ

四半期当たりの売上を見ると、2018年の10月から12月期で$72B(約1兆7000億円)を超え、YoY+20%と、こちらも力強い成長を見せています。

オペレーティングインカムのグラフ

Amazonと言うと、利益を出さないというイメージをいまだにお持ちの方もいるかもしれませんが、最近は決してそんなことなく、今回の四半期はYoY+78%の、約$3.8B(約3800億円)もの営業利益を出しています。

Amazonの決算概要として覚えておくべきことは、以前のように赤字を続けている企業ということではなく、しっかりと利益を出し始めているという具合に、収益構造が大きく変わってきている点を、しっかり覚えておきましょう。

アマゾンの事業ごとの成長率

ここで、事業ごとの成長率を少し見てみたいと思います。

Amazon.com Announces Fourth Quarter Sales up 20% to $72.4 Billion

各事業ごとの前年同期比の成長率

上から順番に、各事業ごとの前年同期比の成長率を見てみると、

・オンラインの直販部分が+13%

・実店舗の小売事業が▲3%

・ECのマーケットプレイスが+27%

・Amazonプライムなどのサブスクリプション事業が+25%

・AWSが+45%

・広告事業を含むその他が+95%

となっています。この表からわかるように、実店舗の小売事業だけがマイナス成長となっています。

唯一前年割れの小売事業の赤字の背景

ホールフーズマーケットの外観

実店舗の小売事業というのは、買収したWhole Foods(ホールフーズ)の事業になるわけですが、この赤字の背景を少し詳しく見てみる必要があります。

実際、決算発表の中で以下のようなコメントがありました。

Amazon's earnings announcement had one big negative number

“Online orders where people go to the Prime Now app and then order for delivery or pickup at Whole Foods stores does count or is counted in the online stores component of revenue,” Fildes said. “So if you adjust for those, what's the Whole Foods growth year-over-year on an apples-to-apples basis was approximately 6%.”

ユーザーが Prime Nowなどのアプリで食料品などを注文した場合は、それらの売上はオンライン事業の売上としてカウントされており、実店舗の小売事業にはカウントされていない、と発言しています。

また、オンラインの注文も含めたWhole Foods全体での売上は、YoY+6%と、プラス成長しているとも明言されています。

これらの説明から、Whole Foodsの売上が減少しているのではなく、オンラインで食料品などを注文するユーザーが大きく増えている結果として、実店舗での売上が減少しているように見える、という説明です。

アマゾンにとってホールフーズの位置付けは?

仮に、Whole Foods全体の売上がYoY+6%の成長率だったとしても、Amazonの他の事業に比べると、まだまだ成長率としては見劣りします。

ここで改めて、Whole Foodsの買収は、Amazon 全体にとってどのような意味があるのか、という点を振り返ってみたいと思います。

ホールフーズの内観

以下では、Amazonが実際にWhole Foodsを買収する前から、Amazonが同社を買収すべきだという提言をしていた人の分析が、とても説得力があったので、紹介してみたいと思います。

Why I Recommended Amazon Should Acquire Whole Foods

The most important reason I identified as to why Amazon should acquire a physical grocery retailer is because 65% of consumers prefer to shop for groceries in a supermarket. Of all the groceries sold in 2018, only around 3% were purchased online.

AmazonがWhole Foodsを買収すべき最大の理由は、65%のユーザーは未だにスーパーマーケットの実店舗に行って、食料品などを購入することを好んでいるからです。

更には、2018年に購入された食料品のうち、オンラインで注文されたのはたったの3%だった、というデータもあります。

つまり、Amazon がオンラインだけに留まっている限りにおいては、食料品マーケットを取ることができない、というのが最大の理由です。

Amazonは、オンライン側でいくらユーザーを獲得していても、食料品マーケットという巨大なマーケットにはリーチすることができないので、既に実施店舗を有している会社を買収して、そこを拠点に拡大していくのが正しい、という考え方です。

その上で彼は、二つの買収候補を挙げていました。

・Best Regional Grocery Retailer: H-E-B. The company operates 340 stores in Texas and 55 in Mexico. (If I had to name the best grocery retailer in the U.S., I would choose H-E-B.)

・Best Medium-Sized Nationwide Retailer: Whole Foods. At the time I selected Whole Foods, the company operated 362 stores. The company was small enough that Amazon could easily scale the business.

一つ目は、H-E-Bという日用品スーパーで、テキサスに340店舗、メキシコに55店舗を有しています。

二つ目が、全米に362店舗を展開するWhole Foodsでした。

I chose Whole Foods because Amazon serves customers in every state in the U.S.

The combination of Amazon's prowess in online retail and Whole Foods reputation as a leading grocery retailer convinced me that if Amazon acquired Whole Foods, the company would be able to create an ecosystem consisting of online grocery ordering and delivery and stores located nationwide.

彼がWhole Foodsの買収を勧めていた最大の理由は、Whole Foodsは既にアメリカの全ての州にストアがあったからです。

Amazonのオンラインでのプレゼンスと、Whole Foodsの店舗を使えば、既にあるWhole Foodsの店舗を活用しながら、食料品のオンライン注文配達エコシステムを、最も早く構築できるはずだと考えたからです。

数字だけを見ると、Amazonの実店舗小売戦略は、まだまだ始まったばかりという印象ではありますが、これからAmazon GOなどもどんどん増えていくと発表されていることもあり、Amazonが小売事業に対してどのようなイノベーションをもたらしていくのか、今後も楽しみにしたいと思います。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中

決算が読めるようになるノートより転載(2019年2月11日公開の記事)

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