「自動車を所有する時代」が今、終わろうとしている

自動車

Luis D'Orey / Reuters

  • アメリカの配車サービス「リフト(Lyft)」のIPO(新規株式公開)は、わたしたちが知っている自動車を所有するという考えを根本から変えるものだ。
  • イギリスでは1月、自動車の生産台数が18.2%減少した。これで8カ月連続だ。
  • トルコでは60%減だ。
  • ヨーロッパ全体では、約6%減少した。
  • アメリカでは、自動車の登録台数が約10%減少している。
  • 中国では、タイヤの販売数も減っている。
  • 人々はもはや自動車をそれほど欲しがっていない。ウーバー(Uber)やリフトが、新車の必要性を低下させている。自動車は歴史的な衰退期に差し掛かっているのかもしれない。

アメリカの配車サービス「リフト」は3月1日(現地時間)、IPOを申請した。同社のビジョンはドラマチックだ。同社の創業であるローガン・グリーン(Logan Green)氏とジョン・ジマー(John Zimmer)氏は、リフトはユーザーをA地点からB地点へ運ぶだけでないと言う。 彼らは、自動車の所有は減り続けると考えていて、その死を手助けしたいと考えているのだと、IPOの申請書類に書いている。

「世界は、車の所有からサービスとしての移動手段(TaaS)へとシフトし始めていると我々は考えている。リフトはこの巨大な社会変化の最前線にいる」と、彼らは言う。「車の所有は…… 消費者の経済的な負担となってきた。アメリカの家庭は住居費を除き、他のどんな支出よりも多くを移動手段に払ってきた。……1世帯あたりの移動手段にかかる年間平均支出は9500ドル(約110万円)以上で、そのほとんどは自動車の所有と維持にかかる費用だ」

車は「不平等」を生むと、彼らは主張する。「アメリカでは、新車の平均価格は3万3000ドル(約370万円)以上で、大半の家庭は手が届かない」と文書には書かれている。「我々は、30万人以上のユーザーが、リフトがあることで個人の車を手放したと推定している」

彼らは正しいのかもしれない。

自動車産業が、新聞がたどった道を進むことになる歴史的な瞬間があるとしたら、今がその時だろう。

例えば、イギリスでは1月、自動車の生産台数が前の年の同じ月に比べて18.2%、149万台減った。

業界団体のSMMTによると、これで8カ月連続の減少だ。

SMMTは、イギリスのEU離脱(ブレグジット)がその原因だという。CEOのマイク・ハウズ(Mike Hawes)氏は「合意なきブレグジットの脅威は依然として残っている。これが時間とリソースを独占し、競争力を低下させている」と指摘する。

チャート

イギリスの自動車の生産台数は、前年同月比で18%減少した。

SMMT

もちろん、ブレグジットのせいだけではない。「イギリスおよび主要輸出国市場の両方で需要が伸び悩んだ」とSMMTは言う。事実、イギリスでは自動車の販売台数が2017年以降、減少し続けている

18%減は悲惨に聞こえるかもしれないが、トルコに比べればまだまだだ。UBSのアナリスト、Gyorgy Kovacs氏とそのチームが集めたデータによると、トルコでは2018年1月から自動車の販売台数は60%減った。

チャート

トルコでは、自動車の販売台数が60%減った。

UBS

トルコはその通貨トルコ・リラの暴落により、不況の真っただ中にいる。Kovacs氏は、トルコの2019年のGDP成長率をマイナス2.9%と見込んでいる。

トルコの例が証明するのは、今日の自動車は長持ちするため、景気が悪くなっても、消費者は新車を買わずにこれまで乗っていた車に乗り続ければ全く問題ないということだ。

イギリスとトルコは、特殊なケースに見えるかもしれない。大半の国は、ブレグジットやリラの危機に直面していない。だが、この特殊なケースは、自動車産業にとっては例外ではない。

下のチャートは、Business Insiderがラザード・アセット・マネジメント(Lazard Asset Management)から入手した、ユーロを通貨として使用している19カ国(=ユーロ圏)全体の自動車に関するデータだ。ユーロ圏全体で生産台数が減少している。

チャート

Lazard Asset Management

このチャートの形は、HSBCの2011年以降の自動車登録台数をまとめた下のチャートと似ている。このデータは、HSBCのアナリスト、ジャネット・ヘンリー(Janet Henry)氏とジェームズ・ポメロイ(James Pomeroy)氏が集めたものだ。アメリカ人にとって、車は数十年にわたって文化的アイデンティティーの延長だったことを考えると、驚くべき結果だ。

アメリカ人はかつてのように車を求めてはいない。

チャート

HSBC

ヨーロッパとアメリカでは、明らかに自動車の購入が減っている。次のチャートは、UBSのアナリスト、ダビッド・レーヌ(David Lesne)氏とそのチームが、2006年以降の新車用の新タイヤの販売をまとめたものだ。2008年の金融危機以降、タイヤの販売は特にアメリカで持ち直した。ヨーロッパ(青い線)では、2013年に販売が減少し、以来、低水準となっている。北米(茶色の線)では、2017年から減少傾向に変わったようだ。

チャート

UBS

アメリカで新車の販売がピークに達したのは最近のことだ。しかし、2019年に入って突然、減った。JDパワーとLMCオートモーティブによると、自動車の販売台数は前の年に比べて2月に1%、1月に3%減少した。ニューヨーク連邦準備銀行によると、アメリカでは700万人以上が自動車ローンの「深刻な滞納」に陥っていて、金融危機以来、最悪となっている。

次のチャートは、中国のタイヤの売り上げだ。新タイヤ、交換用のタイヤともに減っている。

チャート

UBS

世界中でこれまでになく多くの人が雇用されている。中国経済は年率6%で成長し、大半の西側諸国では賃金が上昇している。消費者は新車の購入に自信が持てそうなものだ。しかし、自動車業界では工場の閉鎖や数千人規模のレイオフなど、すでに景気後退に入ったかのような動きが見られる。

これを懸念する声もある。

車は大きな買い物だけに、経済に大きな影響を与える。

ドイツとイギリスは、ヨーロッパの自動車製造拠点だ。両国は互いにその部品や組み立て、販売で依存し合っている。だが、ブレグジットのせいでその関係が破たんしつつある。イギリスのEU離脱は、メイ首相がどれほど上手く交渉しようと、そのGDP成長率を帳消しにしてしまうだろう。ドイツも、最も重要な自動車製造パートナーであるイギリスとの間の輸送や税金の面でのハードルが上がることで、影響を受ける。

ロイターは「コメルツ銀行とIfo経済研究所それぞれの予想から、合意なきブレグジットがイギリスのドイツ車に対する輸入関税を約10%押し上げ、トラックやピックアップ・トラックについては、最大で22%の関税が適用されるだろう…… その影響により、ドイツのGDP成長率が長期的に最大で0.7%減となる可能性がある」と報じている。

ブルームバーグも、ウーバーやリフトといったライドシェア・サービスの人気が自動車の売り上げの減少につながっていると報じている。Business Insiderでも、同様のケースを報じていて、ウーバーは運転手のいらない車を導入することで、人間が運転する個人所有の車がなくなり、ロンドンだけで結果的に4万人の雇用が失われるだろうと認めている。

リフトの創業者たちは正しい。自動化された、運転手のいらない移動サービスが今後、自動車に対する需要を低下させるだろう。

世界経済が低迷しているから自動車製造業が落ち込んでいるのか、自動車製造業が低迷しているから世界経済が落ち込んでいるのか、判断は難しい。

だが、いずれにせよ良い兆候とは言えない。わたしたちは1つの時代の終わりに直面している。

シートベルトを締めよう。でこぼこ道が待っている。

レースカー

Reuters

[原文:Carpocalypse now: Lyft's founders are right — we're in the endgame for cars]

(翻訳、編集:山口佳美)

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