中国の誘導ミサイル駆逐艦「ハルビン」。
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- フィリピンのデルフィン・ロレンザナ(Delfin Lorenzana)国防相は、フィリピン政府は米比相互防衛条約を見直す必要があると述べた。3月5日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズが報じた。
- フィリンピンは、南シナ海をめぐるアメリカと中国の武力紛争に巻き込まれるのではないかと恐れている。
- 長きにわたるアメリカの同盟国フィリピンは、武力紛争が起きたときにアメリカがフィリピンを本当に守る気があるのか、懸念を示している。
アメリカの南シナ海での中国との武力紛争に巻き込まれるのではないかと恐れるフィリピンは、アメリカとの同盟に疑問を呈し、長きにわたる防衛条約の見直しを求めている。
フィリピンのデルフィン・ロレンザナ国防相は3月5日、周辺地域の安全保障環境は「非常に複雑化」しているとして、フィリピン政府は70年近く前に結んだ米比相互防衛条約を見直すべきだと述べた。ニューヨーク・タイムズが報じた。
「フィリピンはどの国とも対立しておらず、今後、どの国とも戦わない」と述べたロレンザナ国防相は、この地域で戦争にかかわりそうなのは、フィリピンよりもアメリカだと付け加えた。
「アメリカは西フィリピン海で海軍艦艇の航行を増やしていて、武力紛争にかかわる可能性が高い……(そうすれば)フィリピンは自動的に巻き込まれることになるだろう」と、南シナ海を西フィリピン海と表現して、ロレンザナ国防相は語った。
アメリカ海軍は、中国が領有権を主張する南シナ海の南沙諸島付近を駆逐艦で通過する「航行の自由作戦」を定期的に実施している。2019年に入ってからすでに2度行われているこの作戦は、中国を激怒させ、対立を招いている。
フィリピンの国防相は、1951年の米比相互防衛条約を見直し、一部を明確化する必要があると述べている。
「フィリピンとアメリカの相互防衛条約の曖昧さが抑止力として機能するとは思わない。事実、危機の最中には混乱やカオスを招くだろう」と、ロレンザナ国防相は述べた。
アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は3月1日、武力紛争になればアメリカはフィリピンを守ると強調、同盟国を安心させようとしたが、フィリピン政府は疑っている。
地元紙『ザ・フィリピン・スター』によると、フィリピンのドゥテルテ大統領は3月3日、「アメリカは『我々はあなたたちを守る』と言った。わたしは『OK』と言った」と述べ、「だが、問題は……どんな宣戦布告も議会を通るということだ。アメリカの議会がいかにひどいかは分かっているだろう」と語った。
5日に語ったロレンザナ国防相は、南シナ海の領有権問題はアメリカが中国の動きを防ぐことに失敗したためだと主張した。「アメリカが止めなかった」とロレンザナ国防相は言う。
だが、アメリカが中国との戦争にフィリピンを巻き込むのではないかという最大の懸念は残っている。これはフィリピンが是が非でも避けたい事態だ。
「わたしが心配しているのは、(アメリカの)保証がないことではない」「我々が求めていない、欲していない戦争に巻き込まれつつあることだ」とロレンザナ国防相は言う。フィリピンでは2016年にドゥテルテ政権が発足して以降、大統領は中国との戦争に興味はないと繰り返し、中国に対して融和姿勢を取っている。
ただ、フィリピンは、中国によるフィリピン領だと考えられる地域への侵害に対し、圧力をかけ続けている。
(翻訳、編集:山口佳美)