「再生型M&A」で成果を出すために注目すべき3つの指標。じげん、マイネットに学ぶ

じげん

求人や不動産など情報サイトを一括検索する、プラットフォーム運営の「じげん」を率いる平尾丈氏。再生型の事業買収を数多く成功させている。

撮影:今村拓馬

Q. (じげんとマイネットから学ぶ)再生型の買収を行う会社で注目すべき指標とは?

A. 再生型の買収をしている会社を見る時は、以下の3つに注目しましょう。

1. 年間リターン・累計回収率・回収期間

2. 自己資本比率

3. 「のれん:資本」倍率

今日の記事では、M&Aや事業買収などを行う際に、どのような指標に注目していけばいいのか、というのを見てみたいと思います。

M&Aや事業買収というのも色々なパターンがありますが、今回は再生型の事業買収にフォーカスしたいと思います。

これらの3つの指標は言い換えれば、

1. 早めに回収できているか?

2. 多額に借り入れてまで投資していないか?

3. 高値買いし過ぎていないか?

という、買う側、投資する側からすればごく自然に気になる指標とも言えます。

ここで言う再生型というのは、どちらかと言うと成長率の低い会社や事業を買収して、PMI(編集部注:M&A成立後の統合プロセス)をしっかり行い、再生や収益化を加速していくイメージです。

ちなみに再生型以外にも、例えばFacebookがInstagramを買収したように、グロースや成長スピードを買うというM&Aもありますが、今回はそちらは触れませんのでご了承ください。

再生型の事業買収を数多く成功させている会社として、ここではじげんとマイネットの2社を取り上げてみたいと思います。

さらにこの2社が良いのは、これらの点が決算書上で比較的明確に開示してあるという点です。

指標その1. 年間リターン・累計回収率・回収期間

初めに注目すべき指標は、実際に買収に投じたお金をどの程度の期間で回収できるのか?というものです。

皆さんの個人の財布で考えていただくと分かりやすいのですが、例えば皆さんがマンションに投資をする場合、最初に投資した金額を何年で回収できるのか、というのは、当然計算されるかと思います。

事業買収の場合も、まったく同じように考えると分かりやすいかと思います。

じげんのM&Aと投資成果の振り返り

まず、じげんの直近取得の2件や売却済みの1件を除く、過去の9件のM&Aに関して、企業買収に投じたネット資金が77億円であるのに対し、2019年3月期でEBITDAベースで28億円回収する予定だと書かれています。

つまり、100のお金で事業を買収して、一年あたり36ずつ回収できる計算になりますので、仮にこのペースが継続するとすれば、約3年で買収に投資したネット資金を回収できることになります。非常に早いペースだと言えるのではないでしょうか。

じげんのブレイン・ラボのPMI実績

じげんの決算資料に具体的な事例として掲載されていたのが、ブレイン・ラボの事例です。

じげんはこの会社を、当時11億円で買収しましたが、このスライドにあるように、買収後は売上が右肩上がりで増え、2019年3月期時点で、買収に投じた金額をほぼ回収できるという計算になっています。

投資回収の実績(タイトル買収)

マイネットの方を見てみると、事業買収をした年度ごとに、どの程度の金額が回収できているのか、というのが分かりやすいグラフで開示されています。

2014年から2016年度に買収したものに関しては、すでに買収に投じた金額が回収済みとなっています。

マイネットでは、償却基準を24カ月と定めているようです。このような数字を計算資料で開示しているというのは、非常に透明性が高いと言えるでしょう。

投資回収の実績(企業買収)

具体的な事例として、こちらのスライドにあるように、ポケラボからの事業買収はすでに大きく投資金額を超えた額を回収済みで、クルーズからの事業買収やグラニからの事業買収も、順調なペースで投資した金額を回収できていると言えるのではないでしょうか。

このように再生型のM&Aでは、買収に応じた資金をどの程度の時間で回収できるのか、というのが一つの目安になると言えるでしょう。

じげんの場合は3年から5年で回収できているという実績があり、マイネットの場合は24カ月を一つの目安に定めている、という点を覚えておきましょう。

指標その2. 自己資本比率

二つ目に注目すべき指標は、自己資本比率だと言えます。

自己資本比率に注目する理由は、事業買収のもとになる資産がどの程度、返却が不要な資本から来ているか、と言う点に注目したいからです。

M&Aをするような場合、例えば、大きな金額を銀行から借り入れて大きな買収を仕掛けていくという具合に、非常に大きなレバレッジをかけることもできるわけですが、当然そういうことをすればするほど、逆風が吹いた時に倒れやすい貸借対照表の構造になります。

逆に自己資本比率が高ければ、そういったリスクが小さくなるというわけです。

四半期末貸借対照表推移

じげんの場合、自己資本比率は68.9%と、積極的にM&Aする会社としては異例の高さとも言えるレベルです。

貸借対照表(四半期)

マイネットの方も、自己資本比率が連結ベースで52.8%と、こちらも十分高い水準を保っています。

指標その3. 「のれん:資本」倍率

最後に、「資本に対するのれんの倍率」も注目してみる価値があります。

簿価が小さい、ソフトウェアやインターネットの会社を買収する場合、買収金額と純資産の差額がのれん代としてバランスシートに計上されるわけですが、日本会計基準ではこののれん代は一定の期間で償却していく必要があります。

国際会計基準の場合であったとしても、毎年減損テストというのを行い、事業価値が買収金額から大きく乖離した場合は、減損をする必要があります。

従って、自社が保有する資本に対してのれん代が大きくなりすぎると、リスクが高いとも考えられます。

(関連の過去記事)今さら聞けない「のれん代」「減損」って何?

ディフェンシビリティ

じげんの場合、2018年末時点でのトレンド金額は約78億円で、資本に対する倍率が0.6倍と、健全な水準を保っていると言えるでしょう。

まとめ

これらの2社に関しては、M&Aや事業買収を積極的にしているように見えますが、資本にレバレッジを大きくかけて派手なM&Aや事業買収を行うというのではなく、「自己資本比率をしっかり高くキープしたまま、割安な買収をして短い期間で投資金額を回収する」ことを繰り返しており、最近よく見る言葉で言すが「規律のある」事業買収をしていると言えるのではないでしょうか。

また、事業買収への投資に規律があるというだけではなく、それらをしっかり決算資料で納得感がある詳細まで説明しており、投資家とのコミュニケーションという点でも、とても安心感がある2社だと言えるのではないでしょうか。

再生型のM&Aや事業買収を積極的に展開していきたいという方は、是非この2社を参考にしてみて下さい。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中

決算が読めるようになるノートより転載(2019年3月5日公開の記事

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