【コンビニ24時間営業論争】バイト代高騰でオーナーは経済的にも厳しく。ビジネスモデルの岐路

コンビニの24時間営業の是非が大きな話題になっている。

発端は、東大阪市のセブンイレブンの店主が人手不足を理由に営業時間を短縮したところ、セブン本部に契約解除と違約金1700万円を要求されたことだ。

現行システム変えないと継続できない

セブンイレブン

24時間営業が当たり前だったセブンイレブンも方針転換を迫られるのか。限られた店舗ではあるが、営業時間短縮の実験も始めている。

撮影:今村拓馬

セブンの店舗の98%を占めるFC(フランチャイズチェーン)店との契約では「年中無休、連日24時間開店」が定められ、加盟店主に営業時間の裁量がない。そうした状況に対し、2月27日、セブンの店主らでつくる「コンビニ加盟店ユニオン」はセブン本部に営業時間の柔軟化を求める交渉申し入れ書を出した。

セブン本部は3月4日、24時間営業の見直しに向けた実証実験を本部直営の10店舗で実施することを表明。だが、FC店の参加なしではデータの客観性に欠けるとの批判を受け、FC店も加える方向で検討に入るなど、後手後手感が否めない。

3月6日にもセブン本部に交渉の申し入れをしたコンビニ加盟店ユニオンの酒井孝典委員長は、記者会見で店舗の現状をこう語った。

「コンビニは住民票や印鑑証明などの発行や緊急災害時の相談を含めて、社会インフラとしてなくてはならない存在になっています。サービスが増える一方で、アルバイトの人件費や水道代などの経費は加盟費負担となっている。アルバイトの時給も高騰し、本部にも相応の分担をしてもらわないとやっていけない。店主の多くは精神的、肉体的、経済的にも限界に達している。現行のコンビニのシステムを変えていかないとコンビニ自体が継続できない状況なってしまいます」

深夜帯は人件費でマイナスの時も

コンビニバイト

深夜営業は利用客が少なければ、利益が出ず、むしろマイナスになってしまう(写真はイメージです)。

DAJ/Gettyimaiges

セブンなどコンビニ加盟店の経営は、店舗の売上高から商品原価を差し引いた粗利益を本部と分け合い、その中からアルバイトの人件費や水道光熱代、食品廃棄ロスを引いた残りが儲けになる(営業利益)。本部が受け取る粗利益の割合は4~6割で、本部が土地・店舗を用意する場合は6割程度となる。

24時間営業する加盟店は、深夜にお客が少ないとアルバイトの人件費などに持っていかれ、その時間帯は下手をするとマイナスになりかねない。

酒井委員長自身、ファミリーマートの現役の加盟店主だが、2018年の1年間の営業利益は295万円。そこから諸々の経費を引いたら手取りが269万円だったという。

酒井氏の労働時間も半端ではない。直近の3カ月では2018年12月が367時間、1月353時間、2月322時間。会社員が1日8時間、週40時間働いて月160時間。過労死認定基準の残業1カ月100時間を足した260時間をはるかに超えている。実際に2018年2月、福井県のセブンの加盟店では豪雪で店員が出勤できなくなり、夫婦で2日続けて50時間以上働き、妻が過労で倒れて救急搬送されたことが大きく報道された。

4割以下が営業利益400万円以下

お金

人材不足でアルバイトの獲得が困難な今、アルバイトの時給も高騰。コンビニオーナーは長時間労働に加え、利益を伸ばせない構造にも苦しんでいるという。

Bloomberg Creative Photos

精神・肉体的疲弊にとどまらず経済的にも苦境に立たされている。

前出の記者会見に同席した土屋直樹武蔵大学教授の調査によると、大手チェーンの加盟店の営業利益(加盟店の家族の給料などに当てられる)は400万円以下が全体の4割だという。特に加盟店の多くを占める、本部が土地・店舗を用意する単店経営の場合、300~600万円台の収入が典型的だと指摘している。比較的高い600万円だとしても、夫婦2人で割ると1人300万円にすぎない。

この土屋教授の調査対象時期は2015年当時。近年はアルバイトの時給が高騰し、売上高が変わらない中で加盟店主の利益を圧迫している。しかもコンビニの時給では人を集めにくくなり、店主自ら長時間労働を強いられる実態が続いている。

24時間営業の見直しは、これまで続いてきたコンビニのビジネスモデルが曲がり角にきていることを示している。

酒井氏は、こう危惧した。

「今の状態が続けばコンビニが半分になる危険もある。社会インフラとしての機能が失われれば国民、都民、町民が困ることになる」

コンビニ本部と加盟店主が営業時間も含めた現行の経営モデルについて話し合い、持続可能なビジネスモデルを再構築すべき時期にきているのだろうが、3月6日にコンビニ加盟店ユニオンがセブンの本部に交渉を申し入れたが、拒絶されている。

その理由として酒井氏は、「我々は労働組合として認めていない。したがって要望書という形で受け取るが、回答は出せない」と言われたという。

加盟店主は“労働者”ではないのか

ファミリーマート

コンビニエンスストアというビジネスモデルをどう維持していくのか。

撮影:今村拓馬

これを聞いて、やはりそうなのか、と思った。というのはセブン&アイ・ホールディングスのグループ企業の人事部長の言葉を思い出したからだ。かつで彼はこう語っていた。

「加盟店の店長が労働者だという、とんでもない動きが進んでいる。もしそんなことを認めたらコンビニというビジネスモデルが崩壊してしまう。絶対にあってはならないことだ」

興奮気味に語る口調には危機感が滲み出ていた。

人事部長(当時)が言う「加盟店主の労働者問題」とは約10年前に遡る。

2010年3月。コンビニ加盟店ユニオンがセブンの団交拒絶を理由に岡山県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。

もともと、コンビニ加盟店主たちは経営のあり方をめぐり本部との話し合いを求めたが、拒否され、やむなく労働組合を結成した。それでも交渉に応じなかったために労働委員会に対して不当労働行為の救済申し立てをした。

2014年3月、岡山県労委はコンビニ加盟店主は労働組合法の労働者であるとして、セブンに団体交渉に応じるようにという救済命令を出した。続いてファミリーマート加盟店ユニオンも同様の趣旨の救済申し立てを東京都労働委員会に対して行い、2015年4月に都労委は団交応諾命令を下している。

しかし、2社は命令を不服として行政機関の最終審にあたる中央労働委員会に再審査を申し立て、その結果は近く示されることになっている。

利益は労働に対する“報酬”

東日本大震災

津波にのみ込まれた岩手県宮古市の悲惨な光景(2011年4月)。大きな災害が起きると、コンビニはそのライフラインとしての存在感が際立つ。

Reuters

コンビニのようなフランチャイズ契約など、業務委託契約を結んでいる自営業者がなぜ労働者なのかと疑問に思う人も少なくないだろう。

ファミリーマート加盟店ユニオンが都労委に救済申立を行ったきっかけは、10年ごとに行われる再契約の可否に関する具体的判断基準についての交渉を本部が拒否したからだ。再契約するかどうかは契約上、基本的に本部の判断であり、仮に再契約できなければ路頭に迷ってしまうという不安を加盟店は抱いていた。

都労委の命令書を読むと、

  1. 全国どこのファミリーマート店でも同様のサービスを提供している。「加盟店は、会社の事業の不可欠な中核部分を担い、加盟者は不可欠な労働力を担う者として会社の事業組織に組み入れられている」
  2. 契約内容の一方的・定型的契約についても、加盟者の要望や意向を反映することなく、会社独自の判断で細部を定め、変更できる。フランチャイズ契約の内容は、「会社の優越的地位のもとで、一方的・定型的に会社により決定されている」
  3. コンビニの働き方の実態にも着目しており、興味深い。FC契約締結前に加盟店主と配偶者は会社所定の様式の健康診断書の提出」を求められる。病院の担当者に充てた文書には日常業務の支障の有無の記載項目がある。日常業務については「ファミリーマート店長業務全般という意味。1日当たりの就業時間は10時間以上、週1日程度の休日が基本」と説明している。

実際の店舗での就業時間は、加盟店主の1人は1週間84時間、月平均287時間。配偶者との合計で月平均506時間以上にのぼる。

さらに加盟者は売上金を毎日会社に送金し、本部フィー(ロイヤリティ)などを除いた、加盟者が受け取る「営業利益」に当たる金銭は会社が管理し、自由に引き出すことはできない。こうした事実から「利益は労務に対する報酬としての性格を有する」と認定している。

上記などの理由で、「加盟者には、独自の経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認め難く、加盟者がその実態として顕著な事業性を備えているとはいえない」(命令書)と述べている。

加盟店主の自由度を認めることはできないのか

働く人の移動

働き方改革の流れの中で、コンビニのビジネスも変化せざるを得ない時代を迎えている。

d3sign

一方、コンビニ本部側は、当初FC契約書の中には「加盟店主は独立した事業者と書いてあるから労働者ではない」と主張してきた。加盟店がいろいろ工夫すればもっと売れるはずだと強調したが、自己の才覚で売り上げを増やせる余地が少ないとして認められなかった。

近く結論が出る中労委の決定で、再び労働者であると認定されたらどうなるのか。セブン、ファミマ双方は「フランチャイズシステムというビジネスモデルを真っ向から否定するもの」として受け止め、徹底して戦う覚悟である。

そうなると今度は司法の場に移る。本部側が地裁、高裁、最高裁まで争うとすれば、決着まであと5~6年はかかる可能性もある。都労委判断の原告代理人の宮里邦雄弁護士は当時こう語っていた。

「フランチャイズ方式が否定されるというのはちょっとオーバーではないか。今よりも加盟店主の自由度を認めれば労働者ではないという判断に至る可能性もあるのです。しかも、ユニオンや都労委の命令が求めているのは交渉のテーブルにつくということ。双方が話し合って良い解決策を探ることが必要ではないでしょうか」

長引けば長引くほど、加盟店主に限らず本部側も含めて双方が痛みを伴う。

何よりも憂うべきはコンビニのビジネスモデル自体が社会環境の変化によって機能不全に陥ってしまうことである。争うよりも双方が納得する解決策を早急に見出すことが必要ではないか。

溝上憲文:人事ジャーナリスト。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマに執筆。『非情の常時リストラ』で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『マタニティハラスメント』『人事部はここを見ている!』『人事評価の裏ルール』など。

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中