ディスプレイを搭載したスマートスピーカー「Clova Desk」がついに3月19日に発売される。
LINEは3月12日、同社のAIアシスタント「Clova」を搭載するスマートディスプレイ「Clova Desk」の詳細を発表した。販売は3月19日11時より直販サイトでスタート、価格は2万7540円(税込)。
Clova DeskはLINEとしても初となる7インチのタッチディスプレイを搭載したスマートスピーカーだ。「ねぇ、Clova」などのウェイクワードをキーに、さまざまな情報の確認やスキル(スマートフォンで言うところのアプリ)の実行が可能。
スマートスピーカーとしては日本で一番最初に展開したというLINEだが、今回のスマートディスプレイに関しては、アマゾンが2018年7月に「Echo Spot」、2018年12月に「Echo Show」を日本発表しており、遅れをとった形だ。
Clova Desk自体は、2018年6月に開催された「LINE CONFERENCE 2018」で発表され、当時は「2018年冬販売」とアナウンスされていた。2カ月以上遅れて登場したスマートディスプレイの実力はどうなのか。報道関係者向け体験会の実機で確認してみた。
「今日の天気は?」など、聞けることは従来のスマートスピーカーと変わらないが、内容はディスプレイでも表示する
Clova Deskは7インチWSVGA解像度の(1024×600ドット)ディスプレイを搭載。
ただし、スマートディスプレイでしかできないこともある。代表例は、動画コンテンツの再生だ
Clova Deskは「AbemaTV」の再生に対応。EchoにもAbemaTVのスキルはあるが、番組表を確認する機能しかない。
YouTubeは「●●の動画を再生して」と言うと動画専用ブラウザーが立ち上がり、再生できる仕様
専用ブラウザーは、URLの入力ができないなど機能を制限したもの。ブラウザー単体を起動させることはできない。
クックパッドにも対応。声と画面表示でレシピを検索できる
個人的にうれしかったのは、クックパッド起動中でも「タイマー」のスキルが使えた点。
LINEの送受信機能があるのもClovaの特権。Clova Deskではスタンプの表示やビデオチャットが可能
受信したスタンプを表示したところ。「LINEを送って」とClovaに話かければ、こちらから送ることもできる。
正面カメラは自撮りにも使える。LINE担当者いわく「社内テストで子どものいる社員から好評」とのこと
正面カメラの撮影解像度は5メガピクセル。顔を認識するのでリアルタイムのスタンプやエフェクトをかけることもできる。
バッテリーを内蔵しており、家のどこでも持ち運んで動画やLINEを受信できる
重さは915gとサイズの割りに軽い印象。バッテリー容量は3000mAhで、充電方式は専用AC。連続待受時間(公称値)は3時間10分。
強力な家電操作機能も特徴の1つ。10社12タイプのIoT家電のほか、内蔵する赤外線機能で60社9658種類のテレビ、エアコン、照明器具を操作可能
デモでは「リビングのテレビをつけて/消して」と話して、テレビを操作。テレビで命令内容が実行されるまでの時間は、一呼吸ある程度で俊敏な印象を受けた。
Clovaと言えば、初代「Wave」登場時に応答速度や精度に厳しい評価を受けていたが、地道な改善を続けているという
すでに発売されているClova製品もファームウェアアップデートにより品質の改善が行われているが、Clova Deskは既存製品よりさらに呼び出し性能や反応速度が向上しているという。
LINEいわく「日本のAIアシスタント市場」は成長途中
7インチという画面サイズは、世界的に見れば狭めの日本の住居環境と、ディスプレイ表示・操作の利便性のバランスをとった結果。
LINEは、スマートスピーカーを含むいわゆる「AIアシスタント市場」において存在感を示すことができるのだろうか?
体験会場で触れた限りでは、やはりLINEの送受信機能や内蔵の赤外線機能による家電操作は日本の家庭にマッチしていて、一番最初の製品「Clova WAVE」の印象より有用に感じるものだった。
とくに、前者のLINE機能はディスプレイとカメラを搭載し、ビデオ通話に対応したことが非常に大きい差別化要素になっている。もちろんアマゾンのスマートディスプレイもビデオ通話機能があるが、Echo同士、またはAmazon Echoアプリを入れているスマートフォン相手でないとつながらない点がネックだ。
Clova DeskはLINEユーザーとビデオ通話ができる。
一方、Clovaはすでに多くの人のスマートフォンに入っているLINEアプリ相手に通話ができる。「離れて暮らす家族や親戚の家にClova Deskを置き、自分はスマホで通話する」というようなユースケースがストレスなく実行できるわけだ。
LINEのClovaセンター スマートプロダクトチームに所属する中村浩樹氏。
Clova Deskの開発統括を担当したLINEの中村浩樹氏は、他社と比べたときの強みとして上記の2つを挙げるとともに、「日本のユーザーの声としっかりと向き合い対応していく」という、日本に特化したサービスを展開するLINEならではの開発方針を打ち出している。
また、中村氏は「日本のAIアシスタント市場の成長スピードは、当初考えていたより遅いペース」とも話している。トヨタ自動車との提携による「Clova Auto」や、今後提供を予定しているスマートフォン上でClovaを実行できる機能など、AIアシスタントとのタッチポイントを増やすことで、市場全体の成長スピードを促進させていく方針を明らかにした。
(文、撮影・小林優多郎)