サムスン電子ジャパンが「Galaxy Harajuku」をオープン。テープカットイベントには本社モバイル部門トップのDJ Kohこと高東眞(コ・ドンジン)氏もかけつけた(写真中央)。
3月12日、サムスン電子ジャパンは東京・原宿で常設型ショーケース「Galaxy Harajuku」のオープニングイベントを開いた。
Galaxy Harajukuは、ビル一棟を丸ごと使った世界最大級のショーケースとして、Galaxyシリーズの製品展示や、VRコンテンツの体験を楽しめる施設となっている。
これまでにもサムスンは「Galaxy Studio」の名称で各地に期間限定の施設を展開してきたが、原宿の一等地にショーケースを構える狙いはどこにあるのか。その中身からは、世界のスマホ市場でトップシェアを誇る同社の最新モバイル戦略が見えてきた。
Galaxy専用施設で、回線契約や端末修理にも対応
竹下通りからほど近い場所にオープンした。近隣では韓国で人気の「チーズハットグ」店に行列も。
Galaxy Harajukuでは、「Galaxy」ブランドのスマートフォンやVRコンテンツを無料で体験できるほか、カフェを併設するなど原宿を訪れた一般客でも気軽に入れる。3月13日より通常営業を開始した。
立地は「ラフォーレ原宿」と竹下通りの間に位置しており、神宮前交差点からも見えるほど巨大な「Galaxy」ロゴが、ひっきりなしに行き交う大勢の若者にアピールする。連日のように報じられる日韓の政治的な冷え込みをものともしない勢いだ。
デザイナーにはauのデザインプロジェクトでも知られる吉岡徳仁氏を起用。ビルの外壁には1000台の「Galaxy Note9」が使用されており、それらの画面が一斉に点滅する様子は、近隣に位置する「Apple 表参道」を上回る存在感を放っている。
1000台のGalaxy Note9を使用。1台10万円として計算すると時価1億円に。
建物は、地上6階・地下1階の7フロア構成となっている。1階の入口を入るとまず目に飛び込んで来るのは、2月にサンフランシスコでの発表会で登場した最新スマートフォン「Galaxy S10」シリーズだ。日本では未発表だが、海外版の実機を直接手に取って試せる。
日本では未発表の最新機種「Galaxy S10」「Galaxy S10+」が並ぶ。
さらに、「折りたたみスマホ」として世界的に注目を浴びる「Galaxy Fold」もガラスケースに展示する。残念ながら実機に触れることはできないが、海外での発表会に続き、いよいよ東京に上陸したことから、日本国内での発売を予感させる展示と言える。
折りたたみスマホとして話題沸騰の「Galaxy Fold」を展示。
2階には「インスタ映え」を意識したカフェを設置。3階はギャラリーで、Galaxyの製造工程や歴代機種、サムスンが公式スポンサーとなってきたオリンピック・パラリンピックへの取り組みを展示している。4階から6階まではVRコンテンツの体験ゾーンとなっている。
「Galaxy」をイメージしたエクレア。ブルーベリーソースがアクセントに。
3階には歴代のサムスン製の携帯電話が並ぶ。懐かしいモデルに出会えるかも。
4階から6階では大型のマシンを使ったVRコンテンツを楽しめる。
また、同社初の試みとなるが、地下1階にはカスタマーサービスが設置されている。故障したGalaxy製品を持ち込めば、最短60分で修理できるという。実際にはドコモやauと連携し、キャリアの窓口として修理を受け付ける仕組みで、NTTドコモ版やau版のスマホをその場で購入し、契約することもできる。
国内初のカスタマーサービスを設置。
6月には、海外モデルのGalaxyスマホの修理も開始予定だ。海外で高いシェアを持つサムスンのスマホは、訪日客が日本に持ち込む可能性も高い。東京五輪に向けて増加を続けるインバウンド需要を想定し、「原宿に来れば修理できる」体制を整えたというわけだ。
パートナーであるドコモ・auとのタッグを強調
サムスン電子CEO兼IT&モバイルコミュニケーション部門社長の高東眞(コ・ドンジン)氏。
Galaxy Harajukuのオープニングイベントには、韓国サムスン電子でモバイル事業のCEOを務める高東眞(コ・ドンジン)氏が登壇。イベント後にはグループインタビュー形式で話を聞くことができた。
1階に国内未発売の「Galaxy S10」を展示しているように、今後も最新の製品やサービスをいち早く発表する場として活用する。常設型のショーケースとして10年の運用を想定しており、反応を見ながらさらなる国内展開も検討するという。
折りたたみ型スマホの日本発売はあるか?
折りたたみスマホの「Galaxy Fold」は日本で発売するのだろうか。高氏によれば、2019年内の発売に向けて国内キャリアと検討を進めているという。
折りたたみのメリットとして、Galaxy Noteシリーズを展開してきた歴史に触れ、「手で持てるサイズは6〜7インチが最大だ。それ以上に大きな画面を提供するには、折りたたむしかないと考えた」と語る。
国内では端末と回線を完全分離する方針が閣議決定され、ハイエンド端末の端末購入補助が難しくなる見込みだ。これに対して高氏は、「分離制度はすでに韓国で経験している。最も重要なことは、生活の中で必ず使いたいと思ってもらえる製品をつくれば、制度に少し変化があっても受け入れてもらえるということだ」と語った。
今後の製品ポートフォリオについて、高氏は「日本市場はフラグシップで挑戦していきたい」として、Galaxy S10シリーズに最も注力することを強調。同時に、ミッドレンジのもつ可能性も挙げた。「パートナーのキャリアからは、料金制度と合わせて、バッテリーが長持ちするミッドレンジの製品が喜ばれると聞いている。パートナーの要求とお客様の声に耳を傾けるのが最優先だ」と語る。
docomo withで人気のミッドレンジ製品「Galaxy Feel2 SC-02L」。
こうした中で、キャリアと議論を進めているのが「ガラケーからの移行」需要だという。「フィーチャーフォンのユーザーがどうすれば無理なくスマホを使えるのか、パートナーと議論をしている。スマホに移行するなら、ミッドレンジかそれ以下の価格帯になる」(高氏)として、中低価格帯への製品投入を示唆した。
日本で高いシェアを持つiPhoneへの対抗策としては、「お客様に信頼され、愛される製品をつくるしかない。これからの2〜3年に、5GやAI技術の分野で、過去10年分を超える技術革新が起きる。個人の枠を超えてオフィスや工場にも広がっていく中で、オープンコラボレーションにより消費者に愛されるモバイル体験を作っていきたい」(高氏)と語った。
サムスンはスマートフォンカテゴリーのワールドワイドオリンピックパートナーだ(写真は2018年の平昌オリンピック・江陵会場に設置されていたサムスンのパビリオン)。
撮影:小林優多郎
全体を通して、Galaxy HarajukuのオープンからはパートナーであるNTTドコモ、auとの関係を重視していく姿勢が感じられた。国内キャリアとの関係を維持し、オリンピック需要を取り込みながら、今後もGalaxyシリーズの国内展開に注力していくというのがサムスンのメッセージと言えそうだ。
(文、撮影・山口健太)
山口健太:10年間のプログラマー経験を経て、2012年より現職。欧州方面の取材によく出かけている。著書に『スマホでアップルに負けてるマイクロソフトの業績が絶好調な件』。