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「突如現れたプライベート空間」RICOH BIL Tokyoの機能と戦略を解く

| Tech Insider

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東京・田町にある「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo」。

東京・田町にある「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo」。ここでは開発途上にある、半歩先行くリコー製品・サービスを体験できる。

オフィスにたいてい1台はあるプリンターやFAXなどの機能を兼ね備えた「複合機」。リコージャパンは、こうしたオフィス向け事務機器大手リコーの販売会社だ。

そのリコージャパンが2018年9月、東京・田町の事業所内に「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo」(以下RICOH BIL Tokyo)をオープンした。ラウンジという名だが、くつろぎの談話室でも、商談スペースでもない。リコー製品が並ぶショールームとも違い、見れば他社製品もたくさん置かれている。しかも、1日2社限定の完全招待制。一体ここは何? RICOH BIL Tokyoの運営リーダーであるリコージャパンの菊地英敏氏に、この謎部屋の全貌を聞いた。

顧客の課題を共に探し、他社との連携で新しい価値を創造

リコージャパン 販売事業本部 マーケティングセンター 価値づくり推進室 共創マーケティンググループ リーダー 菊地英敏氏。

リコージャパン 販売事業本部 マーケティングセンター 価値づくり推進室 共創マーケティンググループ リーダー 菊地英敏氏。

「RICOH BIL Tokyoはお客様の要求の変化に対応するために生まれた空間です。今までわれわれは、目の前の課題を精緻にスキャニングして解決策を提案する、いわゆる課題解決型提案で価値提供してまいりました。ただ私自身は、今の時代ではそれも限界があると感じています。技術の進化、インターネットの普及などによって問題や課題は自力で簡単に解決できるようになりつつあります。こういう環境の中で、課題解決型提案を推し進めていくやり方だけでは袋小路に入っていくと感じています。

これからはお客様の要求の変化を、別の角度で見直してみる、あるいはユニークなものの見方でお客様と共に新たな問題や課題を創り上げる必要があります。そこで、こうしたマーケティングプロセスを進めながら、あるべき姿を定義付けし、そこからバックキャスティングして今後の製品開発と提案につなげていくという流れを作ろうとしています」(菊地氏)

自社発イノベーションはたった4%。だから「目利き」が必要

RICOH BIL Tokyoのロゴ。

提供:リコージャパン

菊地氏はRICOH BIL Tokyoを顧客と一緒に課題を見つけ出し、その解決に向けて他社との共創を積極的に行っていく新しい価値創造の場にしたいと考えている。

「一橋大学で教鞭を執る山口周さんの研究チームで、日本のイノベーション100例を調査したところ、企業が考え出したアイデアに役員クラスがGOサインを出して、実際にイノベーションに繋がったケースはわずか4%という分析結果があります。社内だけでイノベーションを起こすのは限界がある。イノベーションの創出には、ユニークな発想とビジョニング、そして外部の『目利き』の存在が不可欠なのです。

RICOH BIL Tokyoにご来場されるお客様は、それぞれの業界のプロであり、知的に尖った方ばかりです。そういった方々にまだ世に出ていない『半煮え製品』やアイデアを目利きいただき、『集合知』として価値に変えていきたい」と菊地氏は言う。

RICOH BIL Tokyoは、まずは首都圏にいるリコージャパンのセールスパーソンが、イノベーションに興味の強い大手顧客企業に声をかける完全招待制とした。1コマ2時間、菊地氏のような専門のファシリテーターと密度の濃いディスカッションを行うため、あえて余裕を持った時間を設定している。

その反響は、当初想定したものを大幅に超えるものだった。

RICOH BIL Tokyoはオープン後、約6カ月で大手企業を中心に120社以上の予約・来訪を受けた。来訪者の約40%が企業の執行役員クラス。実際にディスカッションの中から新たなイノベーションにたどり着いたケースもあり、来訪する経営層側の本気度が読み取れる。

招待客を待ち受ける100のシナリオと感動体験

RICOH BIL Tokyoとリコー本社を繋いだ遠隔ミーティングのイメージ。

RICOH BIL Tokyoとリコー本社を繋いだ遠隔ミーティング(イメージ)。互いに等身大の姿が投影され、離れていても臨場感のある会議が行える。

提供:リコージャパン

「私たちは、お客様に約100種類の“新しい価値”を伝えるシナリオを用意しています。予約が入ると、営業担当者と2週間程度前にミーティングを行い、課題認識を共有した上で、どんなシナリオをお伝えするかを決めます。必要であれば、関係する製品やサービスの担当者にも同席してもらうなど、参加メンバーを調整します」(菊地氏)

重視しているのは、フラットな議論、体験、感動だ。

要素技術と活用シーン(仮説)を基に、開発段階の「半煮え製品」を招待した業界のプロである顧客にいち早く体験、目利きしてもらうことで、今までリコーが想定していなかったテクノロジーの使い方や組み合わせ方などが、顧客のアイデアから生まれることもある。

当然、「半煮え製品」に対して、忌憚のないフィードバックもある。菊地氏は「むしろ、そのリアルな現場感のあるジャッジこそが大切」だという。意思決定者との密度の高いディスカッションを通じて、新しい価値を一緒につくっていく。それがRICOH BIL Tokyoが考える共創のカタチ、集合知の空間だ。

ターニングポイントになった顧客からの衝撃の一言

RICOH BIL Tokyoのエントランス

RICOH BIL Tokyoのエントランス。

提供:リコージャパン

半年が過ぎた今も、予約は数カ月先まで埋まっている。順風満帆な滑り出しに見えるが、厳しい現実を目の当たりにすることもある。

「RICOH BIL Tokyoができてすぐの頃、ある業界大手のお客様から“リコーは製品ロードマップやその時々のテーマで動いていて、そこから外れそうなことには何でも『できない』って言う会社だよね”という厳しい言葉をいただきました。また、今のリコーのスピード感では、例え技術があっても顧客のビジネスのスピードについていけなくなるとも言われました。

これまでも危機意識を持っているつもりでいましたが、お客様に面と向かって言われたことで、改めて行動を起こすきっかけになりました。お客様にいただいたこの率直な言葉をすぐに経営陣にあげました。経営陣もその言葉を受け止めてくれて、そこから社内、グループ内の雰囲気が変わりました。今は、リコーの経営企画部門や、グループ企業のリコーITソリューションズなどとも連携しながら、お客様の声をアジャイルですばやく形に変える仕組みを構築しようとしています。また、グループ内協力体制を強化するために、RICOH BIL Tokyoの社内説明会をこれまで100回以上行ってきたことも奏功し、RICOH BIL Tokyoって何? と思っていた各部署と連携が取れるようになり、われわれの試みに力を貸してくれる仲間も増えました」(菊地氏)

事業部門から見たRICOH BIL Tokyoの存在と可能性

リコー デジタルビジネス事業本部 CS事業センター CSマーケティング室 商品マーケティンググループ 辻井小也香氏。

リコー デジタルビジネス事業本部 CS事業センター CSマーケティング室 商品マーケティンググループ 辻井小也香氏。

実際、リコーの製品事業部からはRICOH BIL Tokyoがどのように見えているのか。リコーのデジタルビジネス事業本部でインタラクティブホワイトボード(電子黒板、以下IWB)のソフトウエア製品のマーケティングに関わる辻井小也香氏は次のように話す。

「私たちのチームで取り組んでいるのは、会議に関する課題解決の仕組みを作るためのアプリケーション開発とマーケティングです。会議中に出た意見やアイデアは、IBMのAI WatsonやマイクロソフトAzureのSpeech to Text(自然言語認識AI)なども組み合わせて、議事録作成の半自動化、省略化を実現。決められた時間内で、アクションプランや決定事項を明確にし、ゴールを達成するための支援をします」

このソリューションは市場の変化や顧客の声を素早く製品に活かすために、アジャイル開発の手法をとっている。

RICOH BIL Tokyoの全景。

RICOH BIL Tokyoの全景。

提供:リコージャパン

「RICOH BIL Tokyoでこのサービスをご体験いただいたお客様からは、多くのフィードバックをいただいています。アジャイル開発を採用することにより、4〜5カ月くらいのスピードでいただいたフィードバックを反映することができています。発売前にも関わらず、毎日のようにお客様に見ていただけて、意見を伺える場所はここ以外にはないため、とても貴重な空間です」(辻井氏)

実のところ、このIWBシステムに別のデバイスを取り付けたら、新しい活用ができるのではないか等、RICOH BIL Tokyoを体験した顧客から新しいアイデアがどんどん出てきているという。

フィクションの世界では、「現場を知らず頭の堅い経営層」がよく描かれる。しかし、現実はむしろその逆だ。実際の経営層の方々は、自社の事業領域が直面している課題を鋭く正確に分析できている人物ばかりだ。業界を代表する尖った人たちが集まり、寄ってたかって半煮え製品を前にフラットな議論をしてジャッジする。

まだ走り出したばかりとはいえ、リコージャパンが思い描いた「顧客との共創」は既に成果を上げ始めている。

2019年度に芽吹く共創ビジネスのシーズ

リコーの製品を使ってデモンストレーションを行う菊地氏。

IWBを利用したテレワーク会議(イメージ)。360度カメラのリコー「THETA」を使い会議の模様を動画中継するが、そのままだと画質の関係でIWBの文字が読みづらい。そこで、IWBのデータだけをAR合成し、鮮明に表示できるようにしたもの。

今、菊地氏が構想しているのは、2019年度のRICOH BIL Tokyoの「加速」だ。

「RICOH BIL Tokyoでお会いする方々から、われわれも気付かされることが非常に多い。イノベーションのためのアイデアをいろいろもらっています。その中で思うのは、これからは“知的に粘って考え抜くことが必要な時代”だということです。イノベーションを起こせるのは諦めない人と言います。諦めない前向きな姿勢、熱意を持ってRICOH BIL Tokyoを展開していきます」(菊地氏)

菊地氏によると、開所後6カ月で集まった顧客の声は360件。そのうち「共創案件」になりそうなテーマがすでに10件以上出てきているそうだ。パートナーは製造業、流通業をはじめ多岐にわたる。

この共創により何が生まれるのか、今はまだわからない。 ただし、それらはリコー1社だけでも、顧客企業だけでも生み出せない、まったく新しいソリューションであり、価値になるはずだ。

■RICOH BIL Tokyoについての詳細はこちらから

■ 人々の「はたらく」をご支援するリコーの取り組みについてはこちらから

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