テクノロジーは世界を変えない? ジョブズが80〜90年代に予測した未来

iPhoneを見せるステイーブ・ジョブズ

David Paul Morris/Getty

  • 1980~1990年代、スティーブ・ジョブズはテクノロジーとインターネットがいかに人々の生活を変えるかを予測した。そしてそれは驚くほど正確だった。
  • SiriのようなバーチャルアシスタントやアマゾンなどのEコマース大手を、それらが登場するかなり前から予測していた。
  • なかでも最も大きな予測は、どこでもウェブが使えるようになるということ。

今、スマートフォンを持たずに出かけることはないだろう。だが1980年代半ばから1990年代に遡ると、iPhoneのようなデバイスは、まだほとんどのテック企業と普通の消費者には無縁なものだった。フェイスブックやYouTubeのようなオンラインサービスが登場するのは少なくとも20年後、グーグルの創業は1998年のことだ。

テック業界は今とはまったく違っていた、という表現でもまだ控えめなくらい。

だがステイーブ・ジョブズは、コンピューターとインターネットが我々の生活に与える影響について、1980年代から90年代のスピーチやインタビューで予測していた。ジョブズの発言、特に彼がワイアード(Wired)の1996年のインタビューで述べたことは、非常によく当たっていた。

見てみよう。

アップルがiPadを発表したのは2010年。だがジョブズは、そのずっと以前の1983年から考えていたようだ。

iPadを見せるジョブズ

AP

1983年、アスペンで行われたインターナショナル・デザイン・カンファレンス(International Design Conference)でのスピーチで、ジョブズは「信じられないほど素晴らしい、本のように持ち運ぶことができ、5分でマスターできるコンピューター」について語った。

2012年にこのカンファレンスでの全録音が公開されると、多くのメディアが発言はiPadを極めて正確に予測していると指摘した。

Siriやアレクサが登場するずっと前に、ジョブズは現代のバーチャルアシスタントを予測していた。1984年、コンピューターの役割について聞かれた際に答えている。

Siriの起動

Florence Fu/Tech Insider

「次のステージは『エージェント』としてのコンピューターになること」と1984年、ジョブズはニューズウィーク(Newsweek)のアクセス(Access )のインタビューで述べた。

「つまり、まるで小さな人が中に入っているようなコンピューターで、その人がユーザーが望むことを予測するようになる。助けるというより、大量の情報でユーザーをガイドするようになる。コンピューターの中に小さな友人がいるようなもの」

これは、アップルのSiriやサムソンのBixby、Google Assistantが現在、iPhoneやアンドロイドスマートフォンで動作している状況ととても似ているように思える。こうしたデジタルアシスタントは使えば使うほど、ユーザーとユーザーの習慣を学習し、ユーザーが要求する前に状況に応じた情報を提供する。

Google Assistant

Hollis Johnson/Business Insider


アップルがiPhoneを発売する20年以上前に、ジョブズはこうした「エージェント」がデバイスに搭載されると予測していた。

iPhone

Justin Sullivan/Getty Images

「小さな箱、板のようなものをいつも持ち運ぶことができれば本当に素晴らしいと常に考えている」とジョブズは1984年、アクセスに語った

そしておそらく、より驚くべきことは、ジョブズが人々はこうしたデバイスを10歳で使い始めると予測したこと。

スマートフォンでゲームをする子どもたち

Getty


また1995年には、インターネットによって、スタートアップが大手企業と競合できるようになると予測した。インターネットは消費者に直接、商品を販売することを可能にし、流通に投資する必要がないためだ。

ワービー・パーカー(Warby Parker)のメガネ

Warby Parker


1996年、ワイアードのインタビューでは、インターネットは中間業者を省くことができる強力な手段との考えを繰り返した。これは現在まで、テック系スタートアップのメインテーマとなっている。

キャスパー(Casper)のマットレス

Melia Robinson/Business Insider


そして警告した。「大企業は変化を注視していないと痛い目をみることになる」と。

経営破綻した書店チェーン、ボーダーズ・グループ(Borders Group)

Wikimedia Commons


このインタビューでのジョブズの最大の予測は、誰もがいつでもどこでもウェブにアクセスできるようになるということ。確かに、多くの人がそう予測していたが、ジョブズは「ウェブ・ダイヤル・トーン(ウェブへの接続)がどこでも可能になる」ことについて述べていた。現代のモバイルファーストの世界を示唆している。

スマートフォンのカメラで写真を撮る人々

Getty

「ウェブ・ダイヤル・トーンはあらゆる場所に存在するようになる。そして面白いことになる」

もう1つの大きな予測は、ウェブでのコマースが破壊的なものになるということ。

アマゾンの荷物

Amazon


アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスも状況を注視していた。当時のアマゾンはまだ、書籍に特化した小さなスタートアップにすぎなかった。20年後の2015年、同社の売上高は1050億ドル(約11兆5500億円)、一方、ウォルマートなどの小売チェーンは売り上げの維持に苦戦、閉店が続いている。

ジェフ・ベゾス

AP

出典:GeekWire

もちろん、知ってのとおり、失敗もあった。インタビューの後半で、Eコマースの本格化は「2年くらい先」だが、大成功するだろうと述べた。






もし「アメリカで、モノとサービスのウェブでの売り上げが10%に達したら、驚異的」とも述べた。

アマゾンの荷物

Hollis Johnson/Business Insider

アメリカ合衆国国勢調査局(US Census Bureau)によると、Eコマースは2018年、小売売上高の9.7%を占めた。

ある予測は、完全にウェブアプリケーションの特徴を表していた。Ajaxやウェブ2.0といった言葉が登場するのは数年後のこと。「ウェブ上で複雑な出版ができるようになる ── ただし、作り方はとてもシンプル。今後12~18カ月で間違いなく爆発的に増えるだろう」

『ビジネスウィーク(BusinessWeek)』


ワイアードのインタビューでもう1つ衝撃的なことは、ジョブズがテスラを予測していたこと ── 少なくとも、テスラのディーラーのビジネスモデルを予測していた。

テスラ

Daniel McMahon/@cyclingreporter

「車のディーラーを考えてみよう。かなりのお金が在庫に使われている。莫大な金額。在庫は良いものではない。大量の現金が必要になるし、壊される危険性があり、流行遅れになる。管理にとてつもない時間がかかる。

そして大体、欲しい車、欲しい色はどこにもない。だから店側は客とうまく駆け引きしなければならない。そんな在庫は一切なくしてしまえば良いのでは? 白色の試乗車を1台だけとレーザーディスクか何かを用意して他の色を見られるようにする。そして、欲しい車を注文して、1週間後に受け取る」とジョブズは述べた

現在、テスラの「店舗」には車はほとんど置かれていない。代わりに、客は見本車をチェックし、オンラインまたは販売員を通じて注文し、後日受け取る。レーザーディスクのプロセスはないが。

テスラ

Joe Raedle/Getty Images

もちろん、テスラのディーラーは、ジョブズが作ったアップルストアを参考にした可能性はある。

現在、テスラはコスト削減のため、実店舗を閉鎖し、オンライン販売に移行している。ジョブズがかつてワイアードでEコマースについて予測した通りになっている。

ジョブズはワイアードに、デスクトップ市場は「今後10年間、あるいは90年代の残りは確実に暗黒時代」に入るだろうと予測した。現在、PCの売り上げは縮小し続けている。

発表会のステイーブ・ジョブズ

AP

「最終的にマイクロソフトは現状に満足していることが原因となって崩壊するだろう。そしておそらく、新しい何かが成長する」とワイアードに述べた。

「だが、そうなるまでに、根本的なテクノロジーシフトの前に、デスクトップ市場は終わる」

IDC(International Data Corporation)によると、直近の第4四半期、従来型のPCの出荷台数は前年比マイナス3.7%となった。

ジョブズはアップルのiCloudやGoogle Driveのようなクラウドサービスも予測していたようだ。「自分のストレージを管理する必要がなく、またスタンドアローンではなく、主にネットワークに接続された世界に暮らしていると、選択肢は広がる」。

発表会のステイーブ・ジョブズ

Getty

「まさに、なにも、どこにも保存しない。メールとウェブをかなり使っていて、両方を使えばもうストレージを管理する必要はない。実を言うと、やるべきことを思い出すために自分にメールしている。それが私のストレージ」

ジョブズは、グーグルが検索エンジンを完成させる前から、Chromebookの登場を予測していたようだ。「非常に興味深いウェブ端末が発表され、ハードウエアが販売されるだろう」。

ラップトップ

Steve Kovach/Business Insider

「昔のメインフレームのコンピューター環境とよく似ている。ウェブブラウザはダム端末のようなもので、ウェブサーバーがメインフレームのようにすべての処理を行う」

ジョブズは教育でのテクノロジー活用を大いに推進した。だが、1996年の時点で、テクノロジーを持ち込むだけでは教育は改善しないと理解していた。

各自ラップトップで学習する学生たち

Reuters

ジョブズはより抜本的な見直しを望んだ。現在、未亡人のローレン・パウエル・ジョブズは、チャーター・スクールに巨額の援助を行っている。

またジョブズは、我々はすでに「情報過多」の中に生きていて、「ほとんどの人が消化できる以上の情報を受け取っている」と語った。

スマートフォンを見る女性

Flickr / BuzzFarmers


だが、ウェブが産業に革命を起こすとこれほど予測したにもかかわらず、ジョブズはテクノロジーが世界を変えることはないと断言した。だが、おそらく間違っている!

iPhoneを見せるステイーブ・ジョブズ

AP

「ウェブは非常に重要なものになる。だが何百万という人の人生を変えるものになるだろうか? ノー。いや、可能性はある。だが現時点では確実にイエスとは言えない。そしてたぶん、いつの間にか浸透しているだろう」

「誰かが初めてテレビを見た時のようにはきっとならない。ネブラスカの人が初めてラジオを聞いた時ほどの大きな変化ではない。そこまでにはならないだろう」とジョブズは語った

11年後、ジョブズはiPhoneを発表した。

※敬称略

[原文:Steve Jobs made a bunch of predictions in the 80s and 90s about the future of technology — it turns out he nailed it (AAPL)

(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)

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