AP Photo/Beth A. Keiser
- ジェフ・ベゾスが1994年に創業して以来、アマゾンはオンライン書店からテック業界を支配する巨人へと成長している。
- 創業間もない頃から、ベゾスは自社の将来について驚くべきビジョンを持っていた。
- 20年前の1999年にベゾスが見事に言い当てていた予測を見てみよう。
20年前の1999年、アマゾンは創業5年目の小さなスタートアップ企業で、初期のEコマース市場で模索していた。
だが、CEOのジェフ・ベゾスは野心に満ちていた。当時、アマゾンは本以外の商品を売り始めたばかりだった。だがベゾスはこの時すでに、自身の顧客ファーストなウェブサイトが、すべてが揃うマーケットプレイスになるという、とっぴなビジョンを描いていた。
時は流れて、ベゾスは1410億ドル(約15兆円)以上の資産を持つ、世界で最もリッチな人物になった。
ジェフ・ベゾスが1999年に言い当てた、8つの予測を見てみよう。
「人々がオンラインで買いたい物は何でも探しに来て、見つけられる場所を作りたい」とベゾスはチャーリー・ローズ(Charlie Rose)のトーク番組で述べた。
アマゾンの最初の看板を持つジェフ・ベゾス。テレビのインタビュー用に、急きょスプレーで書かれた。
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1999年のベゾスのビジョンは現実のものとなっている。ナショナル・パブリック・ラジオとマリスト(Marist)による2018年の調査では、 ネットショッピングをする人はまずアマゾンにアクセスする傾向にあることが分かった ── グーグルのような検索エンジンよりも先に。
「ショッピング・モールは過去のもの」
Seph Lawless
アメリカ国内のショッピング・モールにある数千の店舗が「小売業の崩壊」によって閉店している。2017年のクレディ・スイスのレポートは、ショッピング・モールの20~25%が今後5年で閉鎖すると見積もった。ベゾスがワイアードに語ったことにも一理あると言える。
ベゾスは、実店舗が生き残るには2つの基本的な特徴のうち少なくとも1つを提供するしかないと予測した。すわなち、エンターテインメントの価値、もしくは即時の利便性。
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エンターテインメントの持つ価値は、映画館のような場所がなくならない理由にあるとベゾスはワイアードに語った。
「その体験は映画館に行ってこそ得られるもの。いつもレンタルというわけにはいかない。そうだろう?」
ベゾスの予測通り、ショッピング・センターと小売業者の多くは生き残りをかけ、この2つの道を模索している。ハイテクな体験を提供できるよう店舗を改装し、顧客を店舗に呼び込んでいるところもある。
一方、ベゾスがアマゾンに欲しかったものは、即時の利便性だった。それがホール・フーズ(Whole Foods)の買収や実店舗を持つ試みにつながった。
ベゾスのビジョンは「配送のラストワンマイルを常に自身が引き受ける」ようにすることとワイアードは記した。
「電化製品については、こうなるという大きなイメージがある。たくさんの小さな電化製品がインターネットに接続されている……、たくさんのものがネットワークに繋がっている」
Shayanne Gal/Business Insider
ベゾスは1999年の時点でスマート・ホームの出現を予測していたようだ。アマゾンは現在、数え切れないほどのアレクサ搭載スマート・ホーム機器を提供している。Echoスピーカー、コンセント、時計、電子レンジ、ホーム・セキュリティ・システムなど。
1999年、アマゾンとバーンズ・アンド・ノーブル(Barnes & Noble)は、書籍販売のライバルと見られていた。「1年後には間違いなく、誰もライバルとは思わなくなる」とベゾスはワイアードに語った。「今は明らかにライバルだが、我々が進んでいるのは別の道……、我々はeコマースの未来を作り出そうをしている。あちらはただ縄張りを守っているだけ」。
Charles Platiau/Reuters
バーンズ・アンド・ノーブルが書店のままである一方、アマゾンでは書籍は増え続ける商品カテゴリーの1つにすぎない。おそらく、電子書籍の黎明期に2つのブランドはライバルと見られていたが、アマゾンのKindleはバーンズ・アンド・ノーブルのNookを大きく引き離している。
「広告もネットでは非常に有効なビジネスモデル。広告のターゲッティングをより高度化することで、広告を顧客にとってより有意義なものすることができるだろう。放送では難しいことだ」
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検索や買い物の履歴などの個人情報を使ったパーソナライズド広告は、今や当たり前。テレビCMは減り続け、ますますデジタル広告に多くの資金が注ぎ込まれるようになっている。
アマゾンは順調に成長し、2018年後半にはグーグル、フェイスブックに続くアメリカ第3位のデジタル広告プラットフォームとなった。
「パソコンが起動するのを2分も待つことほどイライラすることはない。2分経ったころには、何をするつもりだったか忘れている。だから、これは非常に重要なテクノロジー。実際、多くの人が取り組んでいる。いつか実現するだろう」
AP Photo/Richard Drew
ベゾスは、パソコンの起動が遅いことが不満と、1999年の複数のインタビューで述べていた。
チャーリー・ローズのインタビューで、 パソコンは彼が言うところの「インスタント起動(instant on )」を備えるだろうと述べた。
今、片手でさまざまな用途に使えるスマートフォンと、毎回電源を切る必要のないノートPCがベゾスの望みを叶えたようだ。テクノロジーはかつてないほど容易に利用できるようになった。
1999年のワイアードには、ベゾスの2020年のビジョンの概要が記されている。「店で販売されている商品、例えば主要な食品、紙製品、掃除用品など、ほとんどの商品は電子的に注文するようになるだろう」。
Amazon; Samantha Lee/Business Insider
「ほとんど」は言い過ぎかもしれないが、オンライン・ショッピングは飛躍的に成長した。アマゾンは生活必需品や家庭用品の購入先の第一候補となっている。定期購入や、アレクサを使った音声による注文、Amazonnパントリーなど簡単に注文できるよう設計されたサービスがあるからなおさらだ。
だが、ベゾスの予測のすべてが正確というわけではない。
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ベゾスはアマゾンの顧客データの利用について、CBSの「60ミニッツ(60 Minutes)」のインタビューで話をしたことがある。
番組でレポーターのボブ・サイモン(Bob Simon)が衝撃的な発言をした。
「ベゾスは、将来的に価値ある情報を他社に販売する可能性を否定していない。だが彼は、顧客がこれを問題視していないと思っている」
※敬称略
[原文:Jeff Bezos predictions from 20 years ago that were right on the money]
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue、増田隆幸)