テスト機「テスト・ホッパー」の下部を発射台に運ぶスペースXのスタッフ。2019年3月8日。
Maria Pointer (bocachicaMaria)
- スペースXはテキサス州の南端、ボカチカ・ビーチの近くにある発射施設でステンレス製のロケットを製造した。
- 「テスト・ホッパー(Test Hopper)は、イーロン・マスクが人類を火星に送るロケットシステム「スターシップ」の最初のプロトタイプ。機能は限定されている。
- 地元住民が15日に受け取った文書によると、スペースXは3月18日(現地時間)に「テストを実施」する予定。
- 同社は以前、テスト・ホッパーの「最初のテストは係留された状態で行われ」、「ホップ(短時間の垂直離陸および着陸)」は、「現場以外では」見ることはできないと述べた。
スペースXは火星に人を送るロケットの最初のプロトタイプのテストを行う予定、Business Insiderが文書を確認した。
3月18日(現地時間)、スペースXはプロトタイプ「テスト・ホッパー」の初期テストを実施するようだ。同社施設があるテキサス州の南端、ボカチカ・ビーチ付近の住民に届けられた文書で判明した。
スペースXは2014年、ボカチカにファルコン9ロケット、ファルコンヘビーロケットの発射施設を作り始めた。だがイーロン・マスクは2018年はじめ、ボカチカは新しい火星ロケット・スターシップの「専用施設とする」と述べた。
3月8日、スペースXはホスト・ホッパーの下部を発射台に移動させた。そのすぐ後、エンジニアはトラック1台分の大きさのロケットエンジン「ラプター」をテスト・ホッパーに取り付けた。ラプターは同社が開発した新型の強力なエンジン。
テスト・ホッパーは宇宙空間には到達しない。だがスペースXがフルサイズの(以前はビッグファルコンロケットと呼ばれた)スターシップを作るためにハードウエアとアイデアをテストするための重要なロケット。
左からテスト・ホッパー、スターシップ宇宙船、ブースター、宇宙船とブースターで構成される打ち上げシステム。
© Kimi Talvitie
スターシップは再利用可能な2つのパートで構成されている。宇宙船「スターシップ」とブースター「スーパーヘビー」だ。2つを合わせた高さは約400フィート(約122メートル)、スターシップは超高温のプラズマから船体を守るために燃料を「放出」する大気圏再突入システムを備える。
マスクが「熱望」する夢のシステムが実現すれば、スターシップは2020年に地球軌道に到達し、2023年に乗員を乗せて月周回軌道を行う。そして2024年には、初めて人類を火星に向けて送り出す。最終的には最大100人の乗員と150トンの貨物を同時に火星に送る予定。
だがまず、スペースXはテスト・ホッパーでスターシップのもととなる基本的なコンセプトを証明しなければならない。
同社広報担当者のコメント、およびボカチカの一部住民に配られた文書によると、スペースXは18日、テスト・ホッパーにエンジンを搭載した状態での初の点火テストを行い、その後すぐに、ロケットを係留した状態で「ホップ」(短時間の垂直離陸と垂直着陸)のテストを行うようだ。
マスクもホップのテストを予定していることを認めた。
「エンジンと船体を統合する際には常に多くの問題が起きる」とマスクはツイートした。
「最初のホップを行う、だがごく短時間のものになる」
「テスト・ホッパー」の重要性
スペースXのテスト・ホッパーは同社のスペースシップのプロトタイプ。テキサス州ボカチカの同社発射施設。
Copyright Jaime Almaguer
テスト・ホッパーは地球軌道には到達できない。テスト・ホッパーは比較的ラフな仕上げのずんぐりしたロケットで、下部の高さは約60フィート(約18メートル)。アメリカ連邦通信委員会への提出文書によると、高度約1万6400フィート(約5000メートル)以下の大気圏での短時間フライトがその用途。
マスクはまた3月17日にも、ロケットが単発であることを考慮すると、最初のホップは「極めて短いもの」になるとツイート、だがロケットは「3回の弾道飛行」を行うことができると記した。
2019年1月、マスクは、より高さのある、軌道飛行が可能なバージョンを「6月頃」に作る予定で、「より厚い外装と滑らかにカーブしたノーズセクション」を備えたロケットになると語った。
しかし、その予定は現在は不明。2月、テキサスの強風がテスト・ホッパーのノーズコーンを吹き飛ばし、ダメージを与えたためだ。
スペースXのテスト・ホッパー、2019年1月。強風で倒れ、ノーズコーンを損傷する前。
Elon Musk/SpaceX via Twitter
マスクは事故当日、ノーズコーンの修理には数週間かかると述べた。だが17日、ノーズコーンの修理作業を放棄したことを示唆、スペースXは現在、ボカチカでスターシップの初の「フルサイズ」プロトタイプを作っていると述べた。
「我々はホッパーの新しいノーズコーンの製造をスキップすることに決めた。作っているのは、地球軌道を飛行できるスターシップ」とマスクはツイートした。
ノーズコーンを作らない状態で、スペースXは今、ボカチカでのテスト・ホッパーの初期段階の点火テストに臨もうとしている。
「数日以内に新たに設置した地上システムの点検を行い、短時間のスタティック・ファイア・テストを行う予定」と先週、スペースXの広報担当者はメールでBusiness Insiderに述べた。
「スタテック・ファイア・テスト」とは、ロケットエンジンに点火し、動作を確認するテストのこと。エンジンを搭載したロケット(今回の場合はテスト・ホッパー)は、地面から離れないよう係留される。このテストは本格的な打ち上げの前にトラブルを見つけ、修正するために行われる。
「プロトタイプはラプターエンジンを搭載し、弾道飛行が可能なように設計されているが、最初のテストでは係留されている。そして、ホップは現場以外からは見ることができない」と広報担当者は付け加えた。
(翻訳、編集:増田隆幸)