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400万社の企業情報をどう使うか——官×民で議論して見えた電子政府の未来

経産省が運営する「法人インフォメーション(以下、法人インフォ)」というサイト。 現在は法人番号をキーとして、約400万社の法人名と所在地に加えて、各府省庁が保有する特許取得情報、政府調達受託情報、補助金採択情報などに関する情報を集約し、検索及びデータを取得できるオープンデータサイトである。

2019年3月、東京・品川にこの法人インフォの情報を利用する企業と政府の担当者約20人が一堂に会し、システムや提供データのあるべき姿について意見を交換する「官民ラウンドテーブル」が開催された。

政府に集まっている情報は、企業にとって宝の山

会合の様子

冒頭、政府側を代表して経産省情報プロジェクト室長 中野美夏氏による「法人インフォメーションの展望」と題しての法人インフォを中心に経産省での取組を紹介。続いて、ユーザーの立場からオープンコーポレーツジャパン、東京商工リサーチ、東洋経済の各社が、企業分析に必要な機能やデータの理想的な姿をプレゼン。

営業先の見込み企業を下調べしたい、取引先の状況を知りたい……。そんなときは読者の皆さんも企業情報サービスを利用するだろう。「法人インフォ」を活用することで、もっと便利になる。

「法人インフォ」に掲載されているのは、100万件を超す特許情報、各省庁から集められた補助金取得情報、その他調達情報、許認可・表彰情報など、企業にとって役に立つものが多い。

経産省では、行政事務を紙からデジタルに置き換え、データを利活用することで、単なる業務の効率化に留まらず、ユーザー目線で新たな価値を創出することを目指す「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に取り組んでいるが、法人インフォを、法人データ利活用を進めるためのデジタルプラットフォームの一部として位置付けている。

このラウンドテーブルは、ユーザーが求めるデータや機能を把握し利便性を高めるための政府と事業者の直接対話の場として設けられた。まずテーマとなったのが、メディア企業や信用調査会社が提供する、企業情報サービスでの活用だ。

「納税申告の有無」「過去データ」で生きた企業の姿を捉える

東京商工リサーチの田中氏

納税申告データの重要性を説く東京商工リサーチの田中氏。

企業情報サービスを展開する東京商工リサーチには、「〇〇社は実在しているのか、活動しているのか」といった問い合わせがよくあるという。そこで同社の田中智子氏は、実存性を確認する有力な証拠となり得る項目として、「納税申告の有無」 の公開を提言した。

東洋経済データ事業局の鈴木氏

「過去の履歴データも重要」と話す東洋経済データ事業局の鈴木氏。

『会社四季報』を刊行する東洋経済新報社データ事業局の鈴木奈緒氏も、やはり企業活動を見えやすくするという観点から、法人名や所在地などについて過去の履歴も表示することを提言。非上場企業の財務や代表者、資本金などの情報拡充も重要であると指摘した。

こうした提言に対し、政府側からは、

・いずれも現在は公開対象のデータではないが、利用者の声を聞いて取り組むよい例になるのではないか。

・企業情報の過去の履歴については、これまではシステムの技術面、性能面で難しかったが改善されてきている。前向きに検討したい。

と、ユーザーの体験を重視する開発手法の導入や技術の進化を背景に、積極的に対応したいとの意向が示された。

クリック一つで決算公告の実現を

freeeの木村氏

freeeの木村氏は民間サービスとの連携について提言。

中小企業向けにクラウド会計ソフトを提供するfreeeの社会インフラ企画部部長、木村康宏氏からは興味深い提案があった。同社製品をはじめとする会計ソフト上では、当然のことだがユーザー企業の決算書を作成できる。

さらに、同社ではデータ形式の標準化やAPI(Application Programming Interface)による外部システムとのデータ連携を重視した製品開発を行っていることから、 「例えば画面上の『決算公告』ボタンをクリックすれば、法人インフォに決算データを送信するような仕組みも可能です」。

グラフィックレコーディング

会議と並行してリアルタイムに議論の内容を整理するグラフィックレコーディングの手法を活用。休憩時間には多くの参加者が議論の流れを振り返った。

会社法では株式会社は官報、新聞、ウェブなどに決算公告をすることが義務づけられているが、媒体に応じて10数万から数百万の費用がかかることもあり、多くの中小企業は決算公告をしていないのが実態だ。

これに対し、法人インフォがfreeeなどの民間サービスと連携し、クリック一つで政府運営システムに決算公告ができるという仕組みを実現出来れば、決算公告をする企業は増えていくのではないかと議論は盛り上がった。

また、ウェブでの決算公告がどうしたら進むのかという点について、内閣官房 日本経済再生総合事務局参事官の川村尚永氏は、現状の中小企業経営者が抱える課題を起点に次のように分析する。

「本来、株式会社は倒産などの際は有限責任であるもの。だが中小企業の経営者の多くは債務の個人保証などによって実質、無限責任になっている」「経営者保証ガイドラインでは、経営者の個人保証を求めないようにするための条件の一つとして、経営の透明性を高めることが盛り込まれている。経営者保証を外すための取り組みの一つとして位置づけていけば、企業側のメリットになるのではないか」

回答する政府関係者

民間企業からの率直な要望、意見に対応する政府の関係者。

確かに「決算公告をしておけば、会社の借金の個人保証はしなくてよい」となれば、メリットと感じる企業は多いだろう。また現在は納税申告で決算書を提出しているのに、補助金申請の際にはまた同じ書類を提出ということが起こっているが、「決算公告していれば再提出不要」ということも可能になるかもしれない。

企業側がメリットを享受することで「法人インフォ」の企業情報が増えれば、情報利用者の利便性もアップするという好循環が生まれる。「クリック一つで決算公告」は、なかなかのグッドアイデアではないだろうか。

「Null」のデータを取り除き、データ品質を向上させよう

会場からの意見

当日は会場からの質問を匿名で集められるサービス「sli.do」を活用し、双方向型のディスカッションが進んだ。

最後に紹介するのは「法人インフォ」のデータ可視化に関する問題提起や要望だ。企業向けにデータの可視化ツールを提供するTableau Japanの尾崎直子氏は、同社のツールで実際に法人インフォのデータを処理しながら、その問題点や可能性を示した。

Tableau Japanの尾崎直子氏

Tableau Japanの尾崎直子氏。

あるデータ群を取り出してみると、そこには項目数が321あった。ところが何も文字や値が入っていない項目、いわゆるNull値を取り除くと、項目数は22に大きく減った。

「こうした何も入っていない項目は、データを使いやすい形に整形する際に取り除く必要がある」と尾崎氏。一つの項目に複数の情報が入っていることもあり、データ整形に非常に手間がかかってしまうと話した。

これに対し政府側からは 、

「項目自体は細かくしておかないと一つの項目に色々なデータを入れてしまい、利活用しようとしたときにやはり整理が困難になる。現在はいったん細かく項目を作った段階のため、ここからはNull値を埋めていくことが課題だ。データ入力段階のルールを詳細に決める、どの項目は空白率何%というような、データの評価軸を作るといったことを通じて空白項目を減らし、データの質を高めていきたい」

と、具体的な方向性が示された。

一方で尾崎氏は、「法人インフォ」のデータがもつ可能性も示した。特許情報や調達情報のデータを集計し、企業ごとの金額や件数のランキングを出して見せ、 「どの企業がいつごろから特許件数を増やしているのかといったことがわかり、さらにデータの精度が上がっていけば、より高度な分析も可能になります」

データの使い道を政府自身が意識する

澤谷由里子氏

ファシリテーターとして三菱総合研究所主席研究員の村上文洋氏(左)と、有識者として名古屋商科大学教授澤谷由里子氏が登壇。

有識者として登壇した、名古屋商科大学教授の澤谷由里子氏は、今後の法人インフォメーションについて、「データを入力していく人を巻き込んだPDCAを回していく必要がある」と指摘。

その上で、「オールマイティに“正しい“データというものはない。何のために使うのかが先にあってこそデータは初めて生きてくる。データを提供する政府側も、ぜひ自分たちでそのデータを使ってレポートを作成するなど、身をもって体験すると、ユーザーが何を求めているのか、不便さの原因はどこにあるのかが明らかとなり、サービスの質が向上していく」と締めくくった。

経産省がユーザー視点で進めるデジタル化の取り組み、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の一つの柱である「法人インフォ」。もっと詳しい情報が見たい方は、ぜひ、経産省のデジタル・トランスフォーメーション特設サイトを確認してみて欲しい。

経済産業省のデジタル・トランスフォーメーションについて、詳しくはこちらから

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