虎屋の羊羹もってドメイン取得、急成長のnote「.jp」にこだわった理由

会議中の様子

「.mu」ドメインでサービス開始したワケとは。

SARINYAPINNGAM

cakes・noteを提供する株式会社ピースオブケイクのCEO加藤貞顕さん、CXO深津貴之さんとの対談の第2回目です。第1回をご覧になってない方はこちらからご覧いただけます。

関連記事:note急成長の舞台裏と.com .jpドメイン取得の経緯を聞いてきたよ(第1回)

【第1回のポイント】
・「noteは稼げる」を言わないようにする
・深津CXO作「noteの成長モデル」の詳細解説
・シンプルに成長するためのフォーカス
・ピースオブケイクにとって売上はあくまで「結果」
・CXO自ら記事を量産して一番のヘビーユーザーになる

そもそもなぜドメインでサービス開始した

シバタ:今回「.com」「.jp」ドメインを取得されたわけですが、最初はなぜ「.mu」ドメインで始めたんですか?

加藤:これは、そんな深い考えがあったわけではなく……(笑)。最初はcakesというサービスから始まって、「.jp」や「.com」をもちろん取ろうとしたんですが、空いていませんでした。それで、空いているドメインを探すわけですが、当時、音楽系のサイトが「.mu」ドメインでサービスを始めるというのが流行っていたんです。Musicの「mu」です。クリエイティブ系は「.mu」ドメインで始めるという流行りがあったんですね。

シバタ:なるほど。確かに一時期「.mu」ドメインたくさん見ましたね。

加藤:それで、ここ空いているし、まあ取るかという具合に始めてしまった。もちろん、お金もなかったっていうのもあります。

深津:時代的にも、おおらかにドメインを取ってOKみたいな空気でしたよね。デリシャス(del.icio.us)の「.us」みたいな事例もありました。

加藤:マイナードメインだったこともあって、結局noteを始める時にnote.muも取れたんですよ。

シバタ:ちなみに「.mu」ドメインのデメリットの話で、検索流入(SEO)の話がありましたが、今までSEO以外で困ったことってありますか?

加藤:SEO以外では特にはないですね。ただ、やっぱりメジャー感という意味で、「サイトとしての覚悟」というのかな。迫力という意味では足りないなっていうのはもちろん思っていました。

あと、深津さんの言う3つのテーマ、コンテンツパワー・発見性・継続性のうち、発見性のところでは、ソーシャル流入ももちろん大きいのですが、やはりSEOも超重要です。そこは、深津さんが来てから1年半くらいで、8倍くらいになっています。

シバタ: 「.jp」「.com」にしたらもっと上がりそうなイメージはパッと見た感じはしますよね。

作業している手

ドメイン1つで検索流入も変わる。

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「.com」ドメインが重要な理由

シバタ:「.com」のドメインがなぜ重要なのかという話もしたいと思います。僕の印象は、とにかくアメリカに来てから、「必ず.comドメインを取れ」ということをすごくいろいろな人に言われました。

例えば、Yコンビネーターのポール・グレアムも、500Startupsのデーブ・マクルアーも、「.com」ドメインが取れないなら名前変えた方が良いということを書いています。名前を覚えてもらうコストが大きすぎるからです。日本語だと違うと思いますし、noteの場合は割とnoteっていうブランドがすでにでき上がっていたと思うんですけど。「.com」はやっぱり重要ですか?

加藤:後付けの説明はいくらでもできるんだけど、経緯のことを考えると深津さんからしたほうがいいですね。

「.com」ドメインを取得した「守り」の理由と「攻め」の理由

深津:noteとして守りの意味での「.com」の重要性と、攻めの意味での「.com」の重要性というのがあります。攻めの話からすると、僕のクライアントには新聞や車、キャリアなどのナショナルクライアントが多いんですけれど、そういうクライアントに対して「企業が王者だったら王者として振る舞うべきだし、王者になりたかったら王者っぽい振る舞いをしたほうが伸びやすい」ということを言っています。それと同じで、「note.com」を持っていないのは王者っぽくないという話です。

シバタ:確かに、そうですね。

深津:特に、競合や良く分からないどこかの会社が「note.com」持っている状況だと王者っぽくないですよね。ドメインだけの話ではなくて、例えば出版業界をリードするのはnoteであるべきだし、情報発信の仕方を教育するのはnoteであるべきだというように振る舞いたいわけです。この業界で新しく何かをはじめる時に、王者がやるべきことは全部noteが押さえたいというような、サービスの帝王学を持つのはとても重要だと思っています。

シバタ:すごくわかります。

深津:日経新聞さんとかも業界のドメインの王者なので、サブサービスを作らなくてもいいので。日経電子版を作って、社会人の会員IDを抑えていくのが正しいよね、というイメージです。

打ち合わせ風景

ドメインで攻めるか守るか。

Pattanaphong Khuankaew / EyeEm

シバタ: 実際、日経さんってあんまり細かいことやらないですよね。

深津:細かい小さなサービス作らないほうがいいですよって常々言っていたりします。

シバタ:その割には、本体はどんどん大きくなりますよね。

シバタ:先ほど、攻めと守りという話がありました。攻めの方は「サービスの帝王学」を持つなら「.com」ドメインは必須、という話でしたが、守りの方も教えてください。

深津: 守りはシンプルにSEOの話です。

シバタ:SEOは守りになるんですね。なるほど。

深津: noteのコンテンツをちゃんと届けるときに、今の「.mu」はSEO的に不利だという話を専門家に言われました。

シバタ:それは間違いないと思います。

深津:そこで「.jp」あるいは「.com」あるいは、それが不可能な場合は、「ピースオブケイク(pieceofcake).com」に変えてでも「.com」か「.jp」を手に入れる必要があるという結論に至りました。最初に話をしたのは、加藤さんに「.jp」ほしいんでドメインの保有者を説得しましょうよ、というところから始まったんですよね。

加藤:そうですね。実は「.jp」のほうが早く手をつけ、入手したのも「.jp」が早いですね。じつは深津さんはその前から、独自に「.com」の取得に……。

お話ししている様子

「note.jp」ドメイン取得の経緯詳細

深津:そうそう、「.jp」のほうは最初から加藤さんにおねだりして、所有者だった地方にお住まいの方のところに一緒に行きました。

加藤:行きましたね。

深津:「ドメイン、お譲りください」と言って、菓子折り持参で。

シバタ:菓子折り持参なんですね(笑)。

加藤: 地方で自営業をされている方でした。その方のウェブを見て、note.jpの持ち主がいるのは、僕もずっと前から知っていたんです。で、深津さんがCXOとして来て、「お譲りいただけるようにがんばりましょう」って言われて、実際に連絡をしたんです。ただ、最初はちょっと難色を示されました。

シバタ:それはそうですよね。独自ドメインはウェブサイトだけでなく、メールアドレスにも利用していたりするので、簡単ではないですよね。

加藤:特にメールアドレスを、例えばAmazonやら楽天やらいろいろなサイトで登録してしまっているので、それらの登録を変更するだけでも大変過ぎて無理だとおっしゃっていました。

深津:「もう自分の人生と紐付いているから譲れません」みたいな感じでしたね。

加藤:でもまあ「とりあえず会って話をさせてください」と言って。深津さんと僕とで、虎屋の羊羹を持って伺いました(笑)。

深津: ピースオブケイクやnoteの大義名分や、今後「note.jp」をこのように使っていきたい、だから必要なんですとという話をさせていただきました。

加藤:我々2人から相当丁寧に説明をさせていただたんですが、結果、お譲りいただくことができました。

シバタ:ちなみに、最初にコンタクトしてから最終的に取得できるまでにどのくらいかかっているんですか?

加藤:最初に1回断られたりしているので、半年くらいですかね。

シバタ:半年で取得できてよかったですね。もっとかかる場合もあると聞いたことあります。最後にいくらお支払いしたのでしょうか?

加藤:[自粛]万円です。

シバタ:なるほど。詳細にありがとうございます。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中

決算が読めるようになるノートより転載(2019年3月18日公開の記事

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