ホリエモンロケットMOMO3号機発表、本格参入ねらう「宇宙輸送サービス」への道筋

ISTの3回目の打ち上げに使われる「宇宙品質にシフト!MOMO3号機」の実寸大模型。

ISTの3回目の打ち上げに使われる「宇宙品質にシフト!MOMO3号機」の実寸大模型。

3月19日、ロケット開発を手がけるベンチャーのインターステラテクノロジズ(以下IST)は都内で記者向けの発表会を開催。ISTが開発を進めていた観測ロケット「MOMOシリーズ」の開発状況を説明。さらに「MOMO」よりも大型の衛星軌道投入ロケット「ZERO」の開発についても詳細が明らかにされた。

MOMO2号機の打ち上げ「失敗」を振り返る

発表会にはISTの代表取締役社長 稲川貴大氏とファウンダーの堀江貴文氏が登壇。冒頭で堀江氏は「前回失敗した2号機の失敗分析は完了しており、問題点は全部つぶした。今度打ち上げるMOMO3号機は燃焼試験も終了しており、はっきりとした時期は言えないが本番に向けたリハーサルが終われば打ち上げられる」と、3度目での打ち上げ成功に向けて準備万端であることをアピールした。

ISTのファウンダー堀江貴文氏。

ISTのファウンダー堀江貴文氏。

IST 代表取締役社長 稲川貴大氏。

IST 代表取締役社長 稲川貴大氏。

稲川氏からはまずMOMO2号機の失敗原因について説明、2号機から採用した姿勢制御用のスラスタ燃焼器が失敗の要因とした。設計値より大幅に姿勢制御用ガスが高温になり、配管が溶解し、漏れた高温のガスがバルブ駆動系配管を損傷してしまったという。

ただしエンジン自体はこの異常を検知して安全装置が作動し止まっている。想定外の要因だが、エンジン爆発などの危険は避けるコントロールはなされていたわけだ。

MOMO2号機の打ち上げ失敗の要因について分析するスライド。

MOMO2号機の打ち上げ失敗の大きな要因は姿勢制御用スラスタ燃焼器。

新たにMOMO3号機を開発するにあたっては、「今までは内製化、独自でやっていこうという方針だったが、外部の有識者のアドバイスを受ける体制に変えた」(稲川氏)。2018年10月に外部原因対策委員会を設立し、JAXA宇宙研にてロケット開発を経験している成尾芳博氏や、元三菱重工執行役員フェローの淺田正一郎氏などが参画している。

外部からのメンバーも含めて原因対策委員会を設立したことを示すスライド。

原因究明と前向きな改善のため、外部からのメンバーも含めて原因対策委員会を設立している。

こうした外部からの協力もあり、MOMO3号機は最終テストに近い縦式燃焼テストも終了した。稲川氏は「今年中の早い段階で打ち上げを行いたい」と話している。

またスポンサー契約として、ネーミングライツと広告掲載についても発表。ネーミングライツを取得した実業家の丹下大氏により、名称は「宇宙品質にシフト MOMO3号機」と命名。広告掲載は資産運用会社のレオス・キャピタルワークスの運用する投資信託「ひふみシリーズ」のイメージキャラクター「ひふみろ」や、日本創世投資のロゴデザインがあしらわれることとなる。

「ZERO」で宇宙輸送サービス参入を狙う

「ZERO」の模型(左)とMOMO3号機の模型。

「ZERO」の模型(左)とMOMO3号機の模型。高さは約2.5倍ZEROのほうが大きい。

MOMO3号機と並行して開発が進む、衛星軌道投入ロケット「ZERO」の開発進捗についても、稲川氏、堀江氏の両名からプレゼンがあった。

MOMOシリーズは観測ロケットで、いわば打ち上げを成功させるための実験ロケットだが、一方の「ZERO」は衛星軌道上まで人工衛星などを運搬して運ぶためのロケット。役割が異なる。ZEROの高さはMOMO3号機の約2.5倍となる22メートルで、重量は約30倍。このサイズを衛星軌道へ打ち上げるために、MOMOは1段式だがZEROでは2段式液体燃料ロケットを採用する。エンジン出力は約50倍にアップされ、4〜5倍の速度、20倍のエネルギー量が必要になるという。

開発スケジュールとしては、MOMO3号機の打ち上げと同時期にエンジン開発を本格スタート。2021年には発射場整備を完成し、2023年に初号機を打ち上げる予定だ。その後はロケットの量産化に取り組み、「ZERO」を使った宇宙輸送サービスを手がけていくとした。

ロケット開発マスター計画のスケジュール。

今後のロケット開発と打ち上げのロードマップ。2023年にはZEROの初号機打ち上げが予定されている。

堀江氏は、「現在は大型のロケットでのロケット打ち上げ市場はあるが、小型衛星の打ち上げ市場はまだない。小型ロケットのニーズはあり、ニュージーランドのロケットラボなど何社かがマーケットを狙っている。ISTはやや乗り遅れているが、キャッチアップしていきたい」と説明。

さらに宇宙事業に参加する理由について「インターネットの可能性を信じていた時代に似ている。インターネットが普及したことによって、考えもつかなかったような利用方法やサービスが登場した。ロケットによる宇宙運輸サービスも同じで、衛星を打ち上げるコストは現在何十億円とかかるが、この桁をひとつふたつ下げることで、インターネットと同じように、思いもつかなかったようなアイディアを持った人が使えるようになる」と語った。

MOMO3号機とZEROの違いを説明する堀江氏。

MOMO3号機とZEROの違いを説明する堀江氏。

稲川氏からは、さらに詳しい市場についての解説があった。

「2018年は世界で250基の超小型衛星が打ち上げられており、今後5年間でさらに2000基以上になるとされる。人工衛星をつくるプレーヤーは多いものの、ロケットの打ち上げ事業者は少なく、大型のロケットに相乗りして打ち上げており、予約待ちで需要と供給が一致していない状態」と言う。

さらに大型ロケットの相乗りの場合、複数の衛星を搭載している関係で本来目的とする位置(軌道)まで運ぶことのできない衛星もあり、打ち上げ後にさらに移動させるといった不便さもあるという。ISTの「ZERO」は0.1kgから100kgほどの超小型衛星の輸送をターゲットとしており、打ち上げが成功し事業化がスタートすれば確実に市場があると言う。

ISTが輸送の対象としている超小型衛星を示すスライド。

ISTが輸送の対象としている超小型衛星。

民間の衛星事業者による需要予測を示すスライド。

今後5年間でさらに2000基以上の超小型衛星が打ち上げられると予測されている。

現在の大型ロケット相乗り方式では問題も多いことを示すスライド。

現在の大型ロケット相乗り方式では問題も多い。

もちろん世界中にはこの市場を狙っている競合プレーヤーも存在する。これについて稲川氏は「小型ロケットのプレーヤーは100以上あると言われているが、実現可能と思われるのは数社。ISTは観測ロケットを開発し基礎研究までやっているので、その数社からは大きく遅れてはいない。世界に負けないロケットが作れる」と自信を見せる。

さらにライバルがいる場合でも「地域性もあり、たとえばアメリカで打ち上げる場合は輸出規制などもあり手続きが大変。日本だけでなくアジア圏やロシアなど(の市場)もしっかりと押さえられれば、十分市場はある」としている。

「ホリエモンの夢」に現実味が出てきた

「ZERO」の開発は「MOMO3号機」と同じくIST独自にこだわらず、外部の協力もとりつけていく。そのため新たに法人サポーターズクラブとして「みんなのロケットパートナーズ」を設立。JAXAや丸紅、ユーグレナそしてロケットの発射場がある北海道大樹町など8つの企業や団体が参画している。

「みんなのロケットパートナーズ」に参画している企業や団体のロゴ。

「みんなのロケットパートナーズ」に参画している企業や団体。

注目なのは丸紅とユーグレナだ。発表会には丸紅から航空宇宙・防衛システム部長の岡崎徹氏が登壇。「小型衛星の需要は高い」と話し、現場レベルでの宇宙輸送市場が大きなものであることを裏付けていた。

ユーグレナはミドリムシからバイオ燃料を生成する技術を持っている。ZEROに使われる燃料もユーグレナが担当することとなり、これが成功すれば日本のエネルギー産業に一石を投じる可能性がある。

スタート時は「ホリエモンの夢物語」と揶揄されていたロケット事業ではあるが、ここにきて日本の宇宙開発の本丸JAXAも引き入れ、大手企業からベンチャーまで開発や事業に加わり、現実味のあるプロジェクトに変わり始めたように感じる。

発表会後は堀江氏と「みんなのロケットパートナーズ」の発起人のひとりであるFC今治オーナーで元サッカー日本代表監督 岡田武史氏とのトークセッションも行われた。

FC今治オーナーの岡田氏と堀江氏によるトークセッション。

FC今治オーナーの岡田氏(右)と堀江氏によるトークセッション。堀江氏は「風向きがどんどん変わってきましたね」と話した。

「変わった風向き」がこのまま宇宙輸送サービスを展開できるまで安定して吹き続けるかどうか。すべては近いうちに予定されている「宇宙品質にシフト MOMO3号機」の打ち上げが成功するかどうかにかかっている。

(文、写真・中山智)

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