あいみょんヒットを「予言」したSpotify上陸3年目。ストリーミング激戦時代の勝ち方とは。

Spotify Japan

Spotify Japanのオフィスには、多くのアーティストのサインがかけられている。

競合がひしめく、音楽ストリーミングサービス業界。その中でも存在感を示し続けているのが、2016年に日本に上陸したSpotifyだ。

関連記事:月額980円のサブスク新勢力「YouTube Music」は“Spotify潰し”になるか?

上陸から3年、ビジネスはどのように成長してきたのか?ユーザー獲得競争が激しさを増すなか、Spotifyが見据える“勝機”とは? Spotify Japanのコンテンツ統括責任者の芦澤紀子氏に聞いた。

あいみょんのヒットを“予言”

Spotify Japan

Spotify Japan コンテンツ統括責任者 芦澤紀子氏。

Spotifyは、2008年にスウェーデンでサービスを開始。2019年1月には全世界でMAU(月間アクティブユーザー)が2億人を突破したと発表した。

そのうち有料課金(メインのプランで月額980円)ユーザーは9600万人にのぼる。日本市場のユーザー数の推移は公開していないが「堅調に伸びている」とSpotify Japan広報の万波宏司氏は語る。

2016年からの3年間、Spotify Japanが“プッシュした”アーティストの中でもっとも大きく躍進したのが、2018年に紅白歌合戦の出場も果たしたあいみょんだろう。

Spotifyは2016年12月に発表した、新人アーティストを発掘するプレイリスト「Early Noise 2017」にて、あいみょんを選出。

あいみょんはオリコン週間ストリーミングランキングで11週連続で1位を取り続けるなど(3月26日時点)スターダムを駆け上がった。ヒットの背景には、Spotifyでの人気と、音楽番組やドラマの主題歌といったマスメディアの露出との相乗効果があった、と芦澤氏は振り返る。

2019年のグラミー賞にノミネートされたショーン・メンデスを早くから見出すなど、Spotifyは新人アーティストの発掘に力を入れてきた。日本版の「Early Noise」も2017年から毎年、Spotifyのエディトリアル・スタッフにより選ばれており、2019年も10人が選出されている。

2018年に入ってから、Mr.Childrenや松任谷由実、井上陽水など、今まで音楽のデジタル配信をしていなかったアーティストが続々とSpotifyに楽曲を解放した。こういった流れもユーザー数の伸びを後押ししている、と同氏は語る。

ストリーミング時代に勝つのは「面で取れる人」

Spotify Japan

オフィスの様子。ミニライブやイベントを開催することもあるという。

Spotify、Apple Music、YouTube Musicといったストリーミングサービスの流行によって、音楽市場での「勝ち方」は大きく変わった。中でも、アーティスト同士のコラボレーションが増えたことを、芦澤氏は特徴として挙げる。

Spotifyでの音楽視聴で特徴的な点は「プレイリスト」が非常に大きな役割を担っている、という点だ。

プレイリストには、自分が過去に視聴した楽曲のデータに基づいて自動でキュレーションされるものと、Spotifyのエディトリアル・スタッフによって作成されるもの、さらにユーザー個人が作れるものもある。

ある楽曲が多くのジャンルに関連していると、その分複数のプレイリストに入る可能性が高まる。この関連付けに成功し、アメリカのチャートに食い込んでいったのが、BTSをはじめとするK-POPアーティストや、ラテン系アーティストだった、と芦澤氏は語る。

Spotifyが発表した「2018年に世界でもっとも再生されたアーティスト」2位になったBTSも、ヒップホップやEDMの著名アーティストとのコラボを積極的に行なっている。

動画: ibighit

さらにコラボは新人アーティストの売り出しにも重要な役割を果たすと同氏はいう。実際に、最近デビューしたアーティストを見てみても、IZ*ONE、BLACK PINKらが早くから欧米の人気アーティストとのコラボ楽曲を提供している。

こうした例を受けて、日本でもコラボの潮流が生まれてきている。

その例として芦澤氏は、宇多田ヒカルが2018年にアメリカのアーティスト・Skrillex(スクリレックス)と共作し、ゲーム「キングダム ハーツIII」の主題歌にもなった『Face My Fears』を挙げた。J-POPのファン、EDMのファン、そしてゲームファンと三つの異なるジャンルでの「面」を取ることに成功したという。

プレイリストに勝機を見出す

2015年に日本進出を果たしたApple Music、国内発のLINE MusicやAWA、2019年にはYouTube Musicが新たに市場に参戦するなど、大手の競合がひしめく音楽ストリーミングサービス。

Spotifyの「勝機」はどこにあるのか。芦澤氏がまず挙げたのは「プレイリスト」の重要性だった。Spotifyは国内だけで300以上のプレイリストが存在するという。

「日本のユーザーは海外に比べ、(エディターが作った)プレイリストから楽曲を聞くユーザーの比率が高い。おそらくですが、すでにストリーミングサービスが参入して長い国のユーザーと比べ、日本の場合はまだ『何を聞いていいかわからない』フェーズ。そこにSpotifyが『音楽と出合える』機会を提供できれば」

また同氏はSpotifyについて「巨大プラットフォームが展開しているのではない、音楽好きが音楽好きのためにつくったサービス」であるという企業理念も強調する。

Spotifyの強みとして、無料と有料プランの併用ができる「フリーミアム制」があることも挙げられる。前述したように、全世界2億人のユーザーのうち、半数以上が無料ユーザーだ。

「ライフステージに応じて(有料と無料の)行き来ができる。履歴やプレイリストは残るため、途中で(無料に)変えてもらっても構わないし、使い分けてもらえれば良いと思う」

(文・写真、西山里緒)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中