日本時間3月26日の発表会に登壇したアップルのティム・クックCEO。
アップルは、日本時間3月26日にアメリカ・サンフランシスコで開催した発表会で映像、ゲーム、決済そして雑誌に関する新サービスを発表した。
例年、同社は何らかのハードウェアとサービスをまとめて発表していたが、今回の場合は日本時間3月18日から20日にかけてすでににiPadやiMac、AirPodsの新製品を発表。26日の発表会ではサービスに限ったもので、一切ハードウェアについては触れられなかった。
同社が発表したサービスの、わかる限りの特徴をチェックしてみよう。
映像ストリーミングに本腰を入れるアップル
さまざまなサービスを横断してコンテンツに触れられる新しいApple TVアプリ。
最も大きなアップデートとなったのは映像分野になる。アップルは「Apple TVアプリケーション」のリニューアルを発表。5月に100を超える国と地域でiPhone、iPad、Apple TV向けに展開され、秋にはMac向けにも公開される予定。また、スマートテレビやストリーミングデバイスにも対応。サムスンのテレビ向けには春、その他のソニー、VIZIO、LGエレクトロニクス、Fire TV、Rokuには今後対応する。
同アプリ上ではテレビ番組や映画、スポーツ、ニュースなどといったコンテンツが楽しめる。視聴可能なコンテンツはケーブルテレビや衛星放送のもののほか、iTunes Storeで購入したものが含まれ、登録はアプリ上から可能だが、料金は各事業者ごとに支払う。
また、Amazonプライム・ビデオやHuluといった150以上のストリーミングサービスのコンテンツもレコメンドされる。
独自コンテンツ「Apple TV+」。
加えて、Apple TVアプリ上でしか見られない限定コンテンツ「Apple TV+」も発表。料金などは明らかになっていないが、コンテンツはアップル独占のもの、広告なしのストリーミングサービス、100カ国以上で2019年秋から順次展開していくとしている。
発表会場にはスティーブン・スピルバーグ氏も登場した。
Apple TV+には、すでにオプラ・ウィンフリー、スティーヴン・スピルバーグ、ジェニファー・アニストンなどの世界的なアーティストが名を連ねている。
なお、「Apple TV」という名称は今まで同社のストリーミングデバイスを指していたが、ハードウェアの方は「Apple TV 4K」および「Apple TV HD」と記載されており、Apple TVはアプリ名や同社が提供する映像サービス全般を指す言葉になりそうだ。
常時2%キャッシュバックのクレカ「Apple Card」
Apple Payに加え、日々の決済体験をよりスマートにする「Apple Card」。
次に大きな発表となったのが決済分野だ。同社は以前より決済サービス「Apple Pay」を提供しているが、新たに年会費無料のクレジットカード「Apple Card」を発表した。
Apple Cardは完全モバイルファーストな決済手段で、基本的にはApple Payを通して非接触決済やネット決済で利用できる。ただし、非接触決済をサポートしていない店舗でも利用できるよう、チタン製のリアルカードも用意。カードの表面にはカード番号も有効期限もなく、裏面には署名欄やセキュリティーコードも存在しない仕様だ。
アップルのキャッシュバック施策「Daily Cash」。
目玉となるのがApple Card上のキャッシュバック施策「Daily Cash」だ。これは、Apple Pay経由での決済の場合は決済額の2%、Apple直営店などでの購入の場合は3%、前述のリアルカードでの購入では1%のキャッシュバックを受けられる。
キャッシュバックは独自のカードポイントではなく、既にアメリカで展開済みの同社の電子マネー「Apple Pay Cash」として付与される。Apple Pay Cashは日本未上陸だが、通常のApple Pay決済の源泉として使えるだけではなく、同ユーザー同士の送金にも利用できる。
なお、Apple Cardの発行はゴールドマン・サックス、国際ブランドはMastercardとなる。登場時期と地域は「2019年夏、アメリカ」としている。
ゲーム専用サブスクや雑誌コンテンツの対応も発表
既存の「News」アプリに雑誌コンテンツを追加し、「News+」にリニューアル。
そのほか、ゲーム専用のサブスクリプションサービス「Apple Arcade」と既存のニュースアプリに雑誌コンテンツも加わった「News+」も発表。
「Apple Arcade」は月額定額で100種類以上の限定的なゲームタイトルが遊び放題で提供される。
とくに、Apple ArcadeはiPhoneだけではなく、iPad、Mac、Apple TV上で利用できる共通のゲームサービスとなる見通しで、金額は不明なものの広告なし、アプリ内課金なし、オフラインでも利用可能であることが明らかになっている。
Apple Arcadeは150カ所以上の国と地域で展開される予定で、日本語ページも既に公開。「この秋、登場」とアナウンスされている。
アップルは簡単・安心・安全をサービスでも貫く
アップルのサービスの特徴を語るクックCEO。
サービス全体を通して、アップルが共通して強調していたのは「簡単に使えること」「細部まで気をつけること」「プライバシーを守ること」の3つだ。
例えば、Apple Cardでは決済で得られたデータから機械学習によりマップ上にある店舗情報とマッチングさせ、購入したお店のジャンルや店名を判定。ジャンル毎に利用状況をチェックするなど簡単な家計簿的な使い方が可能。一方で、ユーザーがどこで、どんなものを、どのぐらいの金額でといったような情報はアップルのサーバーには送られず、かつゴールドマン・サックスからサードパーティーへの情報共有もしないとしている。
Apple Cardには簡易家計簿的な機能が備わっているが、いずれもアップルのサーバーには保存されない。
今回発表になったサービスはいずれも詳細が明らかになっていなかったり、日本は対象になっていないものも多かったりするが、そんな「Apple らしい」サービスが今後どのように業界にインパクトを与えていくのか目が離せない。
(文・小林優多郎、写真・アップル)