話題のネスレ「睡眠カフェ」行ってみた。コーヒー飲んですぐ昼寝すると仕事がはかどる、らしい

動画・Business Insider Japan

ネスレが2019年に始めた「睡眠カフェ」って何?東京都品川区大井町の現地まで行き、体験してきた。

コーヒーを飲んで30分お昼寝?

睡眠カフェ

「即寝落ち」した筆者。

コーヒーを飲んだ後に、仮眠をとる。コーヒーを飲んだら眠れなくなるのでは?と思いがちだが、カフェインは摂取後約30分で血中濃度がピークに達するため、仮眠前に飲むと、ちょうど起きた頃にシャキッとできる……というのが、今回の睡眠カフェのコンセプトだ。

3月、訪れた「ネスカフェ睡眠カフェ」は駅から徒歩3分ほどの雑居ビルの一角にあった。

着いたのは午後6時過ぎ。スーツを着た会社帰りの人が会計をしており、話を聞いてみると、テレビの特集を見て来店したという。確かに、3月初めはSNSでの反響もよく目にした。

受付を済ませて入ってみると、中はかなり暗い。足元に置かれたほのかなライトを頼りに自分のブースまで歩いてゆく。

灰色のカーテンで覆われたブースで待っていると、コーヒーが厳かに運ばれてきた。しんと静まり返った中に響き渡るのは、小鳥のさえずり。コーヒーはアイスで、ゴクゴクと飲める温度だ。飲み終わったら、さあ就寝……。

レザー貼りのリクライニングチェアを倒し、そこから先は一瞬で「寝落ち」。30分の仮眠と1杯のコーヒーで値段は750円。“シンプルだが今までにない”コンセプトの店と言えそうだ。

ネスレが「お昼寝ニーズ」に応える理由

睡眠カフェ

ベッドサイドには、コーヒーが置かれていた。

そもそもなぜネスレは睡眠カフェを立ち上げることにしたのか?

まず、ネスレは、眠る前に飲めるカフェインレスコーヒーを推奨していた背景がある。

そこに、NHKスペシャルで2017年に取り上げられたことなどで大きな注目を集めた「睡眠負債(睡眠不足がじわじわと積み重なることで病気のリスクが高まること)」の問題が重なった。

これを解決するために何かできないか、と動き出したのがそもそもの始まりだったという。

2017年から2018年にかけて原宿と銀座で「睡眠カフェ」をオープン。期間限定だったにも関わらず、行列ができるほどの集客を達成した。人気を見込んで、期間を設けない出店を決めた。

オープンから3週間が経ったが、特に人気の時間帯はお昼以降から夕方だそう。仮眠時間をなかなか取れない、現代人の「お昼寝ニーズ」に応えているようだ。

大井町の存在感は薄いのか

大井町

睡眠カフェを調べていくと「大井町・アイデンティティクライシス問題」に直面した。

それにしても、なぜ大井町だったのか?

実は筆者は、大井町の近くに住み、中高時代は大井町線を使っていた「地元っ子」だ。しかし大井町は、普段から取材目的で頻繁に訪れるような駅ではない。ここに睡眠カフェ進出と聞いたときは、正直に言ってかなり驚いた。

「大井町といえば(実際は大井にはないが)大井競馬場のイメージが強い。かつてはロータリーから競馬場行きのバスが出ていたこともあり、赤鉛筆を耳に指しているおじさんたちが並んでいるイメージがあった。ただ今は『大井町』と言った時のキーワードがない。それを作っていかないと」

そう訴えるのは、NPOまちづくり大井事務局長の加藤雅之さんだ。

睡眠カフェ

NPOまちづくり大井の加藤雅之さん(右)。左は今回のプロジェクトを担当したネスレの高岡二郎さん。

大井町にはりんかい線・大井町線・京浜東北線の3路線が乗り入れ、駅としての規模も決して小さくはない。筆者も地元民として「東の大手町、西の大井町」などと言っては、東京屈指のターミナル駅だと信じていた。

しかし、そんな大井町がアイデンティティ・クライシスに陥っているというのだ。同じ品川区を見渡しても、北には住みたい街ランキングで上位常連の目黒や、近年スタートアップの集積地、「五反田バレー」として注目を集める五反田が存在感を強めている。

彼らに負けないような、次世代の大井町ブランドは……。考えたのが、睡眠・食・運動から成り立つ「ウェルネス」だったと加藤さんはいう。

「働き方改革の文脈もあり、パワーナップ(生産性を高めるための短い仮眠)よりスッキリ目覚められる『コーヒーナップ』に着目した。ネスレが考えていた世界と大井町が考えていた世界観とが、ちょうど同期した」

「睡眠テック」需要に乗れるか

睡眠カフェ

カフェには、1時間以上眠れる「睡眠コース」も。

ネスレの思惑と、大井町の再起を賭けた思惑が交差したところに誕生した「睡眠カフェ」。

ネスレとしては今後の拡大予定はまだ考えておらず「まずは大井町店を育てていきたい」とのことだった。

個人的に面白いと感じたのは、1時間以上の睡眠コースを選んだ人に提供される、快眠アイマスク「LUUNA(ルーナ)」だ。リアルタイムで脳波をモニタリング・分析し、終わった後に自分の「睡眠状態」がわかるという。

2019年には 、米企業で瞑想アプリの「Calm」が8800万ドル(約96億円)を調達するなど、テクノロジーによってより良い睡眠や心の安らぎを得るビジネスは、今後大きく伸長していくと予想されている。

盛り上がりを見せているスリープテック(睡眠テック)の文脈に睡眠カフェがのれば、大井町が「快眠の街」として注目される日が来るのかも、しれない。

(文・西山里緒、写真・今村拓馬)

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