分析:Apple Cardが決済ビジネスに与える影響とは?

この記事は、Business Insiderのプレミアム・リサーチ・サービス「Business Insider Intelligence」の調査レポートをもとにしています。詳しくは、こちら



アップルカード

Michael Short/Getty Images

アップルは3月25日(現地時間)のスペシャルイベントで、同社初となるクレジットカードサービス「Apple Card」を発表した。ここ数カ月の噂を受ける形での発表となった。

ユーザーはiPhoneを使って申し込むことができる。申込開始はこの夏の始めから。審査を通過すれば、Walletアプリ内のバーチャルカードが使えるようになる。バーチャルカードはApple Payが使えるところならどこでも使える。

Apple Cardの発行業務は提携したゴールドマンサックスが担当し、国際ブランドはMastercard。またバーチャルカードだけでなく、チタン製の物理カードも発行される。

Apple Cardが同社の決済ビジネスに与える影響

  • Apple Cardは、Apple Payのさらなる普及を後押しするだろう。Apple Payは2014年にアメリカでサービスを開始し、着実にユーザーを増やしている。ただし、ユーザー増加の大部分は、アメリカ国内でユーザー増加ではなく、サービス提供国の拡大によるもの。Apple Cardはさまざまな特徴を提供し、Apple Payの使い勝手を向上させ、アメリカ市場での勢いを加速させると考えられる。具体的にはバーチャルカードの方が物理カードよりもキャッシュバック率が高く、支払い方法や履歴などをアプリで確認することができる。
  • Apple Cardは、若い消費者の間でヒット商品になる可能性がある。支払い管理機能、キャッシュバック、柔軟な返済方法が選べることは、特に若いユーザーに人気となるだろう。また、消費者が不透明と感じているカード業界に透明性とシンプルさをもたらす可能性もある。
  • いくつかの課題はあるものの、Apple Cardは成功すると考えている。ただし、成功するためには、アップルは消費者に、Apple Cardは既存のサービスよりも良い選択肢であることを納得させる必要がある。具体的には、バーチャルカード、物理カードのいずれでも、既存のカードと同様もしくはそれを上回るメリットを提供し、提携したゴールドマン・サックスの評判リスクを超えなければならない。とはいえ、マーカスなどゴールドマン・サックス消費者向けのオンライン金融サービス・プラットフォームなどは評判も良い。だが我々はApple Cardはミレニアル世代、Z世代、そして世代を問わずデジタルに関心の高い人にとってユニークで魅力的な選択肢となると考えている。スタート当初から多くのユーザーを獲得するだろう。

Apple Cardの3つの特徴

  • 1つ目:バーチャルカードの利用を促すキャッシュバック。Apple Cardは、バーチャルカードを用いた場合、店舗、オンライン、アプリ内購入を問わず、一律2%のキャッシュバックが受けられる。さらにApple News+のようなアップルが提供する製品、サービスについては、キャッシュバック率が3%になる。だが物理カードを使った場合は1%しかキャッシュバックされない。これは、ユーザーにスマートフォンでの支払いを促す仕組みとなる。キャッシュバックはポイントではなく現金で、毎日、Walletアプリに払い込まれる。
  • 2つ目:使い勝手の良い管理ツール。Apple Cardは、まったく新しい管理サービスを提供する。「購入アイテムを自動的に分類、集計」し、ユーザーは、いつ、どこで買い物をしたかをWalletアプリおよびApple Mapアプリで確認できる。また、カテゴリー別に購入額をまとめて、購入履歴を表示することもできる。プライバシー保護の観点から、データ処理はアップルのサーバーではなく、個々の端末で行われる。つまりアップルはユーザーの購入履歴にはアクセスできない。またメッセージアプリを使って、ユーザーの問い合わせに即座に対応するサポートサービスも提供される。
  • 3つ目:コンシューマー・フレンドリーな料金・利率。Apple Cardは手数料、年会費は無料、延滞金もない。さらに海外決済や限度額超過の際の手数料も発生しない。具体的な数字を明らかにしなかったものの、アップルの目標は、競合サービスよりも低い金利を提供し、利息をリアルタイムで計算すること。返済方法もより柔軟になり、返済間隔を従来の月単位より短く設定することも可能。より短い期間で返済すれば、家計に与える負担も小さくなる。

決済業界の状況

Business Insider Intelligenceは、毎年発行している「The Payments Ecosystem Report」の最新版において、電子決済エコシステムの現状を解説するとともに、変化が与える短期的・長期的な影響について考察した。レポートは、複数の予測、ケーススタディ、さらには過去1年のサービス開発状況をもとに、デジタル化の流れが決済業界の主要セグメントに与える影響を解説し、変化の速さについても評価している。

レポートの要点は以下の通り

  • 業界の裏側を見ると、決済処理の仕組みや顔ぶれに大きな変化はない。だがオンラインショッピングが盛んになる中、サービスプロバイダーは決済にまつわる手間を可能な限りなくすことを強いられている。電子商取引は2023年に1兆ドルを超えると見られている。これは全米の小売業の5分の1近くに相当する。
  • 消費者が決済に使用するチャネルおよびフロントエンドの支払い方法は進化を続けている。新興国市場では店頭で使えるモバイル決済が大幅に浸透している。だが先進国での普及はそれほど進んでおらず、本格的な普及にようやく近づいている段階。また、VenmoやSquare CashのようなモバイルP2P決済サービスは普及が進み、デジタルP2Pの取扱高は2023年に5740億ドルに達すると見られている。
  • 決済業界での競争が激化するにつれ、各社は合弁事業を選択する傾向にシフトするだろう。地政学的な緊張状態に対応しつつ海外で成長するため、あるいはデジタル化が進む中、急速な規模拡大を実現するためだ。
  • 手数料、利用停止措置、乗り換え施策、さらには規制などが消費者の選択に影響を与える。こうした要素に後押しされて消費者は、既存のクレジットカードの決済システムを使わない新しい決済方法に移行しており、決済サービスプロバイダーがキャッシュバックやマーケティングキャンペーンに使っていた原資が制限されることになる。
  • トークナイゼーション(Tokenization:カード番号などの機密データを暗号化する技術)は頻発するデータ漏えいなどを防止する主要な方法として広く採用され続けるだろう。

[原文:ANALYSIS: How Apple Card is poised to accelerate Apple's payments business

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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