「令和」フィーチャーに見るすごい“発想力”、ゴールデンボンバーから大企業広告まで

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新元号「令和」を発表する菅義偉官房長官。

内閣広報室

2019年5月1日に改元を迎える、平成に代わる新元号「令和」。

4月1日11時40分ごろ、生中継で菅義偉官房長官が発表したあと、SNSでは瞬く間に新元号の話題がバイラル的に広がった。発表翌日になってもその勢いは落ち着きそうにない。

Twitter Japanによると、11時30分から13時30分までの2時間で、「#令和」に関するツイートは述べ450万ツイートあったという。

hashtags

Twitter Japan

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Twitter Japan

TwitterやFacebookといったSNSを眺めている限り、「令和」に賛否はあるものの、おおむね好意的に受け止めている人が多い印象だ。

口コミ分析ツールを展開するユーザーローカルの「Social Insight」による分析でも、「好意的」であることがデータに表れている。新元号発表後、数時間経過以降、深夜0時までの「令和」を含むツ250万ツイート(4月1日22時時点)を対象にポジネガ分析を行ったところ、「ポジティブ」と判定されたツイートは約13%。対して「ネガティブ」判定のツイートは約3%しかなかった。

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ユーザーローカル「Social Insight」

「令和」フィーチャーに見る、SNS時代の音楽ビジネスの稼ぎ方

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Apple Musicで新元号発表の4月1日に「令和」が含まれる楽曲をリリースしたのは2つのバンドのみ。

1989年の「平成」と2019年の「令和」新元号発表時の大きな違いは、インターネットとソーシャルメディアの有無だ。

おそらく、多くの企業やマーケター、広告担当者はこの改元の祝賀ムードになんとか美しく、かつソーシャル波及効果の高い「仕掛け」を狙ったはずだ。

実際、4月1日、新元号合わせ「企画」はいくつも登場した。その中でもフットワーク軽く「令和」フィーチャーをして見せたのは2組のミュージシャンだった。

最も驚かされたのは、ビジュアル系バンド・ゴールデンボンバーの新元号ソング「令和」だ。

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ユークリッド / Zany Zap

このミュージックビデオがすごい。MVを再生すると、冒頭には「令和」というCGタイトルがしっかりと入っている。さらに進めると、「平成」発表時の小渕恵三官房長官(故人)をもじった例のポーズで「令和」発表をパロディーにしたシーン。

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ユークリッド / Zany Zap

さらに、サビの歌詞では「令和」を連呼するほか、ミュージックビデオのエンディングでは、タイムマシンにのったゴールデンボンバーのメンバーらが「令和」の未来へと消えていくという演出まで入っている。

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ユークリッド / Zany Zap

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ユークリッド / Zany Zap

もちろん、事前に大半を作っておいた上での差し替えとはいえ、新元号発表から間髪入れずにこのレベルでミュージックビデオを作り込んで来るのは、プロ根性を感じる。

一方、同じく「令和」フィーチャーを仕掛けてきたもう1組のグループが、YouTuberとしてもしられるレペゼン地球だ。

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レペゼン地球

ゴールデンボンバーと同様、ミュージックビデオが用意され、タイトル、歌詞、歌ともに「令和」が盛り込んである。

ゴールデンボンバーの「令和」、レペゼン地球の「令和」はともに、4月2日午前3時時点で再生回数100万回を突破している。

レペゼン地球

2つのバンドがここまで「令和」「改元当日」にこだわったリリースをしたのは、音楽ビジネスの収益構造において、サブスクリプションとYouTubeなど動画の再生数による収入が無視できない規模になってきていることと無関係ではないはずだ。

さらに、4月2日時点では、複数のアーティストが「令和」フィーチャーの楽曲を発表している。

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iTunes Storeで「令和」フィーチャーの楽曲を発表しているミュージシャンたち。

4月1日朝刊の新聞広告で「新元号」

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4月1日は、多くの企業にとって「新しい会計年度が始まる時期」で、学生たちの「新生活が始まる時期」でもある。その時期と新元号発表の祝賀ムードに、「キレイに合わせよう」とした企業もいくつかあった。

4月1日の朝刊で「仕掛けた」のは、キンチョールでおなじみの大日本除虫菊。

日本経済新聞のセンター見開き全面を使った広告は、キンチョールのCMでおなじみ、「カマキリ先生」こと俳優の香川照之さんを起用し、「平成」を発表した小渕官房長官(当時)をパロディーにしたものだった。

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香川照之が「キンチョール」と書いた額縁を持っている。どこにも新元号を表現するものはないが、マイクの位置、掲げた額縁の向きはそのまま、「社会の教科書に載っているあのポーズ」にしか見えない。

とはいうものの、4月1日の朝刊は新元号「発表直前」ということもあり、クリエイティブの難易度は相当高かったように見える。実際、朝日、読売、毎日、産経、日経の大手5紙すべての新聞広告のなかで、朝刊で「新元号に絡むネタ」を仕掛けたのは大日本除虫菊ただ1社だけだった。

「号外」がメルカリで爆売れ、広告狙った2社

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メルカリには号外配布後に大量の出品がはじまり、あっという間に「SOLD」状態になっていった。安いもので300円程度、高いものでは1000円以上の価格で売れているものもあった。

一方、4月1日にあらかじめ予定されていた新元号発表を狙い、新聞社が必ず刷る「号外」を狙った企業もある。新元号発表のタイミングでは、ある意味で新聞本紙より「注目度」が高い号外は、ソーシャル拡散の要素としても十分な素質がある。

想定外だったのは、それらが「商品」として2次流通で大量に売られたことかもしれない。号外の配布後、フリマアプリのメルカリにはあっという間に、大手紙から地方紙まで、大量の「号外販売」の出品がずらりと並んだ。

「号外狙い」をうまく成功させた企業は、見たところ2社だ。

1社はヤフージャパン。朝日新聞など複数の新聞で、「令和」を告げる号外記事の真下に「続きはWEBで。」とする号外広告を掲載した。

もう1社はコカ・コーラ ボトラーズジャパン。読売新聞で、同じく1面の下に「笑顔であふれる時代になりますように。」というキャッチコピーで、乾杯を象徴するような2本の瓶のコカ・コーラのクリエイティブを掲載した。

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この出品は、780円で販売済みになっていた。

期限1カ月、「新元号対応」に向けIT各社が対応急ぐ

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新元号発表によって、“時間制限1カ月”待ったなしの戦いもスタートしている。各社のITシステムの「新元号対応」だ。

いまから19年前、1999年から2000年への変わり目には、ITシステムのトラブルを想定したいわゆる「2000年問題」があった。同様の混乱が起こらないよう、IT大手は相当な時間をかけて準備をしてきた。

マイクロソフトは1年近くをかけて周知をはかり、経済産業省とも協力して各地でパートナー企業などに向けたセミナーも行ってきたという。

すでに新元号対応の情報については、「新元号への対応について」という公式ページを用意。法人向けの各種対応指針を掲載中のほか、新元号への切り替えがゴールデンウィークの10連休中に行われることから、ゴールデンウィーク期間中の対応窓口も用意するなど、万全の体制で対応にあたる。

「基幹システムに障害を起こさない」という絶対に負けられない戦いにとって、1カ月での検証と、本番システムのアップデートは大急ぎの対応作業になるとされる。

5月1日の改元に向けた祝賀ムードと、IT企業のピリピリとした緊張感が混在した濃密な1カ月は、いま始まったばかりだ。

(文・写真、伊藤有)

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