J.D. パワージャパン 常務執行役員 Global Business Intelligence部門長の梅澤希一氏。新たに国内で発足する新体制のグローバル・ビジネス・インテリジェンス部門の責任者に就任する。
顧客満足度調査を専門とする国際的な民間調査機関の日本法人J.D. パワー ジャパンは4月4日、日本に展開する新事業のメディアラウンドテーブルを開催。新体制として、グローバル・ビジネス・インテリジェンス部門(GBI部門)を立ち上げる。
事業責任者には、UBS証券やゴールドマンサックス証券などで勤務した経歴を持つ梅澤希一氏が就任。梅澤氏は日本法人の常務執行役員も務める。
同社には、従来から自動車業界向けにはグローバル・オートモーティブ部門があったが、今回のGBI部門の立ち上げは、これと並ぶ独立した事業部門ということになる。
ラウンドテーブルにあわせ、米国本社でおなじくGBI部門のジェネラルマネージャーでシニアバイスプレジデントのキース・ウェブスター氏が来日。日本の展開について語った。
働き方改革で「顧客満足度調査」の使い方が変わった
J.D. パワーによると、GBI部門はアメリカでは先行して展開しており、今回の日本法人の取り組みは、組織のアップデートとともに、日本版の発足という形になる。
そもそもGBI部門が発足した背景には、「顧客満足度調査」のレポートが、競合調査などを通じた商品価値や企業価値を高めるだけではなく、多様な使われ方をし始めていることがあるという。その用途の1つが、「働き方改革を背景とする業務の“優先順位づけ”」への活用だ。
従来の日本企業における調査データの使い方は、課題の洗い出しをして、その改善を全方位的に徹底してやろうというのが「昭和・平成時代のやり方」(梅澤氏)だった。ところが、昨今の雇用改革や残業規制の社会的潮流のなかで、昭和・平成的なやり方は、通用しなくなってきた。
「日本のマネージメントがいま初めて、(改善項目に)“優先度をつけなければ対応できない”となってきた」(梅澤氏)ことが、調査を活用していく大きなトリガーになっていると言う。
同社は、「とにかく完璧な商品」をつくりあげるのではなく、競合分析をして業界内での相対比較で強みの実態をみていく活用法は、今後ますます増えると見る。
海外では「経営者報酬の説明責任」に使うケースも
もう1つ、海外でのユニークな使い方が、「経営者報酬の説明責任」にレポートを使うという用途だ。
この分野は、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が特別背任容疑などで逮捕された事件で国内でも注目が集まっている。例えばアメリカでは、大企業の役員報酬は日本の10倍あるとよく言われる。それだけの報酬額の決定を客観的に行なっていることの説明材料として、公開情報であるJ.D. パワーの調査スコアを使うケースがある。
来日した米J.D. Power SVP&General Managerのキース・ウェブスター氏。
ウェブスター氏によると、経営者報酬のベンチマーク(評価指標として調査のスコアを参考にする)に採用している企業は、金融大手のJ.P.モルガン。
「年次レポートを見ると、J.D. パワーのレポートがKPIとして使われている(のがわかる)。ほかにも多くの上場企業の年次レポートをみてもらうと、多くの業界が、J.D. パワーの評価を(インプットの一部として)参照している」(ウェブスター氏)。
GBI部門が担当する国内の調査カテゴリーは、金融、クレジットカード、保険、テクノロジー、メディア、通信、公益事業、トラベル、ホスピタリティ、医療といったもの。
同社としては、従来からの自動車業界、そして金融サービスと保険という2大分野にフォーカスして、新体制のGBI部門を事業の2つめの柱としていきたい考えだ。
(文、写真・伊藤有)