【セブン社長交代】報道で知るオーナーの苦境…本部と現場の乖離はなぜ生まれた。24時間営業の行く末は

セブンイレブン・ジャパンの24時間営業をめぐる加盟店との問題が社長交代にまで及んだ。

4月8日付で古屋一樹社長(69)が取締役会長に退き、永松文彦氏副社長(62)が社長に就く。経営体制の刷新で、24時間営業問題の解決策を見いだせるのだろうか。

報道で初めて知るオーナーの申し入れ

セブンイレブン

撮影・今村拓馬

突然の社長交代は、24時間営業問題に対応できなかった古屋社長がその責任をとった格好だ。

しかし、社長交代の背景について、井阪隆一セブン&アイ・ホールディングス社長はこう説明した。

「現場の情報が上がりにくくなっていた。24時間営業の問題というよりも、コミュニケーションのパイプに目詰まりが起きていた」

例えば、福井県の加盟店オーナーが2018年2月豪雪に見舞われたときに休業を申し入れたが、地区本部がそれを認めず営業継続を求めたとする一件。井阪氏はこうした対応をしたことを「報道で初めて知った」と言う。結果として、本部は加盟店オーナーに直接会って「意思疎通に問題があった」と謝罪したが、現場の情報が社内ルートを通じて上がってこなかったことを重くみた。

セブンイレブンには、3000人近いオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)と呼ばれる店舗経営相談員がいる。現場で何か問題が発生すれば、OFCによってディストリクト・オフィス(地区事務所)に報告され、その上位組織であるゾーン、オペレーション部、オペレーション本部、営業本部という階層を通じて経営トップに届く流れになっている。

井阪氏はコミュニケーションに目詰まりが起きた要因を、「2万店という巨大チェーンを社長1人ですべて情報を吸い上げて対応する負荷は大きかった。組織の階層が増え、情報伝達の問題もあった」と話す。

週1回の会議が月2回に

セブンHD井阪社長

井阪社長は4日の記者会見で「柔軟なあり方を模索したい」と強調した。

REUTERS/Issei Kato

4月4日の社長交代の記者会見に出席しなかった古屋氏は、店舗運営や店舗開発の現場経験が長く、加盟店からの信頼もあった。それでも結果として対応の不備があったことは否めない。加盟店に対する本部の対応について、セブンイレブン元社員も「以前のセブンなら考えられない。対応のまずさが目立つ」と話す。

社長交代は、古屋氏の下では情報伝達・共有の問題、そして24時間営業問題の解決が図れないと会社が判断したということになる。

セブンイレブンにはFC会議という社内の情報共有の場がある。この場では全国から東京の本部に集まったOFCに、経営トップが方針や施策を伝えている。直接的なコミュニケーションを重視するセブンイレブンならではの会議である。

しかし、かつて週1回開かれていたこの会議も現在は2週間に1回になり、そのうえOFC全員が集まることはなく、地方のOFCなどはテレビ会議システムを通じて参加する形になっている。

「コミュニケーションの密度が希薄になってきている」

新社長に就く永松氏は、強さの源泉とも言われてきたFC会議の変質をこう指摘する。以前なら現場で起こっているさまざまな問題をFC会議の場で直接相談できていたが、頻度が減り、テレビ会議システムが使われていることで、それができにくくなっているともいう。

こうした問題認識があったにもかかわらず、4日の記者会見ではFC会議の改革、あるいは本部内の情報伝達・共有のあり方についての対策は示されなかった。

「まずは経営陣が加盟店に出向いてひざ詰めで話を聞く。経営課題の共有と解決を話し合うことからコミュニケーションの問題を改善していきたい」(永松氏)と説明するにとどまった。

人件費下がるが閉店作業も発生

セブンイレブン

撮影・今村拓馬

一方、24時間営業問題についても、立地や個店の状況に応じて営業時間も柔軟に対応していくという、これまでの対応策が示されただけである。

セブンイレブンによると、短縮営業を希望する加盟店は96店舗、全店の0.5%にとどまる。現在、実施中の短縮営業の実証実験結果をこれらの加盟店オーナーと共有し、営業時間を短縮するかどうか判断材料にするという。

実験店舗の結果でも表れているというが、営業時間を短縮すれば当然売り上げは下がる。短縮時間分の人件費も削減できるが、24時間営業では不要な閉店・開店の作業が発生する。こうした点を考慮し、加盟店の収益がマイナスにならないシミュレーションを描けるか検討するという。

そして2019年度、新規出店を大きく抑制する。計画する出店数は850店で、2018年度より500店超引き下げると発表した。ここ数年、1000店を超える出店数で店舗網を拡大してきたが、出店基準を厳格化し、精度を向上させるという。設備投資についても、これまで総投資額の6割を新店投資に振り向けてきたが、逆に既存店投資に6割超をあてるという。

これまでの拡大路線をいったん見直し、「意思のある踊り場をつくる」(井阪氏)のが狙いだ。

本部と加盟店の間には常に何かしらの問題が発生するものだが、24時間営業問題は異例の社長交代にまで発展した。セブンイレブンは店舗数が2万店を超え、チェーン運営にかつてない軋みが表れ始めている。出店を抑制し良質な店舗を増やしていくことは間接的には問題の解決につながるだろうが、目の前の問題を解決する施策とはならない。

本部側の意思疎通の問題が根底にあるとすれば、新社長となる永松氏はより踏み込んだ具体策を打ち出す必要があるだろう。


神谷武:フリーランスライター。流通専門誌編集者を経て、2019年独立。

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