75億円調達のロボットベンチャーMUJIN、「同時にMBO」の異例っぷり

MUJIN・滝野一征氏

MUJIN CEOの滝野一征氏(34)。インタビューは東京・墨田区にあるMUJIN社のオフィスで行われた。

工場で使われる産業用ロボットに“知能”を与えるベンチャー「MUJIN」が、75億円の資金調達を実施し、ビジネス展開にアクセルを踏んでいく。

MUJINのビジネスの中核を占めるのが、ロボットに教えることなく自律制御させる「モーション・プランニング(動作計画)AI」という技術だ。

バラ積みのピッキングや箱詰めなどは、複雑な動作が必要となるため、これまで自動化は困難とされてきた。

MUJINが開発するコントローラは、前述のモーション・プランニングAIによって、いちいち人間が教えることなくロボットに自分で必要な動作を「考えさせる」。工場や物流センターでの複雑な作業も自動化することができ、生産性を飛躍的に高めるとして注目を集めてきた。

MUJINは2011年創業。2012年には東京大学エッジキャピタル(UTEC)から7500万円、2014年にはベンチャーキャピタル(VC)のジャフコから数億円の資金調達を実施した。2017年には中国eコマース大手のJD.comに数十台のロボットを納入し、大型物流倉庫の完全自動化に貢献した。

MBOかつ75億円の借り入れという“異例”の施策

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MUJINは、マネジメント・バイアウト(MBO)を実施した上で三井住友銀行から75億円の借り入れ(デット・ファイナンス)を実施した。

提供:MUJIN

今が勝負のしどきだ

MUJIN CEOの滝野一征氏はBusiness Insider Japanのインタビューでそう口にした。

今回の資金調達で目を引くのは、調達方法の特異性だ。

75億円はすべて三井住友銀行からの借り入れ(デット・ファイナンス)での調達。同時に、MUJINの初期投資家で、3割以上の株主比率を占めるUTEC(前出)からのマネジメント・バイアウト(MBO、経営陣による企業買収)を実施している。

これにより、高い経営の自由度を維持したまま、75億円の事業資金を手にすることが可能になったという。

なぜこの施策を取ったのか。ベンチャーの主な資金調達手段としては、ほかに新株発行による資金調達(エクイティ・ファイナンス)があるが、滝野氏は「エクイティ・ファイナンスで(VCから経営干渉を受けた結果)苦しむスタートアップの姿を多く目にしてきた」という。

「経営権の維持はとても重要です。特に製造業では、技術を育てたり実績を出したりするのには時間がかかる。目先の利益だけ見てしまうと、この研究開発はペイしないからやめようとか、今やっているこの案件は利益が出ないからやめようとか、おかしなことになっていく」(滝野氏)

一方で「(上場企業と比べ)利益が出づらい未上場ベンチャーの場合、借り入れで大規模な資金調達はしづらい現状がある」と語るのは、ニッセイ基礎研究所 総合政策研究部 主任研究員の中村洋介氏だ。

「成長している企業であればあるほど、シリーズが上がるごとに企業価値もどんどん上がるため、一度発行した株を買い戻すのも難しくなってくる」(中村氏)ことから、MBOを実施しかつ借り入れでの資金調達となると、さらにその“異例さ”は増す。

にもかかわらずMUJINがこの施策を実現できた理由として、中村氏は「MUJINのビジネスモデルや事業進捗がきちんと評価されているという点と、エクイティに限らずベンチャーに資金が集まりやすい外的環境が整ってきている点」の二点をあげる。

「物流の自動化」で世界へ

高い持ち株比率と、大型の資金調達 ── この両者が実現できたのは、数年間「実績が上がるまでなんとか我慢しながら」信用力を高めてきた結果だ、と滝野氏はいう。

今まで「検査や、金属のバラ積みピッキングや、レーザー加工など」(滝野氏)さまざまな事業への応用を検討し、試行錯誤を繰り返してきたMUJIN。

その中で最大の強みを見出したのが「多品種のモノの扱いを必要とするため、現時点でMUJINの技術なしには自動化が実現しない」(MUJIN広報)物流ピッキングの分野だった。

この強みを武器に、これから1〜2年ほどで、国内で「10数件はある」大型の実地案件の実現、さらに今回の調達した資金で、中国・ヨーロッパ・アメリカにも進出し、MUJINは「産業用ロボットの知能化」を進めていく。

(文・写真、西山里緒)

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