中国シェア自転車ofoが破産リスト掲載。モバイクは運営維持へ値上げ

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中国シェア自転車の「利益なきつぶし合い」に終止符は打たれるのか。

Zapp2Photo/shutterstock.com

中国の企業破産案件情報サイトに4月2日、シェア自転車ofoの運営会社である北京拝洛克科技の名前が「被申請者」として掲載されたと、中国メディアが一斉に報道しちょっとした騒ぎになった。北京裁判所にofoの破産を申請したのは聶艶(Nie Yen)氏。何者なのか。

ofoは4月3日、「申請したのはofoのユーザーだ。運営は通常通り行われている。デポジットの返還が一部滞っていることは大変申し訳なく、きちんと対応することを約束する。春が来た。当社は今後もサービスを続ける」とコメントした。

中国の破産法は債権者による破産申し立てを認めており、自転車利用にあたってデポジットを払っているであろう聶艶氏は債権者にあたる。当然、申し立てが破産に直結するわけではないが、ofoの経営危機が表面化した2018年以降、同社はユーザーや取引先からデポジット返還、車両の代金納入などを求める訴訟をたびたび起こされており、同社の“春”はまだ遠い。

モバイクは海外から完全撤退へ

2016年から2017年にかけて中国発イノベーションともてはやされたシェア自転車。業界首位争いを繰り広げていたofoとモバイク(摩拝単車)は、海外進出にも積極的だった。両社とも2016年末、世界200カ国展開を宣言。シンガポール、イギリスと競い合うように布陣を広げた。モバイクは2017年、福岡市に日本法人を設立し、同年8月には札幌市でサービスを開始。ofoも2018年3月に和歌山に進出した。

ところが2018年になると、“利益なき急拡大”のつけが一気に表面化する。

シェア自転車は莫大なコストがかかるビジネスだ。大量の車体を投下し、乗り捨てた自転車を回収・整理する人件費もばかにならない。ライバルとの競争を勝ち抜くために広告費は膨らみ、利用料も上げられない。

単独での生き残りを諦めたモバイクは2018年春、テンセント(騰訊)系のO2O大手、美団点評(Meituan Dianping)の傘下に入った。資本力に劣る企業が破たんし、残った企業も次々と大手に救済される中、流れに乗り遅れたofoは孤立し、経営危機に陥った。

事業整理の過程で、海外拠点も次々に閉じられた。ofoは2018年10月末で日本から撤退し、鳴り物入りで日本に進出したモバイクのサービスは途中で止まった。公式ツイッターは1年近く更新されていない。

今年3月には、モバイクが海外から完全撤退する方針を表明。美団点評の2018年1〜12月決算によると、モバイクを買収した2018年4月以降の同社の売上高は15億700万元(約250億円)だったのに対し、損失はその3倍近い45億5000万元(約750億円)に達している。

値上げに理解示すユーザーも

街角の自転車

シェア自転車は中国の都市ですっかり見慣れた存在になった。

Min Jing/shutterstock

ブームから3年、利益モデルはいまだ確立されていないとは言え、シェア自転車は中国市民の足として、完全に定着した。ofoが中国全土で運用している自転車は1000万台を超え、台数ではなお首位と言われている。アリババ系のハローバイク(哈啰出行)の報告書によると、同社のユーザーの1週間の平均利用回数は5回を超える。ofoを除く有力企業が、体力のあるメガベンチャーの後ろ盾を得た今、健全な運営への模索も始まっている。

シェア自転車有力企業の一社でDiDi Chuxing(滴滴出行)グループ入りしたBluegogo(小藍単車)は3月21日、北京のユーザーを対象に値上げを発表した。従来30分で1元だった利用料を15分1元とし、その後は15分ごとに0.5元とした。DiDiは「運営を維持し、商品サービスの体験を向上させるため」とコメントした。

モバイクも4月8日から、北京のユーザーを対象に利用料を値上げし、Bluegogoと同水準にした。値上げの理由についても、「健全な運営を保ち、ユーザー満足度を確保するため」と同様のコメントをした。

ネット上では2社の値上げについてユーザーが次々に意見を投稿。半分以上が「値上げ幅が大きすぎる」と不満を示す一方で、理解を示す声も少なくなかった。あるユーザーは、「会社が駅まで遠く、毎日必ず利用する。自分の利用時間は1回10分のため、値上げしても料金は変わらない。15分までなら従来と同じ価格だし、自分みたいな人には影響がないんじゃないか」とコメントした。

倒産したシェア自転車企業がユーザーから預かったデポジットを使いこんでいたり、ofoにデポジット返還を求めるユーザーが殺到したことなどを受け、交通運輸部も法整備に乗り出した。最近公表した「交通運輸新業態ユーザー資金管理弁法」の意見募集稿では、シェア自転車を交通運輸の新業態と明確に位置づけ、デポジットの原則禁止や、徴収した場合の他の用途への流用を禁止している。

ofoの経営は予断を許さない状況が続くが、シェア自転車業界そのものは野放図に拡張した2017年、社会や経営に関するさまざまな問題が噴出した2018年を経て、通常運転の軌道に向かいつつある。

(文・浦上早苗)  

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