写真左からSlack本社でエンタープライズプロダクト部門責任者を務めるイラン・フランク氏、CEO兼共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏、Slack Japanでカントリーマネージャーを務める佐々木聖治氏。
撮影:小林優多郎
アメリカのビジネスチャットツール大手のSlackは、日本オフィスの移転を発表。新オフィスの住所は「東京都千代田区大手町1-1-1」で、2017年2月に竣工した大手町パークビルディングの17階に入居した。
新オフィスのオープンにあたり同社は4月9日、報道関係者向けにオフィスの概要を紹介した。イベントには、日本法人のカントリーマネジャーを務める佐々木聖治氏だけではなく、アメリカの本社からCEOのスチュワート・バターフィールド氏、エンタープライズプロダクト部門責任者のイラン・フランク氏が来日した。
自らをビジネスコラボレーションハブと称するSlackだが、その仕事の仕方や職場環境も同社のフィロソフィーに沿ったものとなっている。公開された日本オフィスを写真で紹介しよう。
エントランスから会場へ入ると“掛け軸”をイメージした空間が広がっている
出典:Slack
イベント会場は開放的で、社員やSlackを訪れたゲストが快適に仕事をできるスペースになっている
出典:Slack
西側の窓には“縁側”を意識したスペースを用意。会議室もカフェスペースもここからアクセスできる
撮影:小林優多郎
バターフィールド氏も佐々木氏も“縁側”で落ち着いて考え事をするのがお気に入りだという
撮影:小林優多郎
各会議室などのエリアはSlackの“チャンネル”。それにつながる縁側は“Slack自身”を表している
撮影:小林優多郎
会議室には“Kotobuki(寿)”など、短いポジティブな名前が付けられている
出典:Slack
カフェエリアもシンプル。食器などは基本的にリユースできるものを揃えている
撮影:小林優多郎
お菓子やコーヒーの準備だけでなく、月曜は朝食、水曜はランチが振る舞われる
撮影:小林優多郎
今回主に紹介されたのは、パートナー企業などゲストとのコラボレーションのためのスペースだったが、それ以外も含めてオフィス全体の床面積は約1400平方メートル。最大80名ほど従業員を収容可能としている。執務室の近くには乳幼児や保護者のための“マザーズルーム”、社員向けの“マッサージルーム”などを備える。
創業時からの理念をサービスだけでなく、オフィスにも体現
Slackは物理的にも社内方針的にも、そして製品自体もメリハリを大事にしている(写真は会議室から見た縁側)。
出典:Slack
Slackの日本オフィスは世界で10カ所目の設立となるとのことだが、どの国のオフィスでも従業員1人1人に、必ず専用のデスクスペースが用意されているのが特徴だ。
「あのSlackが固定デスク?」と思う人も多いかもしれない。日本でSlackの導入が進んでいる背景として、自由なワークスタイル、働き方改革が推進されているという点がある。その中には仕事場所を固定化せず、社内や社外の人とさまざまなコミュニケーションをはかることで成長を加速させる“フリーアドレス”の概念があり、Slackのこの方針は真逆に感じられなくもない。
Slack TechnologiesのバターフィールドCEO。
撮影:小林優多郎
しかし、写真で紹介した通り、Slackオフィスには豊富なコラボレーションスペースが存在する。要はコラボするときはする、そうでない時は集中して仕事に取り組む。バターフィールド氏はSlackを創業した時から「Work hard and go home (しっかり働き、家に帰ろう)」を社内で徹底しているからだ。
その証拠に、新しい日本オフィスも、例えば卓球台のような仕事にまったく関係のないオブジェクトは存在しない。朝食や昼食は定期的に提供するが、夕食を提供しないのもこのためだ。
アウェーである大手町でさらなる成長を目指す
Slack Japanの佐々木聖治氏。
撮影:小林優多郎
Slackは取材日の4月9日、決算発表前のIR活動自粛期間(Quiet Period)にあったため、現状の業績や将来に関わる具体的な計画などは語られなかった。
ただ、佐々木氏は日本でのSlackの成長具合について「2018年は急速に加速して、浸透が進んだ」と述べている。そして、2019年も同様もしくはそれ以上の日本市場での成長を狙っている。その意気込みは新オフィスの場所にも表れている。
佐々木氏は、渋谷や六本木のように大小さまざまなスタートアップやIT企業のある場所を選ばず、大手町という大企業や金融・新聞社などといったレガシーな企業の集まる場所をあえて拠点とする理由を「そのような企業にもSlackを知ってもらえるような機会になる」と話している。
(文・小林優多郎)