人類初の快挙! でも「ぼやっとしてる」と感じた人に、ブラックホールがよく分かる動画とイラスト

分析


世界初のブラックホール画像。

世界初のブラックホール画像。

Event Horizon Telescope Collaboration

その存在が理論化されてから約235年、科学者たちはついにブラックホールの撮影に成功した。画像にはメシエ87(M87)と呼ばれる「巨大銀河」の中心にある超巨大ブラックホールの姿が捉えられている。

ブラックホールの重量は太陽の約65億倍、その重力のため光も逃れることはできない事象の地平面(イベントホライズン:Event horizon)の影の幅は約250億マイル(約400億キロメートル)におよぶ。

世界初の画像は、地球サイズの“仮想”電波望遠鏡「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope:EHT」によって撮影された。

予想されたことではあるが、画像は少し小さく、分かりにくかった。画像が公表される前に、ジョージア州立大学の天文物理学者ミスティ・ベンツは、なにか「塊のようなもの」が写ると期待しているとBusiness Insiderに語った。

「覚えておいて欲しいことは、我々は太陽系サイズの物体の画像について議論しているということ。それを5400光年離れた場所から見ている」とベンツは語った。

世界初のブラックホール画像をより良く理解するために、天文物理学者とコンピューター科学者は10日の発表の何年も前からシミュレーション画像を作成していた。それらを使って、ブラックホールをより良く理解してみよう。

仮想の電波望遠鏡「イベント・ホライズン・テレスコープ」は世界中の電波望遠鏡をつないで作られた。世界の8つの電波望遠鏡をつなぐことで、地球サイズの「仮想」の望遠鏡として機能することが可能になった。

イベント・ホライズン・テレスコープに参加した世界の電波望遠鏡。

イベント・ホライズン・テレスコープに参加した世界の電波望遠鏡。

ESO/O. Furtak


ブラックホールの撮影は、たとえそれが巨大サイズでも、困難だった。ナイメーヘン・ラドバウド大学の天文物理学者ヘイノ・ファルケは、ブリュッセルに置かれたマスタードの粒をワシントンD.C.から見るようなものと語った。

ブラックホールの撮影は、ブリュッセルに置かれたマスタードの粒をワシントンD.C.から見るようなものと語った。

マスタードの粒はかなり小さい。

Shutterstock


天文物理学者とコンピューター科学者は、EHTによる発見を見越して、巨大サイズのブラックホールの高度なシミュレーションモデルを作成した。

3種類のシミュレーション画像。

3種類のシミュレーション画像。

D. Psaltis, A. Broderick/ESO


シミュレーションのもとになったのは、1900年代初頭にアインシュタインが築いた相対性理論。

シミュレーションのもとになったのは、1900年代初頭にアインシュタインが築いた相対性理論。

アインシュタイン。

AP


アインシュタインの相対性理論以来、科学者たちはM87の中心にあるブラックホールを含め、ブラックホールの特徴を解明してきた。

回転するブラックホールの予想図。周りには降着円盤(Accretion disc)が見られる。

回転するブラックホールの予想図。周りには降着円盤(Accretion disc)が見られる。

ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser; Business Insider

超巨大ブラックホールには6つの特徴がある。

  1. 特異点(シンギュラリティ:Singularity):無限の密度を持つブラックホールの「中心」。恒星の崩壊もしくは衝突によってできる。
  2. 事象の地平面(イベントホライズン:Event horizon):ブラックホールの巨大な重力から光が逃れられなくなるポイント。
  3. 降着円盤(Accretion disk):寿命の尽きた恒星、惑星など、ブラックホールに近づいた物体からできた超高温のガスやチリ。イベントホライズを囲んでいる。観測可能な「影」となる。
  4. 最終安定軌道(Innermost stable circular orbit:ISCO):物質がブラックホールに落ちずに存在できるポイント。
  5. 宇宙ジェットRelativistic jet):ブラックホールから光に近い速度で吹き出す粒子のジェット。天文学者がブラックホールを見つける目印になる(絵には描かれていない)。
  6. 光球(Photon sphere):ジェットやブラックホールに捉えられた物質から放出された光がイベントホライズを超えたところで、完全に円形の軌道に閉じ込められた領域。

降着円盤の中の「ホットスポット」の動きを表したアニメーション。ブラックホールが宇宙空間を歪める様子を示している。

出典 : Avery Broderick and Avi Loeb via EHT

降着円盤を平面から見たアニメーション。密度が薄い場所は青、濃い場所は赤。

出典 : Hotaka Shiokawa via EHT

イベント・ホライズン・テレスコープは波長約1.3ミリの電波を使ってブラックホールを観測した。これは、10ミリから0.001ミリの電波で観測した時のブラックホールの姿(人間の目は、0.00075ミリから0.0004ミリの光を捉えることができる)。

出典 : Chi-Kwan Chan via EHT

ブラックホールでは、自身の回転とその周囲をまわる超高温の円盤状物質によって、磁場が絡み合っている(白い線)。アニメーションには、ブラックホールに吸い込まれる物質が作り出す宇宙ジェット(灰色)が描かれている。

出典 : Hotaka Shiokawa via EHT

ブラックホールの回転速度、回転方向によって降着円盤、影、宇宙ジェットの形が決まる。

Credit: Lia Medeiros, Chi-Kwan Chan, Feryal Özel, Dimitrios Psaltis via EHT

別のシミュレーション。

出典 : Lia Medeiros, Chi-Kwan Chan, Feryal Özel, Dimitrios Psaltis via EHT

EHTより強力な望遠鏡ができれば、似たような画像を撮影できるかもしれない。このシミュレーションではブラックホールの影と降着円盤が驚くほどクリアに描かれている。

物質が光に近い速さで動いているため、降着円盤の一方は常に明るくなるとカリフォルニア大学サンタバーバラ校の天文学者ティモシー・ブラントは語った(ブラックホールの研究をしているが、EHTには参加していない)。

「一部は明るくなり、一部はぼんやりする」とブラントは10日の発表前にBusiness Insiderに語った。

「一部はあなたの方に向かって移動してくる、そして明るくなる。相対論的ビーミングのためだ」

相対論的ビーミングはドップラー効果のようなもの。ドップラー効果によって、近づいてくる救急車のサイレンは高い音で聞こえ、走り去るサイレンは低く聞こえる。

光速に近い速度では、地球に向かってくる方向に動いている物質は明るく、青く見え、遠ざかる物質は暗く、赤く見える。

出典 : Hotaka Shiokawa via EHT

先ほどのアニメーションの別バージョン。光をより強調した。

出典 : Hotaka Shiokawa via EHT

もし人類が超巨大ブラックホールを見ることができたなら、SF映画『インターステラー』に登場したブラックホールのように見えただろう。だが、例えば、ブラックホール「いて座A*(エースター) 」は、我々の銀河から2万6000光年離れたところにある。

SF映画『インターステラー』に登場したブラックホール。

SF映画『インターステラー』に登場したブラックホール。

Paramount Pictures



[原文:The first-ever picture of a black hole is fuzzy. These incredible illustrations help explain what it shows.

(翻訳、編集:増田隆幸)

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