LINEが使えるスマートディスプレイ「Clova Desk」がついに登場。実用度はいかに?
- LINEの「Clova Desk」が登場。日本ではアマゾンに続いて2社目のスマートディスプレイとなる
- コンパクトさ、赤外線リモコン機能など、日本特化と言える部分が多い
- LINEのメッセージの送受信、音声・ビデオ通話の発着信なども同社独自の点だ
メッセージングサービス大手のLINEは、3月19日に同社初のスマートディスプレイ「Clova Desk」を発売した。スマートディスプレイは、AIアシスタントをインストールした“スマートスピーカー”にディスプレイを搭載したものだが、日本ではアマゾンが先行して「Echo Spot」や「Echo Show」を展開している。
LINEはスマートスピーカーという点においては、アマゾンやグーグルなどよりわずかに早く日本で発売していた経緯があるが、スマートディスプレイでは2番手となってしまった。
Clova Deskの同梱物。本体、ACアダプター、簡単な使い方ガイド、とシンプル。
しかし、同社はClova Deskの発表会で「日本市場に合うようにじっくり開発した」と意気込みを見せる。ちょうど、筆者は自宅でアマゾンのEcho Showを使用しているため、Clova Deskの実力を実機で比較してみた。
1. Clovaはコンパクト、Echoはダイナミック
写真左からClova Desk、Echo Show。
まずは外観だが、Clova DeskとEcho Showではサイズ感が大きく異なる。Clova Deskは7インチの液晶、Echo Showは10.1インチの液晶を採用しているためインパクトはEcho Showの方があるが、Clova Deskはコンパクトで場所を選ばない印象を受けた。
写真左からClova Desk、Echo Showをそれぞれ右側面で比較したところ。
また、Clova Deskは正面、Echo Showは後ろ側にスピーカーを搭載している。そのため、Clova Deskは画面が本体の上部にあるように見える。写真は実際に我が家のキッチンに置いた場合だが、画面の前に小物を置いても画面が隠れないのは便利だった。
2. スピーカーの音質はEchoの方がいい
Clova Deskは「LINE MUSIC」、Echo Showは「Amazon Music」などのストリーミングサービスに対応している。
スピーカーの音質という面では、Echo Showが断然リードしていた。Echo Showは2インチサイズのスピーカー2基とパッシブラジエーター付きという構成でドルビー対応と、映画鑑賞にも遜色ない迫力のサウンドが楽しめる。
ただし、これはClova Deskの音質が悪いというわけではない。Clova Deskもフルレンジスピーカー2基(20W)を備えており、音楽や後述するLINE通話も十分に楽しめる。前述のとおり、スピーカーが正面にあるため、通話時などは相手の声が直接自分に向けられている感覚がする。
3. 映像は「AbemaTV」か「プライム・ビデオ」か
LINE Clovaは無料の「AbemaTV」、Echo Showは有料会員向けの「プライム・ビデオ」を楽しめる。
映像コンテンツについてだが、Clova Deskは「AbemaTV」、Echo Showはプライム・ビデオなどにそれぞれ対応している。ちなみに、AbemaTVはAlexaスキル(スマホでいう“アプリ”のような追加機能)としても提供されているが、こちらは視聴ランキングやオススメの番組を声で案内する機能に留まっており、コンテンツの再生はできない。
Clova DeskではAbemaTVのチャンネル切替も音声でできる。
つまり、どちらも独占的な環境であるため、どちらのコンテンツをスマートディスプレイで見たいか、という個人の趣味や生活スタイルの話になってくる。個人的にはプライム・ビデオで配信されているような映画などはテレビの前で腰を据えてゆっくり視聴したく、スマートディスプレイではAbemaTVでニュースやバラエティーなどを“ながら見”するの方が適していると感じた。
ちなみに、YouTubeはどちらも「ブラウザー表示」で対応。
4. 家電操作は赤外線対応のアドバンテージが大きい
Clova Deskは、Echo Showが標準では対応しない赤外線での家電操作に対応している。
スマートスピーカー・スマートディスプレイの主な用途として、家電操作も欠かせない。どちらも対応している機器に対しては「ライトを消して」「テレビをつけて」など、できることは大きくは変わらない。
ただ、非ネットワーク機器に対してはClova Deskの方に分がある。なぜならば、初代スマートスピーカー「Clova WAVE」もそうだが、赤外線リモコンに対応しているからだ。LINEによると赤外線機能では国内・海外メーカー60社9658種類のテレビ、エアコン、照明器具を操作可能(2019年3月時点)だという。
Echo Showもサードパーティー製の家電リモコンと別途購入し連携させれば同様のことは可能だが、Clova Deskは内蔵のためその必要がない。
5. コミュニケーション機能はLINEが強い
Clova DeskはClovaデバイスとしては初めて、スマートフォンのLINEアプリとのビデオ通話に対応する。
スマートディスプレイは、画面とカメラを搭載しているため、ビデオ通話などを使ったコミュニケーションデバイスとしても活用できる。Clova Deskはスマートフォンでもお馴染みのLINE、Echo ShowはAlexa搭載のスマートディスプレイやスピーカー、Alexaアプリの入ったスマホなどと連絡がとれる。
どちらが実用的かは言うまでもないだろう。Clova DeskはLINEの連絡先から事前に登録した相手に音声通話、ビデオ通話を発信できる。また、その逆で受信も可能。テキストメッセージは音声の読み上げ+文字を表示、スタンプや対応している絵文字も表示できる。
着信が来ても、登録した“自分の声”でないと通話が始まらない。
心配なのは、自分のLINEのアカウントとClova Deskを連携させてしまうと、自分宛てのメッセージを勝手に読み上げたり、着信を受けたりしないかという点だ。その点もしっかり考えられており、個人のLINEアカウントと連携させている場合、メッセージや着信などは事前に登録する「ユーザーの声」で都度認証する必要がある。
仮想アカウントをClovaに付与することもできる。
また、Clova Deskに連携するアカウントを「Clova専用アカウント」というボットにすれば、特定のグループ内でのコミュニケーションに限定できる。イメージとしては、家族のLINEグループにClovaを参加させて代弁させるような感覚だ。
音声認識の精度は“登場当初”とは別物
端末を待機状態にする合い言葉、いわゆるウェイクワードは「ねぇ Clova」。以前は単に「Clova」と言うだけだった。
最後に肝心の「音声認識」の精度について触れておきたい。正直に言って、Clovaの音声認識の精度は登場当初の2017年、さんざんな評価がつけられていた。筆者もClova WAVEで試していたが、何も言っていないのにClovaが起動したり、話しかけた言葉を間違えるなんてことは頻繁にあった。
しかし、今回レビューしたClova Deskは違った。Echo Showと比べても音声認識の精度は遜色ない程度だった。もちろん、たまに話した言葉と別の言葉に置き換わって伝わることもあるが、それはEcho Showでもグーグルの「Google Home」でも同じことだ。
“言い方”を間違えると「こう言ってくださいね」的なアナウンスが表示されるが、わかっているなら実行してくれ……と思わなくもなかった。
ただ、音声認識は正確になってきたが、認識した言葉を理解するフェーズはまだ他社に分があるように感じた。
例えば、Clova Deskはバッテリーを内蔵して持ち運ぶことができるのだが、「バッテリーは残りいくら?」と聞いても「スマートフォンのアプリでご確認いただけます」と返されてしまう。だが、言い方を変えて「バッテリーの残量を教えて」と聞くと「バッテリーの残量は残り●●%です」と答えてくれる。
そのほかにも、家にある唯一のテレビの名前が「リビング テレビ」と付いている場合、「テレビをつけて」だけでは起動できないなど、少し融通が利かないと感じる面があった。
すでにLINEを使っている場合、LINEと密接に連携するClova Deskはかなり活用の幅が広がる。
ただ、このあたりはClova全体の利用傾向や学習度合いから改善できる点であり、使っていくうちにユーザー自身が慣れていく部分でもある。
ちなみに直販価格は、Clova Deskが2万7540円(税込)、Echo Showが2万7980円とほぼ変わらない。どちらも一長一短あるといった現状だが、コミュニケーション機能を活用するならClova Desk、リッチなエンタメ体験に魅力を感じるならEcho Showと、自分がスマートディスプレイを家でどう使うか、イメージして選ぶと良いだろう。
(文、撮影・小林優多郎)