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グーグル「G Suite」にAI新機能が来るべくして来た理由。「小売り」のライブ字幕ビデオ会議、GS版「OKグーグル」など

GoogleNext2019

サンフランシスコ市内のカンファレンス会場「モスコーンセンター」の北ホール、南ホールを中心に、市内複数の会場でセッションと展示を開催。会期は4月9日〜11日(現地時間)。

Google Cloud

グーグルは、有料版Gmailを含むオフィススイート「G Suite」に、ベータ版を含む全14カテゴリーの大幅な機能アップデートを行う。サンフランシスコで開催中の「Google Cloud Next ‘19」にて、約2時間におよんだ基調講演Day2の中で明らかにした。いくつかの機能はすでに提供を開始している。

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Google CloudのCEO、トーマス・クリアン氏。クリアン氏は前CEOのダイアン・グリーン氏の後任として、2019年はじめに就任したばかり。前職はオラクルの製品開発担当プレジデントという経歴を持つ。

G Suite担当副社長のエイミー・ロキー(Amy Lokey)氏が基調講演で明かしたところによると、いまやG Suite(無料版Gmail含む)は全世界で15億人が使う仕事効率化ツールで、そのうち9000万人は学生や教師だ。

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G Suiteの経済効果について語る担当副社長のエイミー・ロキー氏。

コラボのしやすさから、G Suiteを業務に組み込む大手企業も増えている。グーグルが公表するリストには、動画配信の巨人ネットフリックス、米ナスダックに上場したばかりのライドシェア大手リフト(Lyft)、通信大手ベライゾン、調査会社ニールセン、スーパーマーケットチェーンのカルフールなどが名を連ねる。

G Suiteの「経済効果」について、ロキー氏は、導入企業における売上高の1.5%に相当し、年間で1ユーザーあたり約171時間分(=労働時間のほぼ1カ月分)の効率化につながっていると胸を張る。

ビデオ会議に「ライブ字幕」がやってくる(ただし英語のみ)

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壇上でハングアウトMeetの動作を披露したところ。

グーグルがG Suiteに盛り込んだ新機能は、働き方をめぐる3つのシンプルなワードに沿って考えられている。「Fast」「Smart」「Together」だ。

基調講演の内容が機械学習からセキュリティまで非常に幅広かったため、G Suiteの新機能の中で、実際にデモ(実動デモ、あるいは動作する様子を見せたもの)は、14カテゴリーのうち、実のところ2つだけだった。ただこの2つは、G Suiteのサービス設計のあり方を示す端的な例だと言える。

たとえば、ビデオ会議ツール「ハングアウトMeet」のライブ字幕機能だ。どういう挙動になるのかは、動画を見てもらう方が話が早い。このデモは多地域に展開する大規模なシューズチェーンを模したユースケース再現動画になっている。売れ筋の靴の在庫がないので、4人でハングアウトMeetを使って情報交換をしている。

4人のビデオ会議のデモでは、それぞれの発言がまるでチャットのようにリアルタイムに生成され、画面の下側にまるでチャットをしているかのようにログが流れていく。

UX設計のうまさもさることながら、この音声認識は、グーグルのスピーチ認識技術(Speech to Text)などを使ってサービスを構築していることがポイントといえる。

さらに、このデモ動画の「内容」には、複数の重要な要素が入っている。話しながら、「在庫の状況をSAPからスプレッドシートに引き出してチェック」している。さらに、在庫確認の際、スプレッドシートの左側の入力欄に「Total Stock Each Warehouse(全倉庫の在庫)」と検索すると、AIが意味を理解して分析結果(在庫状況)を表示している。

G Suiteという「いかにコラボレーションから摩擦をなくすか」を追求してきたサービスに、グーグルが持つ専門的な機械学習技術を取り入れることで、新たな価値が生まれる。こうしたの流れは、グーグルにとってみれば「来るべくして来た」ということだ。

まずは有償版からの実装だが、そのうちいくつかは、いずれ無償版にも下りていくはずだ。

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「モスコーンセンター」の南ホールの吹き抜け。エスカレーターを降りていくと、広大な地下スペースを利用した展示会場やキーノート会場がある。

Google Cloud

現在のハングアウトMeetには議事録の「書き出し」という機能はないそうだが、ユーザーが強く要望して、それにグーグルが答えるなら、「ビデオ会議の議事録をテキストで出力する」機能をつけるのは、彼らにとってそれほど難しい開発ではないだろう。現段階で書き出し機能がないのは、昨今グーグルがあらためて言及する“プライバシー保護への慎重な姿勢”を反映していると思われる。

このライブ字幕機能の提供は“Today”で、すでに誰でも使えるようになっているという。

ハングアウト関連はこれ以外に次の2つのアップデートがある。

ハングアウト関連のそのほかの新情報

ハングアウトMeetの外部へのライブストリーミング機能の一般公開(近日提供)、また参加者上限数の引き上げ(近日提供、人数は非公表)

・最大250人でのMeet機能も間もなく提供

・「ハングアウトチャット」のGmailへの統合(ベータ版

Google AssistantをG Suiteに統合、「仕事で使う音声AI」

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もう1つのデモは、「OK、グーグル」でおなじみの音声AI、Google AssistantのG Suiteへの統合だ。これは特にカレンダー連携を意識したものになっている。

すでに個人アカウント向けにはGoogle Assistantからカレンダーの内容を呼び出すことができたが、新たにG Suiteを使う法人アカウント(いろいろなポリシーがあったり、リージョンが違ったり、個人向け版と違って制約事項が多い)のGoogleカレンダーでも、「OK、グーグル」でいろいろな情報が聞けたり、操作ができるようになる、ということだ。

この機能はベータ版が“Today”で提供開始になっている。

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アジア地域の記者の質問に答えるG Suiteのエンジニアリング担当副社長のGarrick Toubassi氏。

基調講演に出てこないG Suiteの主な新機能

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基調講演では言及されなかったものも含めて、追加機能はほかにも多数ある。最後にグーグル発表の新機能(ベータ版含む)をまとめた。

G Suiteアドオン(今後数カ月でベータ版を提供)

Boxなどをはじめとするいくつかのビジネス向けツールに、G Suiteのサイドパネルからアクセスできるように開放する。

基調講演後にオープンしたベータ版登録サイトには、4月10日(現地時間)時点でクラウドノートアプリのEvernote、プロジェクト管理ツールのAsana、法人向けクラウドストレージのBox、セールスフォースなど17種類のサービスのロゴが掲載されている。

・G Suite上でWord、Excel、PowerPointの共同編集機能(まもなく一般提供開始)

これまでのGoogle Docsなどの共同編集機能と同じように、マイクロソフトOfficeのファイルも、そのまま共同編集できるようになる。

Google DriveでPINコードを使った時限提供機能(ベータ版を提供中)

通常の共有ではなく、PINコードを入力することで1週間、書き換えができるようにする機能。

G Suite版Google Voice(まもなく一般提供開始)

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グーグルのクラウドテレフォンサービス。ボイスメール(留守電)をテキスト変換して送ってくれたり、AIを使って迷惑電話をブロックする機能もある。

・Google Driveのメタデータサポート(ベータ版)

Drive内のファイルや書類の検索性を高めるため、メタデータ(おそらくタグのようなもの)を付与できるようになる。

こちらのサイトからサインアップすることで、ベータ版機能がすぐに使えるようになる。

・Cloud Search(一部の条件を満たすユーザー向けに提供開始)

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従来からアナウンスしてきたCloud Searchに、SAPやセールスフォース、マイクロソフトのシェアポイントといった外部(サードパーティー)のデータソースを使えるようになった。

・コネクテッドSheets(ベータ版をまもなく提供)

大規模データ解析向けの機能で、最大100億行のデータ(グーグルのBigQueryプラットフォーム上のデータ)をスプレッドシートから扱える。

アクセス状況の透明性機能(提供開始)

基本的に企業が預けたデータの中身は「グーグルは一切見ない」方針をとってきたが、信頼性のさらなる確保のため、「万が一(ユーザーからの求めなどで)グーグルスタッフがデータを触った場合にもリアルタイムにログをとっていつでもチェックできる」機能を開始。

Google+の法人版「Currents」の提供(ベータ版)

Currentsはすでにベータ版を開始している。

編集部より:初出時、ハングアウトMeetの録画機能がないとしておりましたが、正しくは2017年から提供しています。また、同機能のライブ配信機能は“ドメイン内外にかかわらず配信できる機能となります。お詫びして訂正致します。 2019年4月16日 19:50

(文、写真・伊藤有/取材協力:グーグル)

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