35歳限界説は過去のもの?高年収転職の9割が35歳以上。その背景とは

ビルと人

35歳限界説は、もはや崩壊しているのか?

年収800万円以上のハイクラス層を対象にこの1年内で転職した人を調べたところ、35歳以上が9割を占めていたことが、人材サービスのパーソルキャリアの調べで明らかになった。

背景には、「バブル崩壊後の就職氷河期や、リーマン・ショック後の不況で新卒採用を控えた企業で、30〜40代の社員不足が深刻化しており、採用意欲が高まっていることがある」と、調査では分析。人手不足が加速し、売り手と言われる現在の転職市場でも根強く言われている「35歳限界説」が、ハイクラス層ではすでに崩壊しているとの見方だ。

就職氷河期の採用抑制のツケ

スカイスクレイパー

バブル崩壊後の就職氷河期や、リーマン・ショック後の景気低迷期には、新卒採用の抑制は広く行われた。

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パーソルキャリアが4月に立ち上げた、ハイクラス人材向けキャリアサポートのプラットフォーム「iX」が、東京・名古屋・大阪・福岡の男女6503人を対象に、インターネットによるアンケート調査を実施した。それによると、1年内に転職をした年収800万円以上の人の年齢を調べたところ、35〜39歳が約12%、40〜49歳が約32%、50〜59歳が42%で、いわゆるハイクラス層では年齢の高い人でも転職が実現していることが明らかになった。

調査対象者のうち、年収800万円以上の人の組織でのポジションを調べると、係長・主任以上、課長、部長、役員・経営層など管理職以上が8割近くを占めていた。多くの組織で、管理職には一定以上の経験が求められることから、この層の転職者が結果的に年齢が高めになると言えそうだ。

ただそれ以上に、中長期的な経済情勢とリンクした、企業の採用動向が影響していると、iX事業責任者の清水宏昭さんは指摘する。

バブル崩壊やリーマン・ショック後の景気低迷を背景に「新卒採用の抑制をした企業は、現代では管理職候補となる30〜40代のミドル層社員の不足という事態に陥っています。そのため、外部から人材を調達する採用の活発化が進んでいる」

一方で、個人の意識もこの20年で変わりつつあり、「生涯一社という意識が薄れて、転職への関心が高まっています。その結果、マネージャークラスでも別の業界や成長中のベンチャーへの転職をする動きも増えている」とみる。

実際、パーソルキャリアの転職サービスの現場では、結婚して家族をもつなど、転職に際しては身軽に動きづらい傾向のある30〜40代にも、転職に対し前向きな変化が起きつつあるという。

35〜44歳の転職は2000年比で6割増

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年齢別の転職入職者数

出典:厚生労働省「雇用を取り巻く環境と諸課題について」

人手不足や景気の好転を背景に「転職35歳限界説の崩壊」のトレンドはハイクラス層に限った話ではない。年収を問わない労働市場の動きを見てみよう。

厚生労働省がまとめた資料「雇用を取り巻く環境と諸課題について」によると、そもそも転職する人の数は長期的にみて増加傾向にある。

「転職入職者(事業所が新たに採用した労働者のうち1年間に就業経験のある人、非正規やパートタイムも含む)」の数は2000年に368万人だったのが、2016年では478万人に増加。その内訳を年齢別でみると、もっとも多いゾーンは34歳以下の205万人だが、注目すべきは増加率で、35〜44歳では2000年の67万人が2016年では106万人と6割近く増加している

また、転職入職者の構成比を、企業規模別でみると、大企業(社員1000人以上)の中途採用が長期的にみれば活発化していることも分かる。厚労省が「雇用動向調査」をもとに調べたところ、大企業では「入職者に占める転職者の割合」は、1991年で4割程度だったのが、2015年で56%と右肩上がりだ。

ただしこの資料では、35歳以上の採用に前向きな企業も多い一方で、「年齢が高いほど採用意欲は下がる」という事実も示している。企業に採用動向を尋ねたところ、35歳以上45歳未満では、64%の企業が「良い人材があれば採用したい」と答える一方、45歳以上55歳未満、55歳以上のゾーンでは「あまり採用を考えていない」と答える企業がもっとも多くなる

年齢が上がるにつれ企業側の採用意欲は冷えるという傾向はあるにせよ、労働市場全体でみれば「35歳以上限界説」が過去のものになりつつあると言えそうだ。

人材争奪戦の時代

横断歩道

猫の手も借りたい人手不足に、多くの企業が陥っている。

総務省がこの4月に発表した2018年10月1日現在の人口推計によると、総人口は前年比で約26万3000人少ない1億2644万3000人となり、8年連続の減少。減少数、減少率ともに1950年以来、過去最大となった。働き手の中心層である15~64歳の生産年齢人口が、総人口に占める割合も59%で過去最低だ。

本格的な人口減少社会を迎えた今、企業規模を問わず、多くの組織が人手不足で悲鳴をあげている。「35歳限界説」の崩壊は、採用抑制の影響を受けた年代の人手不足と同時に、人材争奪戦の時代に突入していることを表している。

企業側の採用の成否を分ける要素の一つとして、前出のiX事業責任者の清水さんはこう言う。

「従来通りの給与体系で、英語ができてマネジメントができて専門性の高い人材がほしい……というような企業もありますが、それは非現実的。既存の人事制度にこだわらず、待遇面も含めて柔軟な採用体制をつくる企業でなければ、採用競争を勝ち残るのは難しいでしょう」

(文・滝川麻衣子、写真・今村拓馬、※写真は全てイメージです)

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