ソニーモバイルは、国内で新型スマホ「Xperia 1」の体験会を実施した。
- ソニーモバイルは、2019年初夏発売予定の最新スマホ「Xperia 1」の国内体験会を開催
- 超縦長ディスプレイや3眼カメラが特徴的で、機能面もソニーらしさが随所に
- ただ、大手キャリアの分離プラン化が進行中。ハイエンドのXperia 1は苦戦を強いられる可能性も
ソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、ソニーモバイル)は4月16日、新型スマートフォン「Xperia 1」の国内体験会を報道関係者向けに開催した。
Xperia 1は、2月25日にスペイン・バルセロナで発表。国内販売は「初夏」を予定しているという。日本では例年、2月発表のXperiaは5月に3キャリアが夏モデルとして発表しており、Xperia 1も同様の展開が予想される。
ソニーモバイルは現在、国内外で厳しい販売状況が続いているが、Xperia 1はそんな暗雲立ちこめる状況の一筋の光になるのか。実機をチェックしてみよう。
Xperia 1の最大の目玉は、縦横比21対9の有機ELディスプレー。その縦長さには驚く
Xperia 1が搭載する「21対9比率」かつ「4K有機EL」のディスプレイは世界初。画面サイズは6.5インチ。重量は178gだ。
実際に持つとその持ちやすさに気づく。通知画面の表示もホームなら片手で呼び出せる
本体幅は約72mm。
縦長の画面は2つのアプリを起動するのに便利。動画を観ながらウェブをチェックなど可能
実は「21対9」という縦横比は、横長の16対9の画面、縦長の16対9の画面を同時に無駄なく表示できるサイズだ。
マルチウィンドウ機能は、独自ランチャーから呼び出すこともできる
対応アプリであれば、2つ同時に起動、画面表示が可能。
画面解像度は4K(3840×1644ドット)。グループ会社のTV技術でネットのコンテンツも高画質化
ソニーのテレビ「ブラビア」の技術を活かした「X1 for mobile」により、ネットにあるような低解像度コンテンツも高画質化できる。
OSはAndroid 9.0 Pieを採用。操作はPixelなどと同じで、画面端の横棒でタスクを切り替える
画面下端の横棒を上にスワイプするとホーム、途中で止めると起動アプリの一覧、横にスワイプするとアプリの切り替えなどが可能。
もう1つの目玉は背面カメラ。トリプルレンズを採用し、それぞれ標準、望遠、超広角
背面カメラはすべて約1220万画素のセンサーで、F値1.6の標準(26mm)レンズ、F値2.4の望遠(52mm)レンズ、F値2.4の超広角(16mm)レンズを搭載。
画角を比べてみよう。こちらが標準レンズ利用時(1倍)
続いて、望遠レンズ利用時(光学2倍ズーム)
最後に、超広角レンズ利用時。広角〜望遠の切替はピンチイン・アウトに加え、ワンタップでも可能
スマホでは世界初となる「瞳オートフォーカス(AF)」にも対応し、人物の顔がクッキリ撮れる
アイコンや画面表示で、被写体の顔ではなく「瞳」を認識していることがわかる。
ソニーのプロ向け映像チームのノウハウが詰まった「Cinema Pro」アプリでは、シネマワイド(21対9)の録画や色のプリセットが使える
Cinema Proアプリは、ソニーのプロ向け映像ツールブランド「CineAlta (シネアルタ)」のチームと共同で開発。
Xperia 1をプロの映像制作現場のサブモニターとして利用するといったコンセプトデモも行われていた
プロ向けカメラの映像を無線接続で映すXperia 1。
音に関しては、一部の仕様を自社技術からドルビーアトモスに切り替え。疑似サラウンドだけではなく、対応コンテンツでは迫力の音響が楽しめる
自社の疑似サラウンド技術「S-Force」の代わりに、Xperia 1では「ドルビーアトモス」を採用。発表会にいた説明員によると変更した理由は「表現力のある対応コンテンツの多さと、クリエイターの意図した演出をユーザーに提供できるというメリットを考えたため」とのこと。
eスポーツ向け機能にも注力。ゲームアプリと正面カメラの映像を同時に録画可能だ
録画した動画はYouTubeなどにアップロードできる。
残念な点もある。Xperia 1はワイヤレス充電非対応のため、有線での充電が必須だ
Xperia 1の端子形状はUSB Type-C。規格はUSB 3.1に準拠している。
“焦り”は見えるがソニーらしさは戻ってきた
Xperia 1のカラーバリエーションは4色。
ここ1、2年を振り返ると、国内キャリアの発表前に、ソニーモバイルが独自のイベントを日本で開催するのは久しぶり。国内外ともに販売台数が落ちている分、メディア向けのアピールを強化しているようにも思える。
しかし、今回のXperia 1を短時間だが触ってみた印象は、ここ1、2年のXperiaにはなかった往年のソニー製品の“おもしろさ”が存分に感じられるということだ。
Xperia 1のカラーバリエーションの1つ「グレー」も、白と黒があるにも関わらず用意している点では、“攻めている”と感じた。
21対9の超ワイドディスプレイは初見ではキワモノだが、迫力の映像体験はもちろん、マルチウィンドウ機能の活用法次第では、意外と実用的だ。
カメラについても画質の評価は現時点でできないが、標準に加え、望遠および超広角撮影をサポートし、しかも自社独自のノウハウを活かした、他のスマートフォンでは決して撮れない画が生み出せる。
夏商戦では、サムスンの「Galaxy S10+」やファーウェイの「HUAWEI P30 Pro」(いずれも日本発売未定)などの強力なライバルの登場が期待されるが、“個性”という意味では決して引けを取らないレベルと言えるだろう。
“分離プラン促進”はXperiaにとって逆風
ソニーモバイル社長の岸田光哉氏はXperia 1を「1から生まれたXperia」と表現。
ただし、良い製品だからといって売れるとは限らない。とくに、各キャリアは現在、政府の方針もあり、通信料金と端末料金を分けた分離プランを推進。KDDIやソフトバンクは先行して提供していたが、NTTドコモも6月から分離プランを提供すると発表している。
分離プランになると、キャリアが通信料金を割り引く形で端末料金を安く見せる“実質価格”の売り方は方針転換せざるをえない。そのため、性能が高く高価なスマートフォンは、本来の価格は変わらないものの割高に見えてしまい、買い控えが起きる可能性は以前から指摘されている。
Xperia 1の右側面は不思議なボタン配置となっている。従来のXperiaの側面指紋センサーは電源ボタンを兼ねていたが、Xperia 1では指紋センサーの隣に電源ボタンが別に用意してある。これはアメリカなどでは「電源+指紋センサー」の特許を別会社が取得しているため。今回はグローバルすべてでこの仕様となる模様。同社関係者は「コスト削減の一環」と答えている。
Xperia 1も最新のハイエンドCPUを搭載し、メモリー6GB、ディスプレイも他にはないサイズのものを採用している。
ソニーモバイルは、例えばXperia 1で復活となった側面指紋センサーの仕様をグローバル標準のものにするなど、製造コストの削減につとめているが、発売時の本体価格は8〜10万円程度と考えるのが妥当だろう。
分離プランで3〜4万円程度のミドルレンジ機のさらなる普及が進むと予想される2019年夏の商戦を、Xperia 1はどう切り拓いていくのか。
(文、撮影・小林優多郎)
また初出時、Xperia 1について発言した写真のキャプションを染谷洋祐氏としておりましたが、実際には社長の岸田光哉氏でした。お詫びして訂正致します。 2019年4月18日 13:00