若者は韓国を目指す。渡韓15回女子学生や男子も卒業旅行。見た目もマインドもマネしたい

いま韓国を“目指す”若者が急増している。

旅行先としてはもちろん、音楽、ファッション、メイクなどのライフスタイル全てで「韓国っぽ」を表現・追求し続ける。その先に待っていたのは、意外な展開だった── 。

推しYouTuberのお店巡り

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ソウル市内の繁華街・明洞。

GettyImages/ Taro Hama @ e-kamakura

これまでに15回韓国を旅行していると話すのは、東京都内の有名私立女子大学に通うAさん(20)。

3月にも2度、別々の友人とそれぞれ3泊4日の旅を楽しんだという。1回目は好きな韓国のラッパーが経営しているハンバーガーショップ、2回目はこれまた好きな韓国の有名YouTuberが経営するバーなどを巡ったそうだ。YouTuberとは直接会って写真を撮ることもできた、と満足そう。

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Aさんが好きなYouTuber송대익(ソン・デイク)の動画に出てくる店。「推し」の足跡をたどるのは韓国旅行の醍醐味だ。

提供:取材協力者

韓国のアーティストやYouTuberって、カフェやレストランなど飲食店を経営してる人が多いんですよ。私が好きな人たちはそんなに有名ではないんですけど、たとえ本業で売れてなくても、ファンはお店に行ってお金も落とせるし応援もできるから、幸せです。商売がうまいですよね(笑)」(Aさん)

ドメブラは可愛くない

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Aさんが愛用している韓国コスメブランド「CLIO」のリップ。同ブランドのアイシャドウも人気だ。

提供:取材協力者

もちろん渡韓のたびにコスメや洋服を買うのもマスト。買い物はソウル市内の繁華街・明洞(ミョンドン)や弘大(ホンデ)ですることが多いという。

『1つ1000円以上の物は買わない』と決めて旅行することもあるくらい、韓国ファッションって本当に安いんですよ。洋服はトレンドがあるから1シーズン着られれば十分なので、質より安さとデザイン重視派です。 10代から“K-POPどっぷり勢”なので、もう服もメイクも日本のブランドを可愛いと思えなくて

取材当日のAさんは、目尻をキリッと上げたアイライン、グレイのカラーコンタクトに、マットな赤リップ。日本の雑誌は読まず、流行は韓国人女性たちのインスタグラムから取り入れているそうだ。

推しに年間90万円積みます

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ソウル・明洞にあるコスメブランド「メディヒール」。BTSが広告を務める。

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Aさんが韓国カルチャーにハマったのは、小学5年生のとき。母親の友人が東方神起のファンで、その影響を受けたという。

韓国の放送局Mnetを母親に契約してもらい、音楽番組からドラマ、バラエティなども頻繁に観るように。

以降、韓国の大手芸能事務所のアイドル全てを好きになる「雑食期」(Aさん)を経て、「地下アイドルから韓国アングラHIP HOPまで」(Aさん)、さまざまなグループを好きになり、追いかけてきた。

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Aさんがこれまでに積んできたCDの一部。1つのグループに対してこのボリュームだ。

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中学生まではアルバイトができないため、誰かのファンになるたびに一緒にコンサートに行き、グッズを買えるよう「ママもハメるのが大事な仕事」(Aさん)だったが、高校生からはラーメン屋のバイトで毎年、扶養控除ギリギリまで稼いでいたそうだ。

CDにリリースイベントの参加券などを付けて売る、いわゆる「AKB商法」は韓国にもある。Aさんがこれまで好きなアイドルのために「積んだ」CDは軽く身長を超えるという。イベント時は数万円のアクセサリーをプレゼントすることもあり、イベントやCD、ライブのために使う金額は年間約90万円だ。

3泊4日で3万円の気軽さ

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あるアイドルが訪れたことで有名な焼肉店。店員に頼むとサインを見せてくれたそう。

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Aさんが初めて韓国に行ったのは高校1年生のとき。好きなアーティストのライブが目的だった。テレビ番組を観たり、「アイドルのサイン会で実践を踏みすぎて」自然と覚えた韓国語は、日常会話はもちろん、今ではベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』を原書で読めるほどだ。

しかし、「観光地はどこも日本語が通じますし、レストランのメニューも日本語表記があるので韓国語ができなくても大丈夫ですよ」とAさん。

Aさんが韓国に行くときは3泊4日が基本スケジュールだ。飛行機はLCCで、宿泊もエアビーなどでゲストハウスを予約すると、3万円ほどで行けるそう。

母娘でチマチョゴリ、ダンススクールも人気

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伝統衣装のチマチョゴリを着て街を散策する体験コースは人気が高い(写真はイメージです)。

GettyImages/Prasit photo

いま、Aさんのように韓国旅行を楽しむ若者が増えている。

2018年に韓国を訪れた海外観光客は約1534万人で、前年に比べて15%増加。うち日本人は294万8257人で、前年比27.6%増だ(中央日報2019年1月23日)。

特に2018年に韓国を訪れた10代の日本人は、2015年に比べると254%(LITERA2019年4月8日)にもなっている。

記者の知人にも、BTSが訪ねた店を訪れコラボグッズを買いに行く20代、チマチョゴリ体験をしに行く母娘、ダンススクールに通う高校生、盛り上がるフェミニズムを学ぶために大学に留学する社会人など、さまざまな目的で韓国を目指す女性たちがいる。

前出のAさんは言う。

「明洞なんて日本人しかいないじゃんってくらいです。特に最近は日本人の男の子がすごく増えていると感じます。黒いスキニーにピアスがたくさんついてる韓国っぽい子から、LDH系の子まで、幅広く人気みたいです」(Aさん)

男子も韓国ファッション、ご飯は新大久保

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明洞。写真中央のコスメブランド「エチュードハウス」は日本でも大人気で、路面店も複数ある。

提供:取材協力者

先日、高校を卒業し、現在は海外の大学へ入学準備中のBさん(男性・18)もその1人だ。高校の卒業旅行先として友人たち3人と選んだのが、韓国だった。旅程は3泊4日。 空港に着いた瞬間から「韓国に染まりまくろう」と、みんなで黒いマスクを買った。

韓国アイドルといえば、派手なカラーリングが特徴だ。美容室で髪をピンクに染めショッピングモールで靴からコートまで一式コーディネートし、その洋服でテーマパーク「ロッテワールド」を楽しんだという。

自分や友人へのお土産として選んだのは、フェイスパックやハンドクリームなどの韓国コスメだ。 途中、一緒に旅行した友人の知り合いの韓国人とも合流し、10人ほどで食事をしたことも良い経験になったという。

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ショッピングモールで買い物を楽しむBさん。

提供:取材協力者

「海外留学経験のある韓国人の子も多くて、英語で会話しました。政治的なことは話していませんが、みんな偏見もなく優しくしてくれて、嬉しかったです」(Bさん)

同じ学校の女子生徒も偶然、同時期に韓国に卒業旅行に来ていたため、途中で合流した。

「K-POP人気は感じていたし、ごはんを食べに行くときの定番も新大久保です。でも、旅行先としても本当に人気なんだなと改めて思いました」(Bさん)

Bさんが韓国文化に興味を持つようになったのは、高校2年生のとき。1歳年上の姉がK-POPアイドルのファンだったため、その影響でいろいろなグループのMVなどを観るようになったという。

アイドルのイメージ覆したK-POP

NCT127

2018 年のAmerican Music Awardsに参加したNCT127のメンバー。

GettyImages/Emma McIntyre ・スタッフ

「みんな背が高くて顔もかっこよくて、ダンスもめっちゃうまくてびっくりしました。ライブごとに違うリミックスやダンスパフォーマンスで楽しませてくれるし、エンタメとしての完成度がすごいなと。自分たちで作詞作曲から振り付けまでするグループもいて、それまで僕が抱いていたアイドルのイメージを覆されましたね」(Bさん)

Bさんがファンになったのが、男性グループの「NCT」だ。NCTは「Neo Culture Technology」の略称で、「解放」「拡張」がキーワード。メンバーは韓国だけでなく中国・アメリカ・カナダなど多様な国籍で構成され、派生ユニットも複数ある。

それまでファッションにはほとんど興味がなかったというBさんだが、「自分も彼らのようになりたい」という一心で、髪型やファッションを真似るようになったそうだ。MVやライブの衣装を研究し、毎週のように古着屋に通っては同じような服を探した。ピアスは日本に売っている物で良い物が無かったため、雑貨屋でパーツを購入して自分でつくるまでになった。

入り口は韓国、出口は自分

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ソウル市・弘大のアクセサリーショップ「時空間」。棚一面にピアスが並ぶ。

提供:取材協力者

「入り口はすべて韓国」と断言するBさんだが、ある変化もあったという。

「最初はアイドルを参考にしていたけど、今は違います。ピアスは自分でデザインを考えるようになったし、ファッションもモード系とかを取り入れるようになりました。自分が何が好きなのか、心の声に向き合って、それをしっかり選べるようになったんです」(Bさん)

2018年、BTSが国連で自分を愛することの大切さを訴えるスピーチをしたことは有名だが、韓国のアイドルやアーティストたちは、日頃から曲やチャリティ活動などでそうしたメッセージを発信していることが多い。

BさんがNCTを好きになったのも、世界に発信することを目的としていることや、多様性に魅力を感じるからだという。Bさんは将来、海外で働くのが夢で、現在はカナダの大学へ進学を考えている。

実は高校生時代、BさんはK-POPを好きだと友人に打ち明けることができなかった。前出のAさんも同じ悩みを抱えてきたという。背景には日韓の政治的な緊張と、それを煽ってきた報道がある。

このテーマについては機会を改めて詳報する。

編集部より:初出時、11枚目の写真キャプションを「ソウル市・弘大のファッションブランド『Stylenanda』『3CE』のレジ奥」としていましたが、正しくは「ソウル市・弘大のアクセサリーショップ『時空間』」です。お詫びして訂正致します。 2019年4月17日 21:10

(文・竹下郁子)

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