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製造業も注目するグーグル「Anthos」の熱気 ── グーグル日本代表と検証したNTT Comが語る

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中央がGoogle Cloudの日本代表 阿部伸一氏、左は同社カスタマーエンジニア 技術部長の佐藤聖規氏、右がNTTコミュニケーションズ クラウドサービス部ホスティングサービス部門 部門長の角守友幸氏。

グーグルは先週サンフランシスコで開催された「Google Cloud Next ‘19」で、Google Cloud、他社クラウド、データセンターなどの自社運用サーバー(いわゆるオンプレミス)を統合的に管理・運用できるプラットフォーム「Anthos」(アンソス)を発表した。

Anthosは先行して「Cloud Services Platform」という名称で発表していたものを、正式版(GA)に合わせて新名称にリブランディングしたもの。このAnthosの開発段階(アルファ版)のテストには、アジア地域のクラウド事業者の中で唯一、NTTコミュニケーションズが参加している。

Anthosへの期待について、Google Cloud日本法人代表とNTTコミュニケーションズ幹部がラウンドテーブルで語った。

日本の製造業からも「Anthos」に反響がきた

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開発版のテストを進めていたCloud Services Platformをリブランディングし、Anthosというプラットフォーム名称になった。

Google Cloud日本代表の阿部伸一氏は自身の見解として、「(今年のCloud Nextではさまざまな発表があったが)ハイライトはAnthosだと思う。日本のさまざまなお客様から(発表に関して)反響があった。クラウド(の世界)のOSのようになっていく可能性もあるのではないか、というフィードバックもいただいた」と、サービスの注目度への手応えを語った。

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Google Cloud日本代表の阿部伸一氏。

オープンソースのKubernetesベースのクラスタが稼働するGoogle Cloud、他社クラウド、自社データセンターを一元的に扱えるAnthosは、IT産業などすでにクラウド化と親和性の高い業界から注目度が高いのは当然ともいえる。だが、阿部氏によると、製造業からも良いフィードバックを得ているという。

製造業とクラウドがこれまで必ずしも相性がよくなかったのには、いくつか理由がある。

IT産業と違い、工場やそこで動くロボットなどの機器、つまり「エッジ」に相当するデバイスや設備があるので、「センサーや移動体に近いところにサーバーを持っておきたい」(阿部氏)のもその1つだ。

しかし、モノや産業機器が相互にネットでつながるIoTの世界がさらに前進すれば、製造業であろうとも、大量に集まるデータと向き合うことから逃れられなくなってくる。

自動車メーカーはこうしたケースの良い例といえる。インターネット接続を前提とした「コネクテッドカー」は、いままでは高級車や輸入車が中心だった。しかし、これが普及価格帯まで降りてくる時代になると、取り扱うデータ量が爆発的に増加する。しかも集まってくるデータは、次の「ビジネスを産む種」だ。

これまでは自社データセンターへの投資で済んだかもしれないが、投資の規模・データ保全のコストなどさまざまな面でクラウドに目を向けざるを得なくなってきている。

阿部氏も、「(こうした時代背景から)メーカーさんも、サプライヤーさんも、(エッジも使うが)クラウドを使うのは、適材適所だという発想になってきた」と、クラウドを見る目線に対する潮目の変化を語る。

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Anthosのパートナ企業リスト。NTTコミュニケーションズのロゴもある。

基調講演のなかでは、Anthos環境への移行をうながすベータ版ツール「Anthos Migrate」も発表された。

「Anthos Migrateという機能を使うと、実際にいまオンプレミス上のサーバーにあるVM(バーチャルマシン)をそのまま(Anthos環境に)移せる可能性がある。全部Anthosベースにしていくと、新しいインフラを自由に、どこにあるかを気にせず(構築できる。もちろん、)製造業はどこにサーバーがあるかも非常に重要なので、両面でいろいろなシステムの開発・運用を考えていける」

「今日、明日すべて変わるということではないが、大手のいろんな業種の方が、変わっていく(新しい発想で作り変え次の時代に進む)土壌はできたんじゃないか」(阿部氏)

自社サーバーを活用するメリットと、Google Cloud以外も含めたクラウドを活用するメリット、この間を取り持ち、言ってみれば架け橋のようにビジネスの移行・拡張を促す存在として、Anthosが注目されている。

NTTコミュニケーションズがアジアで唯一「検証」

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NTTコミュニケーションズのプレスリリースより

すでにプレスリリースが出ているとおり、NTTコミュニケーションズは3月から、Google Cloudと協力し、Anthosの検証を進めてきた。

検証範囲は、Anthosを構成する一部である「GKE On-Prem」(Google CloudのサービスGKEをプライベートクラウドやオンプレミス環境で稼働させるもの)と、自社サービスである「Enterprise Cloud」の連携だ。

NTTコミュニケーションズのクラウドサービス部ホスティングサービス部門部門長の角守友幸氏は、「GA(正式版)になるまでの間にグーグルと一緒に検証を進めて、実際の(クラウド上の)GKEと同等の機能が、AnthosのGKE On-Premにあることを確認しました」と、Anthos環境の機能と動作に関して、期待どおりの水準にあることを報告した。

「(今回検証・対応を進めた)背景としては、いま(仮想化技術である)“コンテナ”管理のプラットフォームへの関心が非常に高いという状況と、またGDPRなどのさまざまな規制、コンプライアンスの問題に準拠しないといけないこと、さらにスケーラビリティーのある開発環境が日本の中で求められています。

実際にオンプレミスの専用クラウド上での環境構築は、我々としても引き合いが非常に多い。(Anthosの)GKE On-Premは、我々にとっても良い武器になると思っています」

ビジネスとしても、NTTコミュニケーションズは、Anthosの一部であるGKE On-Premが稼働する環境を、「Enterprise Cloud」のサービスとして2019年度中に提供していく予定。また、NTTコミュニケーションズの自社システムへも、Anthos(GKE On-Prem)の採用を予定している。

(文、写真・伊藤有)

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