4月22日はアース・デイ、地球の日だ。
地球のことを考えて行動するこの記念日では、世界各地で持続可能な社会を表現するイベントが行われる。東京でも週末、代々木公園でコンサートなどが開催された。
プラスチック消費の見直し等、環境への配慮は、あらゆる業界に広がっている。特に、ファッション界の近年の動きは見逃せない。
廃棄された果物を再利用した春コレクション
Conscious Exclusive Collection 2019。廃棄された果物など、環境にやさしい素材を使っている。
H&Mホームページより
カジュアル衣料大手のH&Mは4月、オレンジの皮、パイナップルの葉、藻類バイオマスという、斬新な素材3種を使ったConscious Exclusive Collectionを発表した。
Conscious、つまり意識や配慮があるこのコレクションは、廃棄された果物の再利用に加えて、リサイクルされたポリエステルを使うなど、全ての商品を環境にやさしい素材でつくっている。
ジュース製造の過程で廃棄される柑橘類の皮は、「Orange Fiber®」という素材として再利用され、バルーンスリーブのトップスの原料に。
オレンジの皮を再利用したボヘミアントップス。
H&Mホームページより
ジャケットや鞄に使われている「Piñatex®」は、農業副産物であるパイナップルの葉の繊維から作られた不織布で、皮に代わる革新的な素材だ。
パイナップルの葉を再利用したジャケット、鞄とブーツ。
H&Mホームページより
「BLOOM™」という藻類バイオマスから作られた発泡素材は、サンダルのソールに使われている。製造工程は環境の浄化と復元に役立つという。
藻類バイオマスとリサイクル・ポリエステルを使用したサンダル.
H&M
この春コレクションの全48品は、トップスやボトムスからサンダル、水着、アクセサリーまでと勢ぞろい。その全ての商品にサステナブルな素材が使われている。リサイクル・ポリエステルを原料とするシフォン素材のワンピースや、リサイクル・プラスチックを利用したサングラスなどもある。
価格帯は約2500円から3万円と通常商品より高額だが、発売1週間の時点でオンラインショップを覗くと、在庫切れが続出しているほどの人気だ。
ブランドへの目線厳しいZ世代
Conscious Exclusive Collection 2019は通常より価格は高め。だが、日本でもオンラインではすでに売り切れている商品も出ている。
H&M
日本ではH&M渋谷店とオンラインストアで限定発売中(H&M Japanツイッターより)。筆者がオンラインストアを確認したところ、日本でも一部の商品はすでに売り切れていた。
Conscious Exclusive Collection 春2019の価格帯は2499-29999円と通常商品よりやや高額だが、在庫切れが続出していている。
H&Mホームページ、4月18日現在
若い世代もターゲットとするH&Mにとって、1990年代後半から2000年代にかけて生まれた「ジェネレーションZ(Z世代)」の取り込みは重要だ。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、Z世代の消費者は、ブランドについて良く勉強をしているほか、デジタル・ネイティブゆえに調査力も優れている。例えば、あるブランドがダイバーシティをウリにしている時、そこで働く社員自体にもその意識が根付いているのかを見極めているという。
さらにZ世代の9割は企業は環境・社会問題に取り組むべきだとも考えている。企業もブランド力を強化するには、表面上のCSRではなく、本腰を入れていなければ、見抜かれてしまうということだ。
H&M社のクリエイティブ・アドバイザーのアン・ソフィ・ヨハンソン氏は、今回の発表に際し、こう語っている。
「このコレクションでは自然の美しさを探求しました。柄、ゆるやかなシルエット、色合い、そして細部へのこだわりに表れています。新たな植物性のサステイナブルな素材を使いつつ、美しく、ファッショナブルな商品を提供できて大変うれしく思っています。しっかりと(環境配慮への)意思表示をしながらも、簡単に着ることができます」
現在、H&Mが生産している洋服の素材は57%がサステイナブルなものだが、2030年までに100%にまで引き上げるとしている。
大倉瑶子:米系国際NGOのMercy Corpsで、官民学の洪水防災プロジェクト(Zurich Flood Resilience Alliance)のアジア統括。職員6000人のうち唯一の日本人として、防災や気候変動の問題に取り組む。慶應義塾大学法学部卒業、テレビ朝日報道局に勤務。東日本大震災の取材を通して、防災分野に興味を持ち、ハーバード大学大学院で公共政策修士号取得。UNICEFネパール事務所、マサチューセッツ工科大学(MIT)のUrban Risk Lab、ミャンマーの防災専門NGOを経て、現職。インドネシア・ジャカルタ在住。