20、30代は洋服より消費罪悪感ないサブスク出費。給料下がればアプリ断捨離

ミレニアル

音楽も動画も、ニュースも、時に食べ物やファッションにも……。現代は若者を中心に「サブスクリプション(定額課金)サービス」(モノを買い取るのではなく、商品やサービスの対価を利用した期間に応じて定額で支払うサ−ビス)が世界的に大きなトレンドとなっている。

そのサービスに象徴される、新たな幸せや欲望のかたちとは?

ユーミンの曲に感じた違和感

サブスクリプションサービスのひとつとしても知られる、音楽配信サービス「Spotify」でいつものように音楽を聴いていると、プレイリストのなかに入っていたユーミン(松任谷由実)の曲がたまたま耳に入ってきた。

片手で持つハンドル 片手で肩を抱いて

愛してるって言ってもきこえない 風が強くて

中央自動車道を調布方面へクルマで走るふたり……。へぇ、恋愛のアイテムとして昔はクルマがあったんだなぁ。

今では考えられないその「非現実さ」がなんだか新鮮で、思わず聞き入ってしまった。調べると、1976年に発売された曲(『中央フリーウェイ』)だという。

「●●離れ」し続けた平成世代

通勤電車

若者の●●離れは、お金の若者離れ?

筆者(東京在住、27歳)の同世代でクルマを所有している人は、知る限りひとりもいない。さらにいえば、ドライブやクルマに対してロマンチックな憧れを覚える人もほとんどいないように思う。

それだけではない。若者のクルマ離れ、アルコール離れ、ブランド離れ、結婚離れ……平成は「若者の●●離れ」がさかんに叫ばれた時代だった。

実際に、総務省が発表する「全国消費実態調査」によると、1999年から2014年にかけて若者消費支出は男女ともに減少している。

とくに男性は、クルマにかける費用も含まれる「交通・通信費」が1カ月で約1万4000円も少なくなっている(独身の場合)。女性では、服にかける費用は約7500円、食料費が約7400円も減少している。

ユーミンの『中央フリーウェイ』がヒットしたのは平成よりさらに前の高度経済成長の時代だけれど、平成は、日本全体が「時代はもっと良くなるはず」と信じて、少し背伸びした生活へ憧れる、その“幻想”がなくなっていった最初の世代といえるのかもしれない。

10〜20代の4割が定額制に課金

スマホを見る人

スマホのアプリはもはや生活と切り離せない。

その一方で、消費者庁が2016年に実施した「消費者意識基本調査」を見ると、若者が決して消費をしたくないわけではないということもわかった。10歳代後半から30歳代までで、買い物が好きだと回答した人の割合は7割を占めており、ほかの年代よりも高い。

買い物はしたいけれど、お金は使いすぎたくない……。“堅実さ”が垣間見える今の若者世代を中心に浸透していっているのが、サブスクリプションサービスだ。

都内でIT企業の会社員として働くリコさん(女性、32)にとって、音楽や動画の配信サービスは、生活に欠かせない一部になっている。朝目が覚めると、まず「Apple Music」でトップチャートの音楽をかけながらしたくをする。

通勤中も「Apple Music」もしくは最近登録した「YouTube Music」で音楽を聞く。同時に「朝日新聞デジタル」でニュースをチェック。dマガジンは、お気に入りの雑誌が配信されると必ず見ている。休日はNetflixやHuluなどで映画を見るのが毎週の楽しみだ。

以下が、リコさんが毎月課金しているサービスの一覧だ。

  • Netflix(動画、約1300円)
  • Apple Music(音楽、980円)
  • YouTube Music(音楽、980円)
  • Amazonプライム(配送特典・映像・音楽など、約400円)
  • Hulu(動画、930円)
  • 朝日新聞デジタル(ニュース、3800円)
  • dマガジン(雑誌、500円)

サブスク出費は月8890円。

インターネット調査のマイボイスコムが発表しているデータによると、なんらかの定額制サービスを利用している人は全体の2割だったが、中でも若年層の比率が高く、10~20代男性は4割弱、10~20代女性は3割弱がサブスクを利用していた。

サブスクは、罪悪感が小さい

ユニクロ

服はユニクロやZARAで買うことがほとんどだという。

サブスクリプションサービスに毎月支払う金額は9000円近いが、リコさんは「これくらいのお金を払うのは当然」と考えている。

「テレビの情報は薄っぺらいし、見ていると自分まで薄っぺらくなってしまいそう。自分の価値観のためになるモノを見たり、聞いたりしたい」(リコさん)

リコさんのお気に入りは、Netflixのオリジナル番組「クィア・アイ」だ。5人のゲイ男性が“イケてない”一般人を変身させ、ポジティブな人生への後押しをするというリアリティショーだ。

「テレビでは未だに同性愛者に対して『コッチ系?』などと差別的な発言をする人もいる。そういうのはもううんざり」(リコさん)

Twitterではテレビタレントの発言が炎上するのを日常的に目にする。外資系のコンテンツでグローバルな価値観についてきちんと知っておくことは「自分のためにもなるし仕事にも役立つ」とリコさん。

逆にリコさんは「衣食住にはほとんど興味がない」という。持っている服のほとんどがZARAやユニクロで、数千円単位で買えるものだ。その服を一着買う費用と比較しても、動画や配信サービスに課金することは「コスパが良い」と考えている。

さらに「引き落としが月ごとだから購入した時の罪悪感が小さい」点を、サブスクリプションの良いところとしてリコさんはあげている。

お金がなくなれば「断捨離」

矢野経済研究所が2019年4月に発表したデータによると、2018年のサブスク市場は約5600億円。5年後の2023年には、50%増の8600億円規模にまで膨れ上がると予想されている。

同じく都内在住のハルカさん(女性、27)もNetflixやAmazonプライムなどのほか、月額でコーヒーが飲み放題のカフェの「サブスク」にも課金していた。

IT企業に勤めていたハルカさんはこの春、スキルアップのために転職を決めた。年収は420万円ほどだったが、新しい転職先では新卒扱いで4割減。生活コストを切り詰めるために、すべての課金サービスを見直して“断捨離”した。

「iPhone(のアプリ)にいくら払っているかわかる機能があって、それを見たら8000円くらいで、こんなに払ってるんだーって。ケータイ(通信費)にもそれくらい払っているから、ヤバいなって」

Netflixをやめた代わりに、テレビを録画して見るようになった。「タダで視聴できるコンテンツ」は貴重だが、配信サービスの便利さに「慣れるとやっぱ元には戻れない」 —— 。自分がいかに依存していたか知るきっかけにもなった。

Spotifyなどの音楽配信サービスでは、課金をやめても広告つきであれば無料でサービスを継続できるものもある。広告が出てくるのはストレスが大きいが、我慢して聴いている。

サブスクリプションサービスで消費罪悪感をやわらげながら、お金がなくなったらサクッと解約 —— 先行きの見えない今だからこそ、コスパの良い買い物を求める。

ユーミンのようにロマンチックなドライブデートはもう昔の話だけれど、なくてもそれはそれで楽しめると、経済低迷の時代に生まれ育った世代は知っている。

(文・西山里緒、写真・今村拓馬)


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