ソニー、PS4向けゲームの性的表現に規制 ── 開発者には不満も

女性をモノ扱いしていると繰り返し批判されているゲームもある。

女性をモノ扱いしていると繰り返し批判されているゲームもある。

Koei Techmo


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  • ソニーは女性に対する露骨な性的表現を含むゲームの数を減らすために、新たな基準を導入したとウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。
  • PlayStation 4(PS4)は現在、最も人気のある据え置き型ゲーム機で、世界での売上台数は9000万台以上、ゲームの累計販売本数は8億本を超えた。
  • ソニーは、ゲームの承認基準の変更は「#MeTooムーブメント」およびTwitch、YouTubeといったプラットフォームでのゲームのライブ配信に対する関心の高まりを受けたものとウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
  • この基準変更により、一部のゲーム開発会社は、PlayStation版のみに独自の修正を加える必要に迫られている。開発者からは、新しいガイドラインは厳し過ぎるとの声も出ている。

ソニーは、PlayStation向けゲームの承認基準を改めたとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語った。これは「#MeToo」ムーブメントによる価値観の変化、ならびにゲームのライブ配信に対する関心の高まりを受けたもの。

WSJによると、ソニーは、女性を軽視しモノ扱いするようなゲーム、あるいは性的なコンテンツを含むゲームのプロモーションを避けたいと考えている。ソニーが特に懸念していることは、未成年の少女を性的対象として扱うような日本のゲームに、同社が関わっていると見られること。

「我々は当社が訴訟や社会的アクションのターゲットになる可能性を懸念している」とソニーのある幹部は匿名を条件にWSJに語った。Business Insiderはソニーに新しいポリシーに関して、より詳しいコメントを求めている。回答があり次第、記事を更新する。

ソニーの本拠地である日本のマーケットは、性的なゲームに対して比較的寛容と言われている。だが、そうしたゲームの中には、アメリカではわいせつ、あるいは明らかに侮辱的と見なされかねないゲームがある。

ソニーはこれまで、こうしたゲームの多くを日本市場のみの販売に限ってきた。しかし、YouTubeやTwitchといったライブ配信プラットフォームの出現により、あらゆるゲームが世界中で話題となる可能性が出てきた。

一方、アメリカでは「#MeToo」ムーブメントをきっかけに、ビデオゲームや多くの人気メディアの中で、女性がどのように描かれているかという批判に対して、より配慮した対応が求められている。

こうした状況を受け、ソニーは規定を変更し、問題点を指摘されかねないゲームから距離を取る判断を下した。

だが、この新しい基準の適用方針に関して、一部の開発者やゲーマーから混乱を招きかねない、あるいは一貫性がないといった批判の声が出ているようだ。

今回の基準変更をめぐる要点は以下の通り。


一部の日本の開発者は、ソニーが性的コンテンツに関する新たな基準について、明文化されたガイドラインを示していないことに不満を示していると伝えられた。

「閃乱カグラ Burst Re:Newal」は、性的コンテンツが問題視され、北米では数カ月遅れの2019年1月に発売された。このゲームは、「唯一無二の爆乳ハイパーバトル」シリーズを自称している。

「閃乱カグラ Burst Re:Newal」は、性的コンテンツが問題視され、北米では数カ月遅れの2019年1月に発売された。このゲームは、「唯一無二の爆乳ハイパーバトル」シリーズを自称している。

XSEED Games

WSJの報道によると、ソニーは基準変更を明文化していない。しかし、匿名を条件に取材に応じた複数の開発者は、ソニーから性的コンテンツを同社のガイドラインに合うよう修正することを求められたとWSJに語った。

開発者は、ソニーには性的コンテンツに関する明文化されたガイドラインがなく、繰り返される修正要請は一貫性に欠けると述べた。

「ソニーが何を言ってくるかは、作品を完成させて審査に出さない限り、分からない」と日本のあるゲーム開発会社の責任者はWSJに語った。

ソニーはWSJに対し、新しい基準は「急ぎ導入された」ものであり、明文化されたガイドラインがまだないのはそのせいと述べた。


一部のゲームには、ソニーの新基準に対応するため、PS4版のみに修正が加えられた。

一部のゲームには、ソニーの新基準に対応するため、PS4版のみに修正が加えられた。

Capcom

ソニーの新基準導入により、複数のプラットフォーム向けにリリースされているゲームの中には、PS4版のみに特別な修正を加えたものもある。

例えば、「デビル メイ クライ 5」のアメリカおよびヨーロッパ向けバージョンでは、光の効果を使って、裸の女性キャラクターのお尻を隠す処理が加えられた。

一方、日本向けバージョンは、いかなるプラットフォーム版でもこのような処理は加えられていない。その後のアップデートで、アメリカ向けバージョンからはこの処理は取り除かれたが、ヨーロッパ向けバージョンにはまだ残っていて、ファンの困惑を招いている


ソニーは2018年、「閃乱カグラ Burst Re:Newal」の発売元に、欧米市場での発売前に「スキンシップモード」を削除させた。スキンシップモードは、プレーヤーがゲームに登場する女性キャラクターの身体を触ったり、服を脱がせたりできるもの。

ソニーは2018年、「閃乱カグラ Burst Re:Newal」の発売元に要請し、欧米市場での発売前に「スキンシップモード」を削除させた。スキンシップモードは、プレーヤーがゲームに登場する女性キャラクターの身体を触ったり、服を脱がせたりできるものだった。

XSEED Games

2018年10月には、欧米向けPS4版「閃乱カグラ Burst Re:Newal」がソニーの要請によって発売延期となり、一部のゲーマーからは性的コンテンツの検閲に対する懸念の声があがった。この時、ソニーはゲームの発売元に「スキンシップモード」と呼ばれる機能を削除させた。このモードは、プレーヤーがゲームに登場する若い女性キャラクターの身体を触ったり、服を脱がせたりできるものだった。

「唯一無二の爆乳ハイパーバトル」シリーズを自称する「閃乱カグラ Burst Re:Newal」は結局、北米では当初の予定から数カ月遅れの2019年1月に発売された。日本版には「スキンシップモード」が含まれているため、欧米プレーヤーの間には、自分たちが手にできるバージョンは検閲のために不完全なものになってしまったとの不満の声もある。

欧米でのローカライズを手がけるXSEED Gamesは、プラットフォームホルダーであるソニーの意向を尊重すると述べた。


ソニーは、ゲームにおける性差別に対抗するための予防的な措置を取っている。しかし、明文化されたガイドラインがないため、ゲームメーカーにとっては、どこまで容認されるのか、境界線の見極めが難しくなっている。

「トゥームレイダー」は、主人公ララ・クロフトの長年のステレオタイプなイメージを払拭しようとしている。

「トゥームレイダー」は、主人公ララ・クロフトの長年のステレオタイプなイメージを払拭しようとしている。

"Shadow of the Tomb Raider"/Square Enix

PlayStationのような、企業が提供するプラットフォームは、消費者にとって不可欠な存在になっている。そして、プラットフォームを開発する企業は、さまざまな環境の変化により、自らのプラットフォームで許容されるコンテンツのあり方について、スタンスを明確にすることを迫られている。

ソニーは、ゲームにおける性差別に対抗するための予防的な措置を取っている。しかし、明文化されたガイドラインがないため、ゲームメーカーにとっては、どこまで容認されるのか、境界線の見極めが難しくなっている。

だが少なくともソニーの新しい方針は、ゲームにおける女性差別的な表現に対する問題意識を高め、ゲームを誰もが楽しめるものにすることに大きく貢献するだろう。

[原文:Sony is reportedly changing its standards for sexual content in new PlayStation games in response to the #MeToo movement and livestreaming

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

編集部より:初出時、「『我々は当社が訴訟や社会的アクションのターゲットになる可能性を懸念している』とソニーの広報担当者はWSJに語った。」としておりましたが、正しくは「ソニーのある幹部は匿名を条件にWSJに語った。」です。お詫びして訂正致します。2019年4月25日 9:45

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