中国の「いま働きたい会社」ランキングの意外すぎる実態 ── アマゾン、アップルもトップ5圏外

中国 学生

中国の学生たちが企業に求めるものとは何か。企業はどんな人材を必要としているのか。

Wang He/GettyImages

ビジネス特化型SNSリンクトインが「いま働きたい会社 2019」ランキングを発表した。

中国全土で4000万人におよぶユーザーを対象に調査。(1)企業に対する興味関心の度合い(2)従業員エンゲージメント(企業と社員の関わり)(3)仕事の要求度(4)社員の定着率、という4つの軸をもとに評価した。

ランキングは、2018年2月1日時点で500人以上の従業員を雇用していて、その後12カ月間についても、安定的あるいは積極的に採用活動を続けた企業のみを対象としている。

企業の評価理由には、中国の労働事情が色濃く反映されているため、日本では「働きたい」と思うほどの取り組みとまでは言えないものも含まれている。しかし、中国の人気企業が採用のためにいま何を重視しているのかが透けて見えるという意味で、できるだけ抜粋してご紹介しておきたい。

第20位から見ていこう(従業員数は、特段のことわりがない限り中国国内の人数)。

【第20位】ユニリーバ中国(聯合利華)

ユニリーバ 中国

REUTERS/Piroschka van de Wouw

従業員数約6000人。公衆衛生インフラ整備、低所得者層向けのサービス・教育活動を展開。青海省、四川省、安徽省など都市部以外での学生教育を通じて、生活水準の引き上げにも貢献。近年では、浄水器や空気清浄機など生活環境向上をテーマとしたビジネスにも力を入れる。

【第19位】テンセント(騰訊)

テンセント 騰訊

2016年3月、シンガポールで開催された同社主催のアジア・カンファレンスにて。

Sean Lee/GettyImages for Sportel

従業員約5万4000人。深センに本拠を置く、中国を代表する大手IT企業。2019年、基礎科学研究を支援するために10億元(約165億円)を拠出すると発表。また、若手研究者向けの奨励金として、50人を厳選した上で、1人あたり60万元(約990万円)を5年間にわたって提供することを明らかにしている。

【第18位】RED(小紅書)

RED

RED(小紅書)のサービス説明サイト。

出典:RED(小紅書)ウェブサイトから編集部キャプチャ

従業員約2000人。2019年6月までにエンジニアなど300人を採用する計画を発表している。同社の従業員は、自分が好きな、または自分がなりたいと思うキャラクターの名前を社内で名乗ることで知られる。2018年の年次総会では、社員がそれぞれ名乗るキャラクターのコスプレで参加。最も多かったのはマンガ『ONE PIECE(ワンピース)』の登場キャラクターだった。

【第17位】中国オラクル(甲骨文)

中国 オラクル

中国オラクルの公式ウェブサイト。

出典:オラクル中国語版HPより編集部キャプチャ

従業員5000人超。同社では、一線級の優秀な従業員は、年間の業務評価に応じて「精英発展計画」(一種のエリート養成プログラム)に組み込まれ、個々の適性に即したトレーニングを受ける。従業員たちが社内にあるキッチンを使って自分たちで食事を用意することでも知られる。

【第16位】快手

快手

REUTERS/Stringer

従業員8000人以上。同名の短編動画投稿アプリを展開。急速な業務拡大を受けて、人事制度を拡充している。200人ほどの小さな企業から8000人もの従業員を抱えるIT企業にまで成長した今日でも、同社は社員全員が参加する茶話会を開き、経営や福祉について従業員からの質問(ときには厳しい批判)に創業者らが応じる取り組みを続けている。

【第15位】アップル(苹果)

アップル 北京

北京市内にあるアップルストア。

REUTERS/Jason Lee

中国国内の従業員数は明らかにされていない。内モンゴル自治区ウランチャブに、中国で2カ所目となるiCloudデータセンター(1カ所目は貴州省)を建設中。操業開始は2020年の予定。アメリカ、イギリス、中国、インドのアップルストア、オフィス、データセンターは100%再生可能エネルギーで運営されている。

【第14位】ロレアル中国(欧菜雅)

ロレアル

REUTERS/Christian Hartmann

従業員1万人以上。中国法人のCEOは2019年2月に開いたメディア関係者とのラウンドテーブルで、中国がロレアルにとってアメリカに次ぐ世界第2位の市場に成長したことを明らかにしている。同社の社用パソコンのスクリーンセーバーは社内イベントの告知スペースとして活用されていて、出社して電源を入れた従業員が驚き喜ぶ光景は日常茶飯事だという。

【第13位】JD.com(京東商城)

JD.com

2018年6月、上海の家電見本市「CES 2018」に出展したJD.com(京東商城)のブース。

REUTERS/Aly Son

従業員約17万人、中国のEC大手。2019年2月に27億元(約445億円)を投じ、北京の五つ星ホテル「翠宮飯店(ジェイドパレスホテル)」を買収して話題を呼んだ。従業員たちには、倉庫や流通拠点に足を運んで配送業務をサポートすることが奨励されている。同社によると「命令ではなく、あくまで従業員の自主的な取り組み」だという。

【第12位】ネットイース(網易)

NETEASE

Shutterstock

従業員2万人、日本では大ヒットしたゲーム「荒野行動」で知られる大手ゲーム会社だが、音楽ストリーミングなど幅広いサービスを手がける大手IT企業。広州スマートシティ(智慧城)に5億元(約82億円)を投じて建設中の本社屋が完成間近。2019年4月現在、リンクトインを通じて何とも意外な職種を募集している。例えば、コンテンツセキュリティ・リスクコントロール担当、農場管理・動物育成担当、ミュージシャンマネジメント・プロデュース。何をする気だろうか。

【第11位】アント・フィナンシャル(螞蟻金服)

アントフィナンシャル

REUTERS/Shu Zhang

従業員数1万人。アリババグループの金融関連会社。決済事業「アリペイ」や、信用スコアリング事業の「芝麻信用」で知られる。最近では、ブロックチェーンの商用化に向けてバックエンド機能を提供するクラウドサービスを始めるなど、先進的な取り組みを続けている。アリペイ担当チームは全従業員の52%を占め、その平均年齢は31歳。既婚率は54.3%。国籍はアメリカ、ドイツ、イギリス、エジプト、日本など15カ国にわたる。

【第10位】美団点評

美団点評

2018年9月、美団点評のIPO(新規上場)に際しての記者会見。

REUTERS/Bobby Yip

従業員約5万5000人。中国のフードデリバリー最大手。近年はレストラン、旅行予約にも手を広げ、生活関連総合サービス企業へと成長。2018年の営業収益は652億元(約1兆300億円)、前期比92.3%増という数字を残した。同社の志望者たちが面接で必ず聞かれる質問は「仕事で自分の築いてきたものをぶっ壊した経験について教えてください」だ。

【第9位】ファーウェイ(華為技術)

ファーウェイ

2019年1月、米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2019」にて、ファーウェイの展示ブース。

REUTERS/Steve Marcus

従業員約18万人。いまやアメリカが目の敵にするほどの影響力をもつ中国の通信機器大手。数百億元を投じ、広東省東莞市にヨーロピアンスタイルの研究施設を建設中。2019年内に完成予定で、研究開発部門の社員を中心に2万5000人を収容する。社内イントラネット(オープンコミュニティサイト)「心声社区」では、批判も含めて自由かつ建設的な言論の自由が保障されている。

【第8位】アマゾン(亜馬遜)

アマゾン

REUTERS/Carlos Jasso

従業員6000人。2015年に中国扶貧基金会と共同で貧しい農村地域の教育支援に着手。2019年末までに200の学校に支援対象を拡大し、それぞれにキンドルを活用した電子図書館を設立することを宣言している。中国における女性管理職の比率は50%を超え、世界に広がるアマゾンの拠点全体のなかでもトップ。しかし最近、アマゾンは中国でのEC事業から撤退する(2019年7月予定)ことを発表した。

【第7位】DiDi(滴滴出行)

滴滴出行 DiDi

REUTERS/Thomas Peter

従業員数1万〜1万5000人。中国のライドシェア最大手。2018年にドライバーによる乗客殺人事件が連続して中国全土を震撼させた。信用を回復するため、安全を最優先のテーマとして、幹部を含めた再教育に取り組んでいる。社内には従業員のための「ケアコーナー」が設置され、アイマッサージ、推拿整体などを受けられる。毎月最終週だけは自宅へのマッサージデリバリーも可能。

【第6位】テスラ(特斯拉)

テスラ 上海

上海に建設中のテスラ「ギガファクトリー」、2019年1月の起工式に参加したテスラのイーロン・マスクCEO。

REUTERS/Aly Song

従業員1500人以上。言わずとしれた、イーロン・マスク率いる米電気自動車メーカー大手。2019年1月、上海で着工した新工場「ギガファクトリー」への投資額は140億元(約2310億円)とされ、9月にも4つの作業棟が完成する。志望者との面接では、仕事の内容を細部に至るまで口頭で説明させることで、思考のあり方と問題解決能力を評価する。最も重視される能力は、忍耐力、柔軟性、問題の本質を見抜く力、協調性だという。

【第5位】NIO(上海蔚来汽車)

上海蔚来汽車

NIO(上海蔚来汽車)のSUV「ES8」。2019年4月、上海モーターショーにて。

REUTERS/Aly Song

従業員9000人超。「中国版テスラ」と呼ばれる電気自動車メーカー。従来の充電式に代わる、バッテリー交換方式の優位性を掲げ、2019年6月には新型「ES6」を市場投入予定。上海の本社では定期的に「Seeds」と呼ばれるレクチャーイベントが行われ、これまでに中国の有名ロックバンド「子曰楽隊」のボーカルや、キプロス出身の著名デザイナー、フセイン・チャラヤンが登壇している。

【第4位】FOSUN(復星国際)

FOSUN

中央寄りの眼鏡の人物が、FOSUN(復星国際)の郭広昌CEO。

REUTERS/Bobby Yip

従業員数は全世界で約7万人。中国を代表するコングロマリット企業のひとつ。若手採用を重視しており、郭広昌CEOは「幹部、一般社員にかかわらず、最も重要なのは起業家精神。すべての従業員がそうした精神をもつだけでなく、実際に自発性をもって起業するべき」と語っている。従業員向けの福利厚生プラットフォーム「星喜」の充実ぶりも特徴。

【第3位】バイトダンス(字節跳動)

バイトダンス TikTok

REUTERS/Stringer

従業員数は全世界で3万人以上。日本でも人気急上昇の動画投稿アプリ「TikTok」など人気サービスを展開する。(2019年3月時点で)春の採用を開始しており、新卒とインターンの募集枠は合計2000人。2018年秋の採用でも5000人の採用枠を用意した。通信機器大手ファーウェイと同じように、バイトダンスは社内イントラネット「字節圏」で、会社や製品の批判を含め、熱意とつながりをベースにした従業員のチームづくりを推奨しており、率直な発言ができるよう匿名性も維持されているという。

【第2位】バイドゥ(百度)

百度

2018年11月、バイドゥ主催のカンファレンスで講演する、同社の李彦宏CEO。

REUTERS/Jason Lee

従業員数は全世界で約4万人。中国を代表する大手IT企業の一角。2019年3月、人材構成を見直すための計画を打ち出し、同時に幹部クラスの退職を促す計画も正式に発表した。会社の若返りを加速するため、2019年は8090人の若手人材を管理職に登用するという。ちなみに、バイドゥのロゴは熊の手のひらに似ているが、それをモチーフにした「小熊」なる従業員向けの記念品があり、従業員は1年ごとに勤続年数を表す特別な「度齢熊」を受け取ることができるという。

【第1位】アリババグループ(阿里巴巴集団)

アリババグループ

浙江省杭州市にあるアリババグループ本社。

REUTERS/Aly Song

従業員数は9万人超。中国のEC最大手。2019年11月には北京で新本社建設が始まり、2024年には完成予定。2003年にジャック・マー会長がECサイト「淘宝網(タオバオ)」を立ち上げた当時、従業員たちは「阿珂」「双児」「多隆」といった人気歴史小説『鹿鼎記』の登場人物をアカウント名に使っていたが、そのうちアリババ流のハンドルネームが生まれていき、いまでは新入社員は必ずそうしたハンドルネームをひとつ取得する必要があるのだという。

(文:川村力)

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