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Samantha Lee/Business Insider
- 2020年の大統領選に向け、アメリカではこれまでになく多くの候補者が民主党候補に名乗りを上げている。19人がすでにその意思を表明していて、これから立候補をする人物もいそうだ。
- 候補者の意思表明のペースは速い。前回の大統領選では、2015年の同時期に立候補の意思を表明していたのは共和党3人、民主党1人だった。
- 選挙キャンペーンをバランスよく戦わないと、候補者はあっという間に資金が尽きてしまうだろう。
2020年の大統領選に向け、アメリカではすでに19人が民主党候補に名乗りを上げている。元副大統領のジョー・バイデン氏も、早ければ4月24日(現地時間)にも立候補を表明する見通しだ。前回の2016年の大統領選では、共和党候補に16人が名乗りを上げたが、2020年はそれを上回る、史上最多となりそうだ。
だが、候補者の多さ以上に驚かされるのは、立候補を表明するペースの速さだ。2015年の同時期に、大統領候補を目指すと発表していたのは、共和党3人、民主党1人だった。これが今回は、4月最後の週末までに民主党20人、共和党2人になる見込みだ。
2015年4月22日の時点で、ヒラリー・クリントン氏は民主党候補に名乗りを上げた唯一の主要候補だった。同氏は4月12日に動画で選挙活動を始めると発表し、正式にスタートしたのは6月だった。
2016年の大統領選に共和党で最初に参戦したのは、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員で、2015年3月23日に立候補の意思を表明した。その後、4月7日にケンタッキー州選出のランド・ポール上院議員、4月13日にフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員がそれぞれ立候補を表明した。
2020年の大統領選は、再選を狙うトランプ大統領との戦いだ。
通常では考えられない、ユニークなアプローチも見られた。メリーランド州選出の下院議員だったジョン・ディレイニー氏は、トランプ大統領の就任から半年にも満たない2017年7月に民主党候補に名乗りを上げた。同氏は2018年の再選の機会を見送って、2年近く、自らの個人資産を使って、アイオワ州やニューハンプシャー州といった投票時期の早い州を中心に活動してきた。
2018年の中間選挙が終わると、民主党候補をめぐる動きが目立つようになった。ウェストバージニア州のリチャード・オジェダ上院議員は、11月の下院選で負けた5日後、大統領選への立候補を表明(1月には脱落した)。起業家のアンドリュー・ヤン氏は11月6日に立候補を表明している。
そのあと、候補者が乱立し始めた。2018年12月から2019年3月の間に、現職・元職の上院議員や下院議員、知事、市長、閣僚ら、さらに13人が大統領を目指すと立候補を表明したのだ。4月に入ると民主党候補にさらに5人が立候補し、マサチューセッツ州の元知事、ビル・ウェルド氏はトランプ大統領に対抗し、共和党候補に立候補すると発表した。
これほど数多くの候補者が続々と立候補を表明するのは、これまでにないことだ。ちなみに2015年、トランプ大統領がトランプタワーのロビーで大統領選への立候補を表明したのは、6月のことだ。
候補者はすぐに脱落し始める?
候補者が多いということは、リソースが乏しいということだ。認知度を上げるためのメディア露出や献金が減ったり、選挙キャンペーンを円滑に進めるスタッフの確保が難しくなるということもあるだろう。
そして、重要な注目ポイントは、資金が尽きる前に候補者が十分な献金を集められるかどうかだ。
前回の大統領選では、2015年9月に共和党候補に名乗りを上げていた2人の候補者が脱落した。テキサス州の元知事、リック・ペリー氏と、当時のウィスコンシン州知事スコット・ウォーカー氏だ。予備選挙が始まる前にさらに5人が脱落し、共和党候補を目指す戦いは11人にしぼられた。
ウォーカー氏は当初、話題の候補者だった。リコール選挙を含め、同氏は厳しい戦いを何度も勝ち抜いてきたからだ。しかし、キャンペーンでは苦戦した。
最後の2カ月で、ウォーカー氏は約700万ドル(約7億8000万円)を使うなど、キャンペーンに必要な資金が猛烈なスピードで尽きていった。80人以上のスタッフを抱え、コンサルタントやベンダーへの支払いもあった。ウォーカー氏の例が示すように、キャンペーンの規模を必要以上に広げすぎると危険だ。
2020年の大統領選ではすでに、民主党候補を目指す候補者たちが献金集めに苦労している。これは、今夏から始まる民主党全国委員会の討論会から除外されないためにも不可欠だ。候補者は一定の基準を満たさねばならず、その1つが最低でも6万5000人からの個人献金を受けなければならないというものだ。
2020年の大統領選をめぐる戦いは記録的なペースで進んでいる。つまり、候補者はいつ苦境に陥ってもおかしくない。厳しい予備選挙を勝つための完璧な作戦などない。だが、今回のように候補者が乱立している状況では、財政的に持ちこたえることが最も重要だ。
(翻訳、編集:山口佳美)