グリーンランド氷床の表面の溝を流れる雪解け水。2012年7月4日。
AIan Joughin/AP
- グリーンランド氷床は1980年代の6倍の速さで溶けている ── これは科学者たちが考えていたよりも速いスピード。
- 最近発表された研究によると、グリーンランドの溶けた氷は1972年以降、地球の海面を0.5インチ(約1.3センチ)以上、上昇させた。しかも、上昇の半分は過去8年だけで起きた。
- 仮にグリーンランドの氷がすべて溶けたとしたら、海面は23フィート(約7メートル)上昇し、沿岸部の都市は沈没する。アメリカでは、フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチ(West Palm Beach)南部がすべて海面に沈むことになる。
グリーンランドの氷は今、40年前の6倍の速さで溶けている。
アメリカ科学アカデミーの機関誌(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された研究の執筆者たちはグリーンランドの氷床から今、1年間に平均2860億トンの氷がはがれ落ちていると推測している。2012年、グリーンランドは4000億トン以上の氷を失った。
20年前は、1年間に平均でわずか500億トンだった。
失われた氷が意味することは、グリーンランドの溶けた氷は1972年以降、地球の海面を0.5インチ(約1.3センチ)以上、上昇させたということと研究者たちは記した。注意すべきことに、上昇分の半分は過去8年だけで起きた。
2019年1月に発表された別の研究は、衛星からのデータとGPSネットワークを使い、グリーンランドの氷がこれまで科学者たちが考えていたよりも速いスピードで溶けていることを明らかにした。
この研究は、グリーンランド南西部のリスクを強調した。南西部の氷の特に危機的状況にあることはあまり知られていないとクオーツは伝えた。
「これでさらに海面は上昇することになる」と1月に発表された研究の筆頭執筆者でオハイオ州立大学のマイケル・ベビス(Michael Bevis)教授はナショナルジオグラフィックに語った。
「我々は氷床の転機を目の当たりにしている」
東グリーンランド町、クルスック(Kulusuk)。
Bob Strong/Reuters
このニュースは別の不吉な発見がきっかけだった。南極大陸の氷が溶けるスピードも速くなっていた。1980年代、南極大陸は1年間に400億トンの氷を失っていた。この10年で、その数値は1年間に平均2520億トンにまで跳ね上がった ── グリーンランドとほぼ同じ数値だ。
グリーンランド氷床がすべて溶けると何が起こる?
グリーンランド氷床の広さは約170万平方キロメートル、テキサス州のほぼ3倍になる。アメリカ雪氷データセンター(National Snow and Ice Data Center:NSIDC)によると、南極大陸の氷床と合わせると、世界の真水の99%以上が含まれる。
真水のほとんどは凍って氷や雪の塊となっており、厚さは最大1万フィート(約3キロメートル)に及ぶ。だが、人間の活動によって多くの温室効果ガスが大気中に排出されると、海はこうしたガスが含む熱の93%を吸収する。温かい空気と水はかつてないぺースで氷床を溶かしている。
もしグリーンランドの氷床がすべて溶けたとしたら —— 数世紀はかかるだろうが —— 海面は平均23フィート(約7メートル)上昇することになる。フロリダの南端を沈めるには十分だ。
仮に南極大陸とグリーンランド、両方の氷床がすべて溶けたとすると、海面は200フィート(約61メートル)以上、上昇する(そしてフロリダは消失する)。
NASAは南極大陸とグリーンランド、2つの氷床がどのくらい溶けたかに基づいて、海面上昇を予測するインタラクティブツールを開発。このツールで非常に良く分かることは、沿岸部の都市が大きく影響を受けるということ。
氷がすべて溶けた場合、ナショナルジオグラフィックの地図によると、オランダのアムステルダム、スウェーデンのストックホルム、アルゼンチンのブエノスアイレス、セネガルのダカール、メキシコのカンクンなどは消えて亡くなる。そしてこれらの都市はほんの一例に過ぎない。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)