ファーウェイ新社屋が“ほぼハウステンボス”だった。日本企業が設計、敷地内は電車移動

ファーウェイお城

ファーウェイが東莞市郊外に建設した新キャンパス。実は日本企業が設計を担当した。

広東省深セン市に本社を置く通信機器メーカーのファーウェイ(華為技術)は、隣接する東莞市・松山湖に巨大な新キャンパス(拠点)を建設し、研究開発(R&D)部門の移転を進めている。「ファーウェイがお城を建設中」というニュースは、着工以来話題になっていたが、実際に足を踏み入れると、そこは1日かかっても回り切れないテーマパーク、というかほぼハウステンボスだった。

深セン市内から車で1時間半。ファーウェイの新キャンパスは工業地帯として有名な東莞市の松山湖地区にある。

東莞市

日本企業の工場も多く立地する東莞市

AR Artur Rydzewski/shutterstock.com

松山湖は風光明媚な観光地として知られるが、一方で、東莞市政府が早くから整備してきた産業団地エリアでもある。

新キャンパスはヨーロッパをイメージしており、総面積120万平方メートル。現地を訪れた日本人は、往々にして「東京ドーム何個分か」と質問してしまう。

ファーウェイお城

東京ドーム25個分、東京ディズニーランドが2つ入る大きさだという。

ブルゴーニュ、パリ、チェスキー・クルムロフ(チェコ)、オクスフォードなど欧州の12地方・都市をモデルに日本の日建設計がデザインを手掛けた。

ヨーロピアン調

Peter Stein/shutterstock.com


新キャンパスに移転するのは、ファーウェイのR&D部門スタッフ約2万5000~3万人。建設は2015年に始まり、2018年から社員の移転に着手。2019年内に完了する予定。

働く人々

移転にあたって、中国の不動産大手が周辺を住宅地として開発。周囲の地価も上がっていると噂されている。

松山湖への移転は、創業者である任正非(レン・ジョンフェイ)CEOの「空気のきれいな落ち着いた場所の方が、研究開発に集中できる」という考えによるものだが、なぜヨーロッパ調のデザインになったかは、よく分からないという。

建物

コンビニも入っている。


広すぎる敷地内は、移動のための電車が走っている。車両はスイスや日本から輸入する案もあったが、今は中国メーカーの製品を採用している。

電車


中国のIT企業は、朝9時から夜9時まで週6日働く「996労働」が働き方を象徴するキーワードになっている。ファーウェイはその代表的企業だが、新キャンパスの終電は18時台(2018年時点)と早め。

ただし、多くの人は車で通勤しているため、終電を逃してもそこまで問題はない。

広すぎるキャンパスには、複数の社員食堂がある。ファーウェイは電車に乗って別のエリアで交流しながら昼食を取ることを推奨しているという。


社員食堂の一つは高級感漂うビュッフェ。ランチのお値段は170元(約1900円)。

寿司コーナー

寿司・刺身コーナーも。刺身は注文後に切り分けてくれる。

お好みの具材、調味料で作ってくれる麺コーナー。

麺類


デザート、コーヒーは別料金。

チョコレートフォンデュ


種類豊富なケーキ。

ケーキ


松山湖キャンパス、深センの本社である坂田キャンパス共に、池ではブラック・スワンが飼われている。ブラック・スワンは「予測できないが、非常に大きなインパクトをもたらす事象」を指す経済用語として、2008年のリーマン・ショック後に大きな注目を集めた。

ブラック・スワン

松山湖キャンパスに生息するブラック・スワン。


任CEOが「順調なときでも、危機は突然訪れることを、社員に伝えるため」ブラック・スワンの飼育を決定したとされ、2018年末の孟晩舟(メン・ワンジョウ)CFO逮捕後に、ブラック・スワンのストーリーが各メディアで度々紹介された。

ブラック・スワン


ただし、任CEO自身は2019年3月、外国メディアのインタビューでこの意図を否定。「私はブラック・スワンが嫌いです。いつでも草花を食べるばかりだから。私とは何の関係もないし、むしろアヒルの方が好き」と答えた。

ブラック・スワン

任CEOのこの発言は、ファーウェイ社員の間でも定説を覆すものと受け取られたようだ。ファーウェイ・ジャパン広報が真相調査にあたってくれたが、誰が何のために飼い始めたかは現時点ではっきりしていない。

複数の社員の証言によると、2009年時点ではすでに深センの本社に存在していた模様。

3羽根のブラックスワン

ファーウェイ・ジャパン提供

繁殖シーズンには、毛がグレーのひなも見ることができるとのこと。

「お城」で一気に知名度を上げたが、実はファーウェイは2009年から松山湖地区で工場を稼働。現在もスマートフォンの生産の一部を担っている。

スマホ工場

2019年4月の取材時は、P20を生産していた。

トヨタ自動車OBを招いて生産の改善を重ねており、一本の製造ラインに必要な人員は、2013年の86人から、現在は17人まで減った。

スマホ工場の内部

ファーウェイ・ジャパン提供

現場の小さな改善を奨励し、大型機械などを入れない改善例を「からくり」と呼んでいる。

自動化を進め、スマホ1台を28.5秒で組み立てる。

スマホ工場内部


スマホ工場近くには、ファーウェイのセキュリティー対策を担うサイバーセキュリティーラボがある。

サイバーセキュリティーラボ


セキュリティー部門のトップは、ジョン・サフォーク(John Suffolk)氏。イギリス政府の最高情報責任者(CIO)などを務め、2011年にファーウェイに転じた。

ジョン・サフォーク

深センで4月16日に開かれたファーウェイのアナリストサミットで、メディアの質問に答えるサフォーク氏。

参考リリース

ラボは通常非公開だが、アメリカ政府がファーウェイがスパイ行為を行っていると批判を強めているのを受け、最近は一部をメディアに公開している。

図書コーナー

オフィスの図書コーナーには芥川龍之介の著作も。


ラボで働く社員は、「私たちは情報を盗むことも許さないし、盗まれることも許さない。ファーウェイも多くの知的財産権を保有しているのだから」と語った。

オフィスの様子



(文・写真、浦上早苗)

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