本日開始のLINE「ワンコイン投資」が“1年手数料無料”に踏み切った理由

LINE ワンコイン投資

LINEは週500円から始められる積立型のロボアドバイザー投資をスタートする。

LINEの金融事業子会社 LINE Financialは4月25日、個人向け投資サービス「LINEスマート投資」に、新サービス「ワンコイン投資」を開始すると発表した。

従来までのLINEスマート投資は、ユーザーが興味を持っているジャンルのテーマを選ぶだけで、そのテーマに沿った最大10社へ少額分散投資ができる「テーマ投資」に限られていた。しかし、ワンコイン投資は、1日500円からできる積立型のロボアドバイザー投資の商品になる。

キャンペーン

スタートから1年間は運用手数料無料のキャンペーンも実施。

ワンコイン投資の特徴は、1日最低500円からという比較的低価格で始められる点だが、LINEはさらに、2019年4月25日から2020年4月24日までの間は運用手数料(通常時、年率1%税抜・最低100円税抜)が無料になるキャンペーンを実施。

この低価格の投資商品およびキャンペーンで、LINEが狙うのは投資未経験者もしくは初心者であることは明白だ。けれども、なぜ積み立て投資における確実な収入源である手数料までゼロにしてしまうのか。

LINEスマート投資のプロジェクトマネージャーを務める大田雄介氏と、テーマ投資から引き続きワンコイン投資の開発をLINEと共同で進めるFOLIOの甲斐真一郎CEOに話を聞いた。

LINE Pay直結、運用プランの選択も不要

プラン選択画面

週5回の頻度で積み立てる「週5回 平日プラン」には“お金に働かせる感覚で!”など、投資初心者向けのワードが記されている。

まず、あらためて今回の新サービス・ワンコイン投資の特徴をまとめてみよう。

  • ユーザーは1日あたりの積立金額、1週間あたりの積立頻度を選択するだけで投資が始められる
  • 1日あたりの積立金額は最低500円から最高3万円で、500円(ワンコイン)単位で指定可能
  • 積立頻度は「週1回 お手軽プラン」「週5回 平日プラン」「週7回 毎日プラン」の3種類のみ
  • 積立口座への入金は、翌月にまとめてLINE Pay残高から自動で実行される
  • 入金方法はLINE Pay残高からの自動入金のみ(テーマ投資のように銀行口座からの直接入金は不可)
  • 運用は、FOLIOのロボアドバイザーサービスを適用。運用プランは、海外ETFを中心とした国際分散投資のバランス運用のみ
  • 通常時の運用手数料は預かり資産の1%(年率、税抜)で、最低手数料は100円(税抜)
  • ただし、2020年4月24日まではキャンペーンにより、運用手数料は無料となる

現在日本のフィンテック業界では、高齢者より所得や貯蓄が少ないとされる若者向けの低額な投資商品のリリースが続いている。2019年に入ってからは、おつり投資の「トラノコ」がセブン銀行から新たに20億円を調達したり、LINEやFOLIOより先行してロボアドバイザー投資を展開する「THEO(テオ)」も手数料の実質値引きに踏み切った。

LINEとFOLIOの担当者

写真左からLINEの大田雄介氏と、FOLIOの甲斐真一郎CEO。

そんな激化する少額投資商品の中でも、今回のLINEとFOLIOのワンコイン投資は、「既存の少額投資商品が持っていたハードルを極力減らすよう設計されている」と甲斐氏は語る。

「おつり投資系やロボアドバイザー系のサービスと比較しても手数料はかなり安く、かなり少額から始められるので、誰にとっても手軽。

さらに、LINE Payと接続している点も大きな特徴。残高さえあれば自動で入金されるので、煩雑な操作も必要ない」(甲斐氏)

手数料や入金に関するユーザー体験もさることながら、既存の少額投資系サービスとは違って、積み立てする金額・頻度は自分で設定するものの、運用プランの選択が用意されていない点も特徴的だ。このような仕様は、2018年10月からサービスを開始したLINEスマート投資の反響を受けて設計したものだと、大田氏は明かす。

「半年間サービスを続けてきて、テーマ投資に対してたくさんの反響をもらった。その中でも多かった声は“もっと金額のハードルを下げて欲しい”というものだった。

そこで、3月には従来の10万円からのテーマ投資ではなく、1万円から始められる“ミニテーマ”をFOLIOと用意した。ミニテーマについても好評だが、今回はもっとハードルを下げることにした」(大田氏)

自らの身を削るのが、ネット時代の戦い方

LINE決算資料

LINEの「2019年12月期 第1四半期決算説明会 プレゼンテーション資料」より、日本国内の最新の月間アクティブユーザーは約8000万人。

出典:LINE

LINEは現在、約8000万人の月間アクティブユーザーを持ち、幅広い年齢や性別のユーザーにリーチできる存在だ。そして、ブランドそのものも若者や女性といった、いままで“投資や積立など金融に関心のなかった層”の支持を得ている。

実際、甲斐氏によると、FOLIO単体で運営していたときとLINEスマート投資を始めたときで比べると「20〜30代の(新規)流入は増えた」。また、大田氏によると、LINEスマート投資のユーザーは「圧倒的に女性が多い」と話している。

甲斐氏

破格のキャンペーンなどの理由について語る甲斐氏。

しかし、前述のとおりそのほとんどは投資初心者で、それゆえ投資金額は少額が中心となり、自然とビジネスの規模も小さくなる。そうした状況で、1年間限定とはいえワンコイン投資から「手数料」もなくした。

なぜ、わざわざ“身を削るような”施策を実施するのかを聞くと、甲斐氏は「(ユーザーの)成功体験を作りたいから」と答えた。

「(今回のワンコイン投資は)積み立てていって老後の資金を貯めていけるようなサービスになればいいと思っている。そこに成功体験はとても必要だ。

例えば、投資初心者の方がワンコイン投資を始めてみて、毎月(手数料として)が発生して、仮に5万円積み立てたのに、4000円ぐらい引かれていたら、貯金するより減ってしまっている。そんなサービスは普通使いたくないし、解約する。

やはり、長期投資であればあるほど、最初の成功体験は重要。人は儲かっていれば続けるし、勉強もし始める。成功体験と勉強というポジティブなスパイラルが生み出されるのが、始まりのこの1年間だと思っている」(甲斐氏)

スマート投資の積立額

ワンコイン投資の積立額の表示。

また、甲斐氏はワンコイン投資に対して「(短期的な)ビジネスは全く考えていない」と断言する。

自分は“マネタイズと顧客に使ってもらうことの両立はできない”という持論を持っている。

マネタイズを考えると顧客へのリーチは途端に難しくなる。いまはそういう時代じゃない。マネタイズは、多くの人が集まってくれれば何かしら後からできる。LINEだってもともと、フリーミアムのメッセージングサービスとして始まって成長してきた。モバイルインターネットの時代に金融でやるべきことは、こういうことだと思う」(甲斐氏)

LINEにとっても将来への投資か

LINEとFOLIOの担当者

LINEスマート投資は、投資初心者の心をつかめるか。

甲斐氏の話を聞くと、LINEがとくにリーチできている若い投資初心者のユーザーを抱えることは、“投資人口”を増やし市場を大きくしていくために必要なことだと納得できる。

さらに、LINEには今後、野村ホールディングスとの「LINE証券」の立ち上げや、みずほフィナンシャルグループとの銀行業「LINE Bank構想」も控えている。ワンコイン投資やテーマ投資で成長したユーザーの受け皿も粛々と準備中というわけだ。

「積み立てる楽しさを感じられるよう、さらに成長させていきたい」(甲斐氏)

「ハードルの高い既存の証券サービスと違う、“普通”と思ってもらえるようなサービスにしたい」(大田氏)

LINEスマート投資自体の将来像について、二人はそう語った。

(文、撮影・小林優多郎)

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