月による土星の星食。望遠鏡に装着されたスマートフォンで3月29日、南アフリカで撮影された。
Copyright of Grant Petersen
- 惑星と月がが並んで「接触」する天体イベントは、コンジャンクションと呼ばれる。
- 2019年3月、月が土星を隠した時(土星食)、南アフリカの天体写真家グラント・ピーターセン氏は万全の準備を整えていた。
- ピーターセン氏は、望遠鏡とスマートフォンを使って土星と月のコンジャンクションの素晴らしい写真を撮るために綿密な計画を練っていた。
3月29日、土星と月が完璧に並び、夜空で接触しているかのように見えた。
比較的ありふれてはいるが、見過ごされがちなこの現象は、コンジャンクションと呼ばれる。幸運なことに、天体写真家のグラント・ピーターセン(Grant Petersen)氏が望遠鏡に取り付けたスマートフォンでコンジャンクションを撮影することに成功した。
ピーターセン氏は南アフリカ・ヨハネスブルグでこの素晴らしい写真を撮影し、ツイッターに投稿した。
「すごいものが撮れた」と同氏はツイッターに投稿した写真にコメントを添えた。さらに「笑いが止まらない。すっかり“天文ハイ”」と続けた。
写真は、実際には複数の写真を組み合わせたもので、夜明け前に月の背後に隠れる直前の土星の姿を捉えている。
南アフリカの天体写真家、グラント・ピーターセン氏は、望遠鏡にスマートフォンを装着し、夜空の克明な写真を撮影する。
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多くの天体写真家と同様に、ピーターセン氏も自分のロケーションから観測可能な「次の大きな天体イベント」を常に探している。彗星や小惑星の通過や国際宇宙ステーションの移動といった現象だ。
次の天体イベントを確認するために、同氏はさまざまな天文アプリやダイアリーを使っている。土星と月のコンジャンクションについては1月から撮影計画を練った。
「イベントが始まるまで不安と興奮でいっぱいだった」とピーターセン氏はBusiness Insiderに語った ── コンジャンクションの前の晩までヨハネスブルグには雨が降っていたから。
だがコンジャンクションが始まる頃にはぐずついていた天気は回復し、きらめく夜空が現れた。
「こういう時にすべてが計画通りに進み、天候不良や装置の故障、あるいはヒューマンエラーといった問題が回避できると、素晴らしい達成感を感じる」と同氏は語った。
同氏はコンジャンクションの約2時間前の朝4時に起き、装置の準備とテストを行った。装置は8インチの「ドブソニアン」望遠鏡(比較的安価だが大型で強力な望遠鏡)、ギャラクシーS8、S8をレンズに装着するアダプター、接眼レンズからなる。
土星が月に接近すると、ピーターセン氏は1秒あたり60フレームで撮影を行った。その後、スタッキングと呼ばれる技術で画像を処理。複数の低画質画像を合成し、より明るく、クリアな写真にした。そして同氏は一番いい写真をツイッターに投稿した。
「クリスマスの子どものような気分だった」と同氏。
「アポロのミッションで撮影された地球の出(Earthrise)を思い出すというコメントをもらった」
同氏は下の写真も撮影した。地球から9億5000万マイル(約15億3000万キロメートル)離れた土星が、いかに小さく見えるかが分かる。土星は月の直径よりもずっと小さく見える。実際は月の方が小さいのだが。
夜空では、月はあなたが両腕を広げたような大きさとすれば、土星はあなたの人差し指の先くらいの大きさしかない。
月による土星の星食
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ピーターセン氏によると、次に狙う大きな天体イベントは、11月11日の水星の太陽面通過。
「今から本当に待ち遠しい」
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)