株価は上がったり下がったりを繰り返すが、長い目で見れば全体として値上がりが期待できる。
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前回、「株式というものは、長期では値上がりが期待できる」と述べた。
もちろんこれは一般論で、個別企業ごとに業績や株価は異なる動きをする。最悪の場合、事業に失敗して倒産するケースもあるので、初心者には個別企業の株式よりも「投資信託」をお勧めしたい。
多くの企業に幅広く投資→リスク低下
個別企業ごとに株価は異なる動きをする。最悪の場合、事業に失敗して倒産するケースもある。投資信託を通じて多くの企業に幅広く投資すれば、いずれかの投資先企業の株価が急落しても、その影響は薄まる。
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投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券、不動産などに投資・運用する商品のことだ。投信のなかでもポピュラーなのが、株式に投資するタイプ。ふつうは多くの企業に幅広く投資しているため、仮にいずれかの投資先企業の株価が急落しても、その影響が薄まる。
たとえば、日経平均連動型投信に投資することは、日経平均株価を構成する225社に分散投資するのとほぼ同じだ。投信の値動きが日経平均に連動するためで、実際の運用成績も日経平均とほぼぴったり一致している。
パッシブ型とアクティブ型、それぞれに特徴
投信は大きく分けて「パッシブ型」「アクティブ型」の2種類。それぞれにメリット、デメリットがある。
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投信には大きく分けて2種類ある。一つは日経平均や、アメリカの代表的な企業の株価から算出される「NYダウ」などよく知られた株価指数に連動するように運用する投信で、「パッシブ型」と呼ばれる。もう一つは、日経平均などを上回る運用成績を目指す「アクティブ型」だ。
【図表1】
それぞれに特徴(メリット、デメリット)がある。パッシブ型の主な特徴は「分かりやすさ」と「コストが低い」ことだ。
たとえば、日経平均連動型の投信は日経平均とほぼ同じ値動きをするので、自分の投資資金がどのように運用されているのかわかりやすい。日経平均やNYダウはNHKニュースで1日に何度も報じられるし、新聞やインターネットで簡単に価格を調べることができる点もメリットだ。
一方、アクティブ型はアナリストの調査・分析などをもとにプロの運用者(ファンドマネージャー)が有望な投資先を選ぶ。成功すればパッシブ型よりも高い利回りを得られるが、アテが外れてパッシブ型に負けてしまうこともある。
また、投信には主に2種類の費用がかかる。購入時に支払う「販売手数料」と、投信を保有している間ずっと負担する「信託報酬」で、一般的にパッシブ型の方が両方とも安い。
以上をまとめると、パッシブ型はアナリスト等の人件費が不要な分、投資家が負担するコストも安いが、運用成果は良くも悪くも株価指数並みになる。アクティブ型は成功すれば株価指数よりも高い運用成果を得られるが、相対的に高いコストを支払う必要がある。
2種類のコスパをチェックしよう
投信を選ぶ時には、「リスクとリターンの関係」を始めとする「コスパ」をしっかりチェックしよう。
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いざ投信を選ぶとなると誰でも迷うものだが、そこでチェックして欲しいのが投信の成果指標(KPI:Key Performance Indicator)だ。
証券会社や銀行など投信販売会社の多くは、取り扱う主な投信について複数のKPIをウェブページ上の商品説明などで開示し始めた。中でも重視して欲しいのは「(1)コストとリターンの関係」、「(2)リスクとリターンの関係」の2つのKPIだ。
(1)は投資家が支払った費用(販売手数料、信託報酬など)に対する投信のリターン(値上がり益や分配金の合計額)の大きさを、(2)は投信の値動きの大きさ(変動率)に対するリターンの大きさを表している。(1)は経済的負担に対するリターン、(2)は精神的負担に対するリターンなので、いずれも「負担に対する見返りの度合い」、つまり“コスパ”だ。
まず「(1)コストとリターンの関係」で最も大事なポイントは、コストが高いからといってリターンも高いとは限らないことだ。【図表2】の左の図のとおり、年間コストが2%超の投信55本のうち45本はリターンが年率10%未満だった。コストが1%未満の低コスト投信よりリターンが低かったものも少なくない。
【図表2】
一方、「(2)リスクとリターンの関係」では、高リスク投信ほどリターンも高い傾向があり、いわゆる“ハイリスク・ハイリターン”の関係がみられる。もちろん過去のリターンが高いからといって、将来も高リターンとは限らない。一方、リスクについては継続性がある。
投信を選ぶ際は(1)よりも(2)のKPIを重視するとよいだろう。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
井出真吾:東京工業大学卒業後、日本生命保険に入社。1999年からニッセイ基礎研究所に出向、2015年から現職。