「長い目で見れば株価は上がっていく」。あなたがそう思うなら、今からでも積立投資を始めるといい。
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このシリーズでは「株は長期的には上がるもの」「積立投資で時間を味方につけよう」「投信選びはコスパで」などの話をしてきた。
最後に、「いつ、どうやって始めるのが良いか」を考えてみよう。
スタートが遅いと利益に大差
積立投資はスタートが早いほど有利だ、と言われる。
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まず、始める時期。今後は長期的に株価が上昇基調であることを前提条件として、20年間でシミュレーションしてみた。株価は【図表1】のように上げ下げを繰り返し、20年間の平均騰落率は年率5%とした。
Xさんは毎月1万円ずつ20年間、Yさんは10年後から毎月2万円ずつ10年間、積立投資をしたと仮定する。累計の投資額はどちらも240万円で同じだが、20年後の時価評価額はXさんが462万円、Yさんは361万円となった。実に101万円の差だ。
【図表1】
株価の動きは、前半10年間は上げ下げを繰り返しながらほぼ横ばい、Yさんが投資を始めた後半10年間に大きく値上がりしているので、「10年後に始めれば十分では?」と思うかもしれない。ところが20年後の資産額はXさんのほうが100万円以上多い。
なぜ、これほどの違いになったのだろうか?もちろんシミュレーションの前提として「長期的に上昇する」と仮定していることもあるが、早くから積立投資を始めた威力が現れている。
Yさんが投資を始める時点(10年後)を考えてみよう。Xさんは10年後の時点で資産額が128万円ある。それまでの累計元本は120万円なので、投資で増えた金額は8万円に過ぎない。
しかし、Yさんが投資を始めるとき、Xさんは128万円を一度に投資するのと全く同じ意味になる。そのため、10~20年後の上昇相場の恩恵がYさんより大きくなったのだ。
このシミュレーション結果からは、利息が利息を生む“複利効果”をより大きく得る意味でも、早めに始めた方が有利と言えそうだ。
ただし、それはあくまでも長期的な上昇相場を想定する場合だ。「株価は下落する」と考える人は投資しない方がいい。
まず職場の年金制度を確認しよう
いま銀行預金にほとんど利息はつかない。「元本割れしない」ことが遠い将来の自分にとって本当に安心安全か?一度じっくり考えてみるのもよいのでは。
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積立投資の方法はいくつかある。銀行や証券会社の「積立投資サービス」のほかに、税制上の優遇措置を受けられる仕組みもある。利用できる人は使うべきだ。
それぞれの仕組みについては詳しく解説した本がたくさん出ているので、ここでは各制度の概要を説明しよう【図表2】。
【図表2】
まず、会社員の人は自分の会社に「確定拠出年金制度」があるか確認しよう。
これは退職時に受け取る年金額の一部を前倒しで受け取り、従業員自身が運用方法を選ぶものだ。定期預金など「元本確保型」のほか、投資信託など元本割れのリスクがある運用先を選ぶことができ、平均6割が元本確保型で運用されていると言われる。
このシリーズの初回で述べたように、定期預金では「物価上昇に負ける」可能性もある。それでも平均6割が定期預金のような「超低金利の運用先」を選択しているのは、「よく分からないから、とりあえず定期預金にしておこう」という人が多いからだろう。
「元本割れしない」ことが遠い将来の自分にとって本当に安心安全か、読者は真剣に考えてみてほしい。
投資しながら税金も減らせる
フリーランスや自営業といった「職場の年金」がない人たちにも有利な制度がある。「個人型確定拠出年金制度(通称iDeCo;イデコ)」だ。
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公務員やフリーランス、自営業の人などは「個人型確定拠出年金制度(通称iDeCo;イデコ)」が利用可能だ。
限度額の範囲内なら掛け金の全額を、税金がかかる「所得」から差し引くことができるので、投資(貯蓄)しながら節税もできる。運用益が非課税であることや、将来の年金受取時も税制優遇があるのは大きな魅力だろう。
特に「職場の年金」がないフリーランスや自営業の人はあわせて検討してみてはいかがだろうか。
ただし、確定拠出年金は個人型であっても原則として60歳になるまで引き出すことができない。金融機関によって口座管理費用が異なるなど注意点もあるので、始める前に金融機関などのホームページや関連書籍で理解を深めてほしい。
2018年に始まった「つみたてNISA」は20歳以上なら誰でも利用でき、毎月100円から積立できる金融機関もある。学生のうちから少額でスタートしておき、社会人になって余裕ができたら増額するのもオススメだ。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
井出真吾:東京工業大学卒業後、日本生命保険に入社。1999年からニッセイ基礎研究所に出向、2015年から現職。