“電動小車”が流行る? EV狂想曲の上海モーターショーで垣間見えたこと

上海モーターショー

中国のメーカー江鈴汽車が発表したピックアップトラック「域虎9」。

上海モーターショー2019

世界最大規模の上海モーターショーを華やかに彩るコンパニオン。

4月に開催された世界最大級の自動車見本市の1つ「上海モーターショー」。世界最大の自動車市場・中国の展示会であるため、いまや世界中の自動車メーカーが注視するショーになった。

現地では、「5G」のネットワークや自動運転などの最新技術、ピックアップトラックや中国ならではのきらびやかな高級車など独特の雰囲気があった。

記者が個人的に印象的だったのは、電気自動車(EV)の展示だ。1日かけて端から端まで歩いても全てを見回るのが難しい巨大会場のあちらこちらで、各社がこぞってEVを並べているなか、いくつかの中国メーカーが、「電動小車」つまり小型EVを出展していた。

上海モーターショー

連日、大勢の来場客が訪れた上海モーターショー。

減速しても超巨大な中国市場

上海モーターショー

各社こぞってEVを発表。写真は東風汽車とルノーの合弁「東風雷諾」のEV。

世界最大の自動車市場・中国がどの程度の大きさか、即答できる人はあまりいないかもしれない。

ジェトロ(JETRO=日本貿易振興機構)が2018年11月にまとめた「2017年 主要国の自動車生産・販売動向」によると、中国は国別新車登録・販売台数は約2912万台。2位・アメリカは約1758万台、3位・日本は524万台で、他を大きく引き離すまさに巨大市場。実は、中国は生産台数も1位だ。2018年から市場が鈍化しているが、それでも大きいのは変わらない。

ジェトロ上海事務所の高橋大輔氏は、中国の自動車市場をこう見る。

「全体の乗用車台数は2018年にマイナス成長にはなりましたが、高級車はプラス成長でした。2019年に入ってもまだアウディ、ベンツ、レクサスなども前年比プラスで推移しているので、まだ売れている感じがします。高級車を買うレベルの人はまだ買っているという印象があります」

EVの存在感が大きかった上海モーターショーでは、中国国内メーカーはもちろん、トヨタやホンダが新型EVを世界初公開したり、独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズといった欧米メーカーも、中国市場向けにEVを発表していた。

上海モーターショー

トヨタは中国市場向けの初EV「IZOA EV」(写真)などを、上海モーターショーで初披露。

なぜ? 中国メーカーが次々と小型EVを発表

上海モーターショー

上海モーターショーでは一部中国メーカーが小型EVを出展していた。写真は長城汽車の「欧拉R1 女神版」。

冒頭の小型EVは、もちろんメインの展示ではない。ブースの主体としては中国で人気のあるSUV(多目的スポーツ車)やピックアップトラック、高級車のEVが圧倒的に目立っている。けれども、大きく立派なものを好みがちな中国市場向け展示のなかで、「小さいEV」は筆者の目には妙に目立って見えた。

いずれも中国メーカーのブースで、確認した範囲で5社が置いていた。出展企業1000社を超える中で見れば少ないが、5社中4社は大手中国メーカーまたは傘下企業が出している。

大きさでいうと、日本の軽自動車を少し小さくした感じ。室内は大人4人が詰めて乗れるような設計になっている。

ブースにいた担当者たちに話を聞くと、大まかには、若者層、特に女性をターゲットにしていると話していた。手ごろな価格に抑えてあり、いずれも2018年末から2019年末にかけて、既に発売、または発売を予定する機種だという。

小型EVに対する関心が国内メーカーの中で高まっているのか? ブースにいた担当者に聞くと、こうした小さいサイズの車両の出展は、比較的最近の動きのようだ。価格には、5万元台後半(約100万円)から8万元(約130万円)まで。EVと考えれば、安い。

中国の大手メーカー長城汽車は、2018年12月に発表した小型EV「欧拉R1」の女性向けを意識した「欧拉R1 女神版」を展示していた。可愛らしい形状と色で、長城汽車のブースの端に置かれていたが、多くの人が足を止めていた。

「自動車に乗るのが好きな中国の女性が増えてきていて、また、小さくて可愛い車のニーズが高まってきました。それで開発し、2018年12月に市場に発表しました」(長城汽車の担当者)

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「長安汽車」傘下の欧尚汽車が年末までに発売予定の小型EV「欧尚E01」。

中国・重慶に本社を置くメーカー「長安汽車」傘下の欧尚汽車は、小型EV「欧尚E01」を公開していた。年末までに発売開始する予定だという。

「まず、国が環境問題で電動車に乗るのを推薦しているという背景があります。また、ちょっと街に出かける際、仕事の際など、小型車だと気軽に出かけやすい。これは運転もしやすくしてあります」(欧尚汽車の担当者)

他にも、EV大手のBYD、天津清源電動車両、北京汽車グループの北汽新能源汽車といった中国メーカーが小型EVを展示していた。

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天津清源電動車両の開発した小型EV「清源小尊」。

中国電動汽車充電基礎設施促進聯盟が発表した「2018-2019年度的充電基礎設施年度発展報告」によると、2018年12月末時点で既に国内には公共の充電設備器が33.1万個、個人所有の充電設備器が47.7万個と世界トップの設置数だという。普及に必須の充電インフラも、他国より先んじているとする。

中国の自動車市場の勢いは、一時に比べて減速しているとはいえ、数字だけ見ても巨大すぎる市場。まだまだ各社が力を入れていくのは間違いなさそうだ。

上海モーターショー

ひと昔前はビキニ姿など過激な衣装で車より注目を浴びていたが、5年ほど前に政府が厳しく言及したことで一変。今回の上海モーターショーでは、シンプルなドレスで着飾ったモデルや、男女入り混じってダンスを披露するなど展示スタイルも変わってきている。

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斬新なデザインのものも多かった。

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ファーウェイは上海モーターショーに初出展。場所は会場奥と良くはなかったが注目を集めていた。

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自動運転や無人荷物運搬車の出展も目立った。

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会社社長や富裕層向けの高級バンでは、内装が中国風のものも。

(文、写真・大塚淳史)

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