日本では3月30日に発売された第5世代目となる「iPad mini」。その実力はいかに。
「軽い」「LTEが使える」「ペンが使える」
突然だが、この3つがテック系記者である筆者が、モバイルPCに求める3大要素だ。そして、この3つはさまざまな働き方が求められる現代においては、記者に限らずビジネスパーソンなら誰しも重要視すべき要素だろう。
先日、アップルから発売された第5世代「iPad mini」を購入した。筆者はもともと紙媒体の編集部にいたため「12.9インチ iPad Pro(第2世代)」などを使っていたが、さかのぼれば初代iPad miniも購入していた。つまり、個人所有するものとしては実に約6年ぶりのminiということになる。
詳しいスペックは発表時にまとめた記事などを見て欲しいが、購入してから約4週間使ってみた感想としては「片手で持てるサイズとは思えない万能感・実用度がある」だ。
まずは、筆者が実際に使ってみて気に入った点・気づいてみた点を挙げてみよう。
幅は134.8mm。大きめの手の人であれば片手でもしっかりと握れる。
狭額縁がウリの「iPad Pro」もカッコイイが、個人的にはこのように持ったとき指で画面が隠れないので額縁はあってもいい。
画面サイズは7.9インチ。縦横比は4対3で「紙の比率」に近いので電子書籍も読みやすい。
標準の「Apple Books」でも、アマゾンの「Kindle」でも好きな電子書籍ストアのアプリを入れればいい(写真は夏目漱石著「坊っちゃん」)。
スマホでは見づらいカレンダーの1週間表示もラクに読める。
写真のアプリはグーグルの「カレンダー」アプリ。
Wi-Fi + Cellularモデルであれば、常に最新の情報が見られる。
Macを持っていて、同じApple IDを登録しておけば、テザリングもMac側からオンにして接続できる。
Wi-Fi + Cellularモデルのもう1つの長所は、位置情報も正確な点だ。
iPad mini(第5世代)は「Assisted GPS」「GLONASS」「携帯電話ネットワーク」の3要素で位置を測定する。
背面カメラは8メガピクセル。出っ張りがないのが◎。
レンズの明るさを示すF値は2.4。最新のiPhoneやiPad Proと比べると決して高性能とは言えない。
iPad Proの画質の差は比べると明瞭だ。とくにiPad mini(写真左)は夜間のブロックノイズが目立つ。
写真左が第5世代iPad miniで撮影した写真、右が11インチiPad Proで撮影した写真。
AR(拡張現実)アプリでは、カメラの画質は気にならなかった。
iPad miniはminiシリーズでは唯一、アップルのARプラットフォーム「ARKit 2」に対応。本体が軽いので長い時間使っていても疲れにくい(写真は植物について学べる120円の「Plantale」アプリ)。
Apple Pencilに対応。iPad本体が軽いので、片手で持ちながらペンで書くのもラク。
この使い方が満足にできるデバイスは、個人的には今まで「Galaxy Note」シリーズしかなかった(写真はEvernoteの無料手書きアプリ「Penultimate」)。
ただし、Apple Pencilを充電する際の見た目は、かなり不格好だ。
裏を返せば、これが便利なシチュエーションもある。Apple Pencil(第1世代)は、付属している「Lightningアダプタ」を装着すればiPad本体がなくても充電できる。Apple Pencil(第2世代)ではiPad Pro本体がないと充電できない。
純正のキーボードカバーはないが、筆者はBluetoothキーボードを接続して使っている。
アップル純正のキーボードだとキーストローク(キーを押したときの深さ)が浅いと感じるときもあったが、汎用のBluetoothキーボードなら好みのキーストロークのものが選べる(遅延も気になるほどはない)。キーボード側の電池残量も気にしなくてはいけないのは、やや面倒だが。
第5世代目にしてiPad miniは“道具”になった
このサイズ感で、高性能なデジタルペン、そしてそのペンを使うためのアプリがそろっているタブレットはなかなか存在しない。
第5世代iPad miniの発表当初、第4世代までのiPad miniと見比べると外観はほとんど変わらず、ただ単にCPUを最新のものにしただけの「マイナーバージョンアップ感」が否めなかった。
しかし、使ってみて第5世代iPad miniは第4世代前までと比べて「道具」として万能さが増したように思える。
これまでのminiは、どちらかと言えばコンテンツを消費するためのデバイスだった。手頃なサイズ感でウェブや電子書籍、動画などを観るだけのものだ。
一方で、第5世代iPad miniでは、Apple PencilやARKit 2に対応した。これによって「コンテンツ消費に最適」という特徴に加え、クリエイティブな作業や体験が可能になった。
筆者が愛用するメモアプリ「Penultimate」は、ノート作成時に背景を選べる。7.9インチの画面にこのような背景が広がるとかなり「文房具的」な見た目と体験になる。
今回のレビューで触れた機能は、どれも「iPad miniじゃないとできない」というものはない。カメラも処理性能も現行の「iPad Pro」シリーズの方が性能は上。より携帯性を重視するなら、iPhoneなどのスマートフォンでも快適に使える。
けれど、これらの機能を「8インチ前後の画面サイズ」で「使いたいアプリがそろっているデバイス」というものは、iPad mini以外はあまり存在しない。しかも、本体の価格も4万5800円(税別、64GB・Wi-Fiモデル)〜7万7800円(税別、256GB・Wi-Fi + Cellularモデル)と、アップル製品の中では買いやすい部類だ。
軽量、だけど少し画面が大きめのモバイルデバイスが欲しい。手書きもカメラもコンテンツの閲覧も1台で済ませたい。第5世代iPad miniそんな要望にピッタリと合うデバイスだと言える。
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(文、撮影・小林優多郎)