「パイロットのスキル不足」がエアバス販売に有利に? ボーイング737MAX墜落事故の影響

ボーイング737MAX9(予想図)。

ボーイング737MAX9(予想図)。

Boeing

  • 2件続いたボーイング737MAXの墜落事故では、墜落前にパイロットはシステムを解除できなかった。
  • それでも航空会社は、パイロットが手動でコントロールできる領域を拡大することを好まないだろう。理由は「パイロットのスキル低下」。
  • アナリストのリチャード・サフラン(Richard Safran)氏によると、特に発展途上国では「パイロットのスキルと訓練はアメリカの水準に達していない可能性がある」。
  • 2人の専門家は、現代の民間航空機は経験の少ないパイロットでも飛ばせるよう設計されているとBusiness Insiderに語った。
  • こうした傾向は、ボーイング機よりも自動化が進んだフライトコントロール・システムを備えるエアバスA320neoのセールスに追い風となる可能性がある。

連続して起きた2件のボーイング737MAXの墜落事故。専門家は今のところ、ボーイングのフライトシステムの行き過ぎた自動化が原因と見ている。システムは機首が上がり過ぎていると誤って判断、機首を下げたことをパイロットが手動で制御することができなかった。

こうした状況を受けて、航空会社は今後、パイロットが直接コントロールできる領域が大きい航空機の採用を増やすだろうと考える人がいるかもしれない。だが今回のケースでは、その予想は間違っているだろうというのがバッキンガム・リサーチ・グループのアナリスト、リチャード・サフラン(Richard Safran)氏の見解だ。

サフラン氏が顧客に送った文書によると、エアバスは、ボーイング737MAXの競合機であるA320neoのオートパイロット・システムによって、まさに優位に立ったと考えている。A320neoのオートパイロット・システムは、パイロットに航空機を直接コントロールする領域をむしろ与えていないことがその理由だ。

フライトコントロール・システムの強化はパイロットの技能低下に対処するため

「エアバスは、同社がフライトコントロール・システムにより多くの権限をもたせる理由は、パイロットのスキル低下に対処するためと語った」とサフラン氏は顧客宛ての文書に記した。

「ボーイング737MAXがもたらす長期的な影響は、発展途上国の顧客が、A320neo、および同機のフライトコントロール・システムの方がより自分たちのニーズに適していると見なすことにあるだろう。これは、パイロットのスキルと訓練が、アメリカなどの先進国の水準に達していない可能性があることを踏まえてのこと。その結果、ナローボディー機の市場シェアはボーイングからエアバスへとより移行する可能性がある」とBusiness Insiderが入手した文書のコピーには記されていた。

エアバスA320neo

エアバスA320neo。

Airbus

これは直観に反しているように思える。なぜなら、189名、157名の犠牲者を出したライオンエアとエチオピア航空の墜落事故では、オートパイロット・システムは機首が上がり過ぎていると誤って判断して機首を下げ、墜落した。パイロットがオートパイロットを解除できなかったことは、手動コントロールの優先度がより高ければ、事故は起きなかった可能性があることを示唆している。

「ボーイングとエアバスのフライトコントロール・システムの違いは、エアバスの方が航空機の機能に関してオートパイロットにより権限を与えていること。ボーイングのシステムは、パイロットにより信頼を置き、パイロットの権限が大きい」とサフラン氏は記した。

規則や規制は厳格。機種やメーカーによる違いはない

我々はエアバスに対し、発展途上国の航空会社がスキルの低いパイロットを使っていることを考慮して、同社が航空機を設計しているという話は本当なのか否かを聞いた。

「すべての航空機は、オートパイロット・システムやフライトコントロール・システムなどを一切使用せずに、手動で飛行させることが可能。したがってパイロットの飛行技能は、安全第一のカルチャーとともに、訓練プロセスの中核的価値となっている。航空機の種類や飛行する空域は関係ない」とエアバスの広報担当者はBusiness Insiderに語った。

ボーイング737MAXのコックピット。

ボーイング737MAXのコックピット。

Boeing

「パイロットのライセンスは、各国の航空当局によって認可される。その基準は、例えば、アメリカのFAA(連邦航空局)やヨーロッパのEASA(欧州航空安全庁)など、国際的に認められた基準をもとにしている」と同社はFAAとEASAを引き合いに出して述べた。

「パイロットの訓練と型式限定(操縦できる機種)を定める規則や規制は厳格。機種やメーカーによる違いはない」

我々はボーイングにも何度か問い合わせをしたが、回答は得られなかった。

情報不足と訓練不足が悲劇的な事故を招いたことは明らか

民間航空機が、パイロットのスキル低下を補う方向で設計されているという考え方は、一般の乗客に不安を与えるような内容。我々は2人の専門家にこれが事実かどうかを聞いた。

2人の回答はいずれも、全面的ではないがイエスだった。

「明らかに、情報不足とパイロットの訓練不足がこれらの悲劇的な事故において大きく作用した」と国家運輸安全委員会(NTSB)の元調査官で、FAAの科学者だったアラン・ディール(Alan Diehl)氏は述べた。

そして、訓練不足に加えて、ボーイングのオートパイロット・システムの誤作動と、パイロットがシステムを容易に解除できなかったことが事態を悪化させた。ボーイングの古いモデルでは、パイロットは操縦桿を握ればシステムを解除できた。737MAXは違った。

エチオピア航空のボーイング737MAX8。

エチオピア航空のボーイング737MAX8。

Wikimedia Commons/LLBG Spotter/ CC BY-SA 2.0,

さらにディール氏は次のように述べた。

「2件の墜落事故は、737MAXの市場投入を急ぐ過程で生まれた、一連の設計上のミスを明らかにした。おそらく最も重大なミスは、極めて強力な自動失速防止システム(MCAS:Maneuvering Characteristics Augmentation System)の情報源として、迎角センサーを1つしか使用していなかったこと。コンピューターは“命令を実行するだけ”で、MCASに誤った情報が送られていることをパイロットが認識していなかったことが惨事につながった。機首下げを起こしている原因不明のトラブルをクルーが解決しようとしている間、コックピットに警報音が鳴り響いていたことも災いした」

多くの国では経験の少ないパイロットが操縦している

元ボーイングのセーフティー・エンジニアで、航空安全情報サイト「エアセーフ・ドット・コム(AirSafe.com)」を立ち上げたトッド・カーティス(Todd Curtis)氏は次のように述べた。

「多くの国では、規制当局はパイロットの総飛行時間がアメリカの規定よりもはるかに少なくても、航空会社のパイロットとしてのキャリアをスタートさせることを許していることは事実。一般的に、経験とパイロットの能力は比例する」

「エアバスが、スキルの低下に対処できるように設計していることは事実か? 私には、そうとは言えない」とカーティス氏。

「私に言えることは、ボーイング、エアバス、その他のメーカーも、航空機の設計を進化させ続けているということ。そうした進化の一環として、航空機および航空管制当局のシステムや手順は、パイロットが航空機を直接操作することが20〜30年前に比べて少なくなるようになっている」

パイロットがより簡単にオートパイロットに介入できるようになっていれば、ライオンエアとエチオピア航空の事故は防げたかもしれない。その一方で、より自動化が進むことで、空の旅が以前よりも安全になっている事実もある。

「自動化の全体的な影響が安全に大きく貢献していることは明らか。そして、737MAXの問題は修正可能なもの。残念ながら、“飛ばしてみて、問題があれば修正し、また飛ばす”ということが常に航空業界の現実」とディール氏は語った。

[原文(BI Prime):The Boeing 737 Max crashes show that 'deteriorating pilot skills' may push airlines to favor Airbus

(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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