SDGsには、17のゴールが設定されている。
出典:国際連合本部ウェブサイト
持続可能な世界の実現を目指し、国連が17のゴールを定めたSDGs(Sustainable Development Goals= 持続可能な開発目標)。
2015年に始まった取り組みだが、日本での認知度は低い。SDGsの取り組みについて知っている人はいまのところ、5人に1人にも満たない。
こうした中で、PRに一役買っているのが、吉本興業やサンリオといった日本企業だ。2030年が期限とされるゴールの達成には、世界的な認知が必要だからだ。
国連広報局のアウトリーチ部長を務めるマーヘル・ナセル氏はBusiness Insider Japanの取材に対して、「世界的なムーブメントを促進するには、こうした組織の才能が必要だ」と語った。
17のゴールと169のターゲットとは
国連本部のアウトリーチ部長を務めるマーヘル・ナセル氏
撮影:小島寛明
SDGsには、17のゴール、169のターゲットが設定されている。17のゴールは、以下の通りだ。
- 貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー
- 水・衛生、エネルギー、成長・雇用、イノベーション、不平等
- 都市、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源
- 平和、実施手段
各目標の実現には、世界中の企業や、個人の取り組みが必要とされる。
例えば、海洋資源には「海の豊かさを守ろう」との目標が設定されているが、スーパーやコンビニに買い物に行ったときにプラスチックの袋を受け取らない、といった一人ひとりの生活の中での取り組みが、ゴールの実現につながるという考え方だ。
東京・神奈川の認知度は19%
外務省国際協力局の甲木浩太郎・地球規模課題総括課長。SDGsの推進などを担当している。
撮影:小島寛明
朝日新聞社が2019年2月中旬、東京・神奈川に住む3000人を対象に、「SDGsという言葉を聞いたことがあるか」と尋ねたところ、「ある」と答えたのは約19%。2018年7月の調査と比べて5ポイント上昇したという。
外務省の甲木浩太郎・地球規模課題総括課長は「非常にリアルな数字だと受け止めている。ムーブメントとしては、企業セクターを中心に広がってきてはいるが、やはり一般については、認知の向上が必要だろう」と話す。
そこで登場するのが、サンリオや吉本興業といった、幅広い人気を集めるキャラクターや芸人を抱える企業だ。
吉本興業は、国連広報センターとともに、SDGsに関する短編動画を公開している。
その1本、「砂漠化」編では、トレンディエンジェルの斎藤司さんと、ガンバレルーヤの2人が喫茶店で話をしている。
齋藤さん:ずっと緑があふれていたこの地球も、いまはどんどん砂漠化が進んでるんだ。
ガンバレルーヤ:斎藤さんの頭が、地球に見えてきました。
「SDGsについて考えはじめた人々」よしもと芸人によるSDGs推進動画、トレンディエンジェル・斎藤×ガンバレルーヤ「砂漠化」編。
出典:国連広報センター(UNIC Tokyo)
ナセル氏は、お笑いはコミュニケーションをとる上でも最良の方法の一つだとみる。
「お笑いの文化は、翻訳するのが難しい。(外国人にとって)スタンダップコメディ(漫談)のジョークの多くを理解するのは難しいだろう。吉本興業のような会社はこうした文化を知っていて、どういう形で伝えればうまく日本人に伝わるのか分かっている」
サンリオも、ハローキティがSDGsについて解説する動画をYouTubeなどで公開している。国際的には機関車トーマスなどともコラボし、動画を制作している。
ハローキティSDGs応援動画 Vol.1「SDGsって知ってる?」。
出典:HELLO KITTY / ハローキティ【Sanrio Official】YouTube公式チャンネル
国連広報センターの根本かおる所長。
撮影:小島寛明
「われわれは、あらゆる年齢層にリーチしようと試みている」とナセル氏。
子どもたちだけでなく、女性への浸透も課題だ。朝日新聞社の調査では、男性の認知度が23%に対して、女性は14%にとどまった。
国連広報センターの根本かおる所長は「SDGsの言葉を知らなくても、生活の中でSDGsにつながるアクションはいろいろやっている人が多い。女性たちに振り返ってもらえるメッセージが大切」と話す。
(文・写真、小島寛明)