ソニー、通期決算で絶好調を維持。大きな変化は2020年以降か

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ソニー

4月26日、ソニーは2018年度の通期決算業績を発表した。非常に好調な決算だった。売上高は、8兆6657億円(前年度比1%増)、営業利益は8942億円(同22%増)。純利益は同87%増の9163億円となった。

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ソニーの2018年度決算。税引き前利益は初めて1兆円を超えた。

増益の背景にあるのは、PlayStation 4(PS4)をはじめとしたコンテンツ事業、そしてイメージセンサーの好調がある。逆にいえば、ソニーの今後は、これらの事業にかかっていることが、改めて浮き彫りとなった。

ネットワークからの収益でゲームは安定成長

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Shutterstock

決算資料をみれば、ソニーの好調をなにが支えているかは明白。稼ぎ頭はPS4だ。ただし正確にいえば、PS4の「エコシステム」であり、ハードウェアではない。

PS4を中心とした「ゲーム&ネットワークサービス」部門の、前年同期比19%増の2兆3109億円。PS4は発売開始から5年半(欧米では2013年11月。日本では14年2月)が経過し、ハードウェアの販売自体はピークを過ぎた。2018年度には販売数量が減少に転じたのだが、それでも、事業全体での売り上げは上昇している。

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ゲーム分野は好調。ハードウェアの販売はピークを過ぎたが、ネットワークサービスの売り上げがそれをカバー。2019年度には次世代機開発コストも計上されている。

理由は、PS4のネットワークサービスである「PlayStation Network(PSN)」からの収益が持続的に成長しているからだ。ハードウェアは行き渡っても、その上でゲームを遊ぶ人がいればPSNの成長は続く。2019年度も売上高は2018年度並み(2兆3000億円)を予定しており、「ハード+ソフト+サービス」という三軸モデルの強みを感じさせる。

ソニーの十時裕樹 専務CFO

ソニーの十時裕樹 専務CFO。

次世代プレイステーションついては、4月末にWIREDが独占インタビューの形でリーク記事を掲載、公式に存在が裏付けられた。2019年度には次世代機の開発費用が計上されている。額は明確にされていないが、ソニーの十時裕樹 専務CFOは記者向けの決算説明会にて、「2018年度と2019年度における、G&NS部門の利益の差は、大半が次世代機の開発コスト」と明言した。ちなみに、両者の差額は約310億円である。

一方、次世代機の立ち上げに関するマーケティング費用は、2019年度にも計上されていない。

いつ計上されるかを明かすと、次世代機の発売がいつかを明言することになるので公表は避けるが、少なくとも、2019年度に大きなマーケティング費の積み増しは予定してない」

と十時CFOは言う。そのため、2019年度(2020年3月末日まで)に次世代プレイステーションが販売されることはない、と予想できる。

2019年から2020年にかけては、ゲーム関連事業での競争激化が予測される。ソニーが他社に対し強みを持っているとすれば、「次世代機はPS4との互換性がある」と明言していることだ。いかにPS4の好調を引き継ぎ、スムーズに次世代機へと世代交代するかが課題になりそうだ。

映画・音楽は「サブスクリプション」で安定収益化

ゲーム同様、映画や音楽などのコンテンツ事業は堅調だ。どちらも「サブスクリプション」ビジネスの影響が色濃く出ている。

音楽はサブスクリプション系サービスからの収益増加、およびEMIの連結小会社化に伴う収益増加が目立つ。EMIの子会社化はそもそも、サブスクリプション系サービスでの収益拡大を目指した「原盤権の確保」という目的によるものだ。2019年度は、EMIの連結小会社化に伴う再評価益がなくなるので、見かけ上大幅減収となるが、売り上げは微増の予定。安定した収益を維持するとみられている。

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音楽部門業績。EMI子会社化の再評価益が目立つものの、安定した経営状態だ。

映画事業は2018年度こそ前年比で減収減益だが、2019年度は9%の増収が見込まれている。映画の興行収入増加に加え、テレビ番組制作での増収が予定されているためだ。テレビ番組とはいうものの、このほとんどは「ネット配信向けのドラマ」であり、サブスクリプション・サービスからのコンテンツ出資を抜きに、映像制作事業は考えられない時代になっていることもわかる。

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映画事業。ヒット作による影響を受けやすい部門だが、ネット配信向け番組の収益拡大を背景に、経営状況は安定している。

スマホ向けセンサーは「2024年まで好調」を維持

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ソニーによるイメージセンサー関連の技術開発ストーリーより。

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ゲームに並ぶ、ソニーの大きな柱は「半導体」。中心はハイエンドスマートフォン向けイメージセンサーだ。

スマートフォン需要が一巡し、スマートフォン向けセンサーそのものの需要も減るのでは……と思われがちだが、ソニーはかなり強気な予想を立てている。2018年度は前年度比でほぼ横ばいだったが、2019年度は売り上げで前年度比13%増の9900億円、利益は横ばい、と予想している。

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半導体事業は、スマホ向けイメージセンサーを中心に好調。スマホ市場停滞とは裏腹に、2019年度は売り上げ増、という強気な予測だ。

スマートフォン需要は減速するのになぜイメージセンサーの売り上げは伸びるのか?

理由は、ハイエンドスマホの多眼化と、イメージセンサーの大型化が進んでいるためだ。そのため、十時CFOは「スマホの台数とは直接比例しない」と話す。ハイエンドスマホの差別化点がカメラに集中しており、そこでは複数の高画素センサーが使われている。結果、ハイエンド向けイメージセンサーを寡占するソニーには需要が集中する……というロジックだ。

「2018年度第4四半期には、工場のキャパシティは若干余裕がある状況だったが、2019年度はフル操業の予定」と十時CFOは言う。場合によっては工場の増築も検討する、としており、当面は需要増が続くと見る。

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イメージセンサーは、スマホ向けハイエンド製品の好調を背景に、2019年度以降も増産の予定。

ただし、スマホ向けの好調がずっと続く、というわけでもない。「2024年には需要がゆるやかになる」(十時CFO)と予測する。業績を維持するには、スマホ向けの需要減をカバーするジャンルが必要だが、自動車向けを含めた新領域での収益増は、まだ見通しが効かない状況だ。

懸念の「Xperia」は視界不良が続く

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4月に国内でも体験会を実施した最新型の「Xperia 1」。前評判は高いが、劣勢からの巻き返しはできるだろうか。

撮影:小林優多郎

ハードウェア事業は、スマートフォンを除くと安定的な事業展開だ。高付加価値モデルへの移行に伴い販売数量の減少はあるものの、収益面ではプラスとなっている。世界的にビジネス状況が厳しいデジタルカメラについても、ミラーレスへの移行に伴ってレンズの収入などが増加しており、2019年度も好調を維持する、としている。他社より先にミラーレスシフトを行ったことがプラスに働いている。

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デジカメを中心としたイメージング分野。キヤノンなどライバルは軒並みマイナス成長だが、ソニーは成長を維持している。

一方、Xperiaブランドを展開するスマートフォン事業はいまだ厳しい。2018年度の売上高は前年比31%減の4980億円で、営業損益も971億円の赤字と、前年度からさらに拡大した。販売台数も650万台に半減している。

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ソニーの全事業の中でもっとも厳しいのがスマートフォンを中心としたモバイル。不採算地域撤退に伴うマイナスが大きい。

ただ、十時CFOは「2020年のブレイクイーブン(単年収支の均衡)は達成可能」と説明する。現状は不採算地域からの撤退によって赤字が拡大したものの、構造改革は前倒しで進んでおり、今が一番苦しい時期、との見解だ。とはいえ仮にその通りだとすると、2020年には、ソニーの中でモバイルネットワーク分野そのものが非常に小さな領域になってしまう可能性が高い。

2020年以降の態勢作りが今後の成長を決める

これらのことを総合すると、ソニーは「2020年までは大きな動きがない」と考えて良さそうだ。各種投資が始まる関係で、2019年度は増収減益の予定だ。

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ソニーは2019年度、増収減益の予定。各種投資が始まること、株式売却益などの一時要因がないことなどが理由だ。

同社はモバイル以外の構造改革を終えており、収益的には健全だ。次世代プレイステーションと非スマートフォン向けイメージセンサーの両方で、2020年以降に大きなチャレンジが必要であり、いかにこの2年で次への態勢を整えるかが重要といえる。

5月21日には、株主向け経営方針説明会が予定されている。まずそこで、先のビジネスについてどのような見解が語られるのか、注目しておきたい。

(文・西田宗千佳、写真はソニーの決算説明会資料より)

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