Pixel 3はClearly White、Just Blackと、薄ピンクのNot Pinkの3色展開だったが、Pixel 3aはClearly White、Just Blackと、紫がかった白のPurple-ishの3色。以下の写真はいずれもClearly WhiteのPixel 3、Purple-ishのPixel 3aを撮影している。
グーグルは、開発者イベント「Google I/O 2019」で最新スマートフォン「Pixel 3a」「Pixel 3a XL」を発表した。
Pixel 3aは日本でも2018年に発売したPixel 3の廉価版に位置づけられるモデル。日本でも直販サイト「Googleストア」で予約受付を開始している。価格は4万8600円と、Pixel 3(9万5000円~)の実に半額程度に抑えられている(いずれも税込み)。
一方で、グーグルの説明によると、Pixel 3の最大のウリである「AIを使ったカメラのソフトウェア性能」は、Pixel 3aでもほぼ変わらないという。価格の違いは、主にボディーの素材の違いやワイヤレス充電の有無、処理性能の要のSoCや防水性能の違いによるものだという。
発売済みの上位モデル「Pixel 3」との違いを、写真作例も含めてGoogle I/Oの現地会場からインプレッションする。
外観に細かな違いはあり、印象は大きく変わらない
左がPixel 3a。正直なところ、サイズの違いは並べてみて初めてわかることで、手に持った印象は大きく変わらない。
まず、ディスプレイだがPixel 3が5.5インチの有機ELを搭載するのに対し、Pixel 3aは5.6インチの有機ELを搭載。同じ有機ELではあるが、同じ明るさ、同じカラー設定で見比べてみると、Pixel 3aの方がわずかだが暖色系に寄っているように見える。
なお、画面の解像度と縦横比はPixel 3が2160×1080ドットで18対9なのに対し、Pixel 3aは2220×1080ドットの18.5対9と、若干縦に長い。
ベゼル(画面縁)幅もディスプレイ下と左右の幅がPixel 3aの方がやや広い。このため全体のサイズもPixel 3の縦145.6×幅68.2×厚さ7.9mm、重さ約148gなのに対して、Pixel 3aが縦151.3×幅70.1×厚さ8.2mm、重さ約147gと、重さはほぼ変わらないもののひと回りほど大きくなっている。
背面も並べてみた。左がPixel 3a。
よく見るとカメラ周辺のつやのある塗装部分が、Pixel 3に比べて若干波打っているようにも見えるが、これもよっぽどしっかり見比べなければ気づかないほどの差異で、うまくデザインしてある(Pixel 3aは右)。
ボディーの背面はPixel 3がガラス、Pixel 3aがポリカーボネイトの樹脂素材となっていて、この素材の違いは価格差の1つだ。
しかし、実際に手にしてみると、つや消し加工されたポリカーボネイトは十分に高級感があり、安っぽい感じはしない。なお、両者には同じ素材の純正ケースが用意されているため、ケースを装着する前提なら外観の違いはほぼない。
純正ケースを装着すると、もうどっちがどっちなのかわからない。筆者も作例撮影時には、ケースのボタンの色の違いで見分けていたくらいだ。
外部接続用の端子も両端末で大きく異なっている。底部にUSB Type -Cポートを備えている点は同じだが、Pixel 3はUSB 3.1準拠なのに対して、Pixel 3aはUSB 2.0に準拠。また、Pixel 3では底部に配置されるSIMカードスロットが向かって左側の側面に、ディスプレイ下に配置されているスピーカーはUSB Type-Cポートの両サイドにその位置を変えている。
Pixel 3はポートがUSB Type-Cだけだが、Pixel 3aは上部にイヤホンジャックも備えているため、変換ケーブルを使用せずに有線イヤホンを利用可能だ。
実際、カメラ機能も画質もほとんど変わらない
さらに、Pixel 3では、正面カメラが広角(F値2.2、視野角97度)&標準(F値1.8、視野角75度)の8メガピクセル×2のデュアルレンズだったが、Pixel 3aでは8メガピクセルのシングルレンズになっている。ただし、レンズはF値2.0に視野角84度と、Pixel 3の2つのレンズの間を取ったような仕様。一方、背面カメラは、どちらも12.2メガピクセル、F値1.8とスペック上の差異はない。
グーグルによると、使用しているカメラモジュールや機能に違いはないという。筆者がチェックした限りでは、設定項目の違いなども見つけられなかった。
Pixel 3ではシングルレンズながら、背景をきれいにぼかすポートレートモードや、驚くほど明るい夜景モード(Night Sight)、超解像ズームなど、AIを用いてソフトウェア処理された写真のクオリティが注目されていた。
写真の仕上がりにも本当に違いはないのか? いくつか試し撮りをしてみた。
ディスプレイ同様にPixel 3aの方が若干暖色系に寄っているように見えなくもないが、筆者が試した限り、ポートレートモードのぼけ具合や、夜景モードの明るさやコントラスト、拡大時の解像感など、どちらのカメラにもほとんど違いを感じなかった。
グーグルの言うとおり、カメラの性能は同等と見ていいだろう。ただし、Pixel 3aでは、SoCにミドルレンジ向けのクアルコム製「Snapdragon 670」を採用しているほか、画像処理用の「Pixel Visual Core」が非搭載となっている。そのため、撮影後の処理速度には、ほんの少しだが違いが感じられた。
ポートレートモード撮影直後に撮影画像をチェックする際、「処理中」と表示されすぐに見られないことが何度かあったのだ。同様にポートレートモードでの連続撮影の際に、シャッターがすぐに切れないこともあった。
「処理中」の表示はPixel 3でもごくたまに見かけるので、これもほとんど気にならないレベルの差異ではあるが、連写の際には多少ストレスを感じるかもしれない。
なお、カメラの機能では唯一、Pixel 3では「その他」の撮影モードにあった、キャラクターなどをAR表示させて一緒に写真が撮れる「Playground」という機能だけがなくなっていた(写真左がPixel 3、右がPixel 3aの「その他」タブ)。
“通信料金分離”プラン時代のキラー端末になるか?
ドコモは通信と端末の料金を分けた“分離プラン”を6月1日から開始する。
撮影:小林優多郎
この他にも前述のとおり、Qi準拠の無線充電に非対応だったり、IP68の防水がIP52の耐水にダウンしていたりもするが、いずれもあれば便利だがどうしても必要という機能ではない。
むしろバッテリー容量は2915mAhから3000mAhへと若干だがアップしているし、急速充電にも対応しているほか、日本向けのモデルにはおサイフケータイも搭載されている。これで同じカメラ性能の持つPixel 3の半額程度というのだから、かなりお買い得感があるのは間違いない。
予約受付後の発売開始は5月17日からの予定で、Googleストア以外にソフトバンクでの取り扱いが発表されている。
6月からはドコモでも完全分離プランが導入され、ちょうど端末代金の高さを感じやすいタイミングでもある。お買い得感のあるPixel 3aは、そんな変わり目の時代に輝く、キラーデバイスとなる可能性は大だ。
(文、撮影・太田百合子)
太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。